ソルティライフ
イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
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MONTHLY COLUMN 不思議の国、コロンビア。
キャビンの棚 やさしい気持ちで海を哲学する「ともだちは海のにおい」
船厨 海で生まれた「ドライカレー」
海の博物誌 カジキとマグロはまったく異なる
Salty One Day Boating 水郷の水路を巡る一日
YAMAHA NEWS 「Moving You」新たな感動と、豊かな暮らしをお届けしたい。ヤマハのムービー・ドキュメンタリ。/フィッシングボート「YFR」製品情報公開/「マリン塾」操船、離着岸、ボートフィッシングなど
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MONTHLY COLUMN
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 ワールドカップが閉幕し、ひと月がたとうとしている。蒸し返すようだが、開催国のエース、ネイマールに怪我を負わせてしまったチームがコロンビアであり、フェアプレー賞を受賞したチームは、それもまたコロンビアであった。どうもつかみどころがない。
 ところで、このコロンビアという国、サッカー以外ではどのようなイメージを持たれているのだろう。
 まずは名産のコーヒー。マイルドでコクのある味は日本でも大人気。世界でも美人が多いとされる「頭にCのつく中南米3ヵ国」の一画を成すことも、一部では知られるところだ。人気映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」の舞台となったことで身近に感じている方もいることだろう。だが、犯罪発生率の高い国としてのイメージも根強いかもしれない。そういえば、映画「コラテラル」でトム・クルーズが演じた殺し屋は、「仕事の連絡はカルタヘナで受ける」と決めていたと記憶する。日本人の渡航率はとても低い。でも、あまり無責任なことはいえないが、最近では観光客誘致のために少しずつでも治安はよくなりつつあるようだ。
 そんな「知っているようでよく知らない」コロンビアの海で遊んだことがある。
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 コロンビアはカリブ海と太平洋という、ふたつの海に臨んでいる。
 スペインの統治時代にあった17世紀から18世紀にかけて、南米中の財宝が集まる輸出の要衝となっていたカルタヘナは、カリブの海賊たちにとって格好のターゲットだった。そのために今では一部が世界遺産になっている難攻不落の要塞が築かれたのだ。
 現代では、街に閉鎖的な面影はなく、人々の笑顔で彩られた明るさが目立つ。夕方に歩いた旧市街には洒落たオープンカフェやレストランが並び、伝統音楽のグンビアやバジェナート、サルサなどが流れていた。翌日に予定していたクルージングへの期待感を大いに高めてくれるのだ。
 郊外のマリーナからボートに乗って海を西へと走る。沖に出て、まず出迎えてくれたのは沖に浮かぶ要塞跡やカルタヘナを目指してやってきた大型客船。改めて、ここが、かつて海賊たちが暗躍し、多くの船が往来していた海なのだと思い起こさせる。
 海の様相は変化に富み、クルージングファンを大いに楽しませてくれる。島に囲まれたラグーンのようなエリアに入り込み、砂浜にボートをランディングして遊んでいると、漁船風の小さなボートが近づいてくる。漁師風味全開のおじさんがデッキに積んだかごから取り出したのは生きた伊勢エビ。料金を支払うと、一度立ち去り、その辺の砂浜で調理したのだろうか、しばらくすると、しっかりとゆで揚げたぷりぷりの伊勢エビをボートまで持ってきてくれる。用意してきた簡素なサンドウィッチのランチをとびきり豪華で味わい深いご馳走にしてくれる。ほかにも新鮮な魚や蟹などを同じく漁師がボートまで売りに来てくれる。まことに芸達者なシステムだな、と思う。

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 しっかりと海で遊び、その日の宿となるリゾートに到着し、ビジターバースに舫をとったのは、まだ十分に日が高い午後。明日に備え、昼寝でもするか、それとも、バーでうまいカクテルのお世話にでもなるか。
 先ほどまでマリンジェットで嬌声をあげていた女の子は、木陰のハンモックを早速独り占めにしている。
 日本でのイメージはさておき、カルタヘナは、コロンビア国内でもっとも多くの観光客を集める観光都市だ。中心部から少しはずれにある小湾にはいくつものマリーナがあって、パワーボートやセールボートがその近代的な景観に華を添えていた。カルタヘナから半島伝いに形成されるリゾートは、近代的な都市の雰囲気とは趣を異にした素朴さが大いに残り、1泊2日、2泊3日程度のクルージングにはうってつけのエリア。その海は、コラテラルのイメージとはかなりかけ離れて、とても優しい。
 地球にはゴキゲンにしてくれる海がゴマンとあるのだ。


田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れた大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



キャビンの棚
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「ともだちは海のにおい」
発行:理論社
著者:工藤直子
絵:長新太
定価:1200円(税別)
 もしかしたら、この本は舞台が海でなくてもよかったのかもしれない。主人公がくじらといるかでなくてもよかったのかもしれない。ひととおり読んでふと思う。けれど、また最初に戻ってページを開くと、やはり、海の本なのだな、と思い改める。
 海は、人の涙でできあがった、というふうに書いてある。

 それはたしかに 悲しみの波
 それはたしかに つらさのうねり
 それはたしかに そうなのだが
 ごらん いつのまにか
 涙の海に 生まれてそだった
 泳ぐものたち
 笑い 歌い そして遊ぶ
 泳ぐものたち
 ひとはみな いつだって
 塩からくて にぎやかな
 海を 抱いて いるのだ


 この巻頭を読んで、感じたのは、ビル・エバンスが弾いた「SEASCAPE」に歌詞を付けたらこんな歌になるのではないかな、ということだ。時に人を受け付けない態度、表面的な美しさを越えた神秘性、人の心を包み込むような神々しさ。冷たくとも、暖かみのある、深い海を、この両者は感じさせてくれる。
 くじらといるかは、そんな海に住んでいる。2人の会話はいつだって優しい。くじらはビールを飲みつつ眼鏡をかけて本を読み、哲学する。いるかは、くじらの話に耳を傾け、一緒に考えたりする。彼らの会話のひとことひとことが読み手の心に染みる。こんな友だちが欲しいなと思う。けれども読んでいると、こちらもくじらと、そしているかと友だちになって一緒に海にいるような気分になる。
 子どもたちだけでなく、大人にも読んで欲しい珠玉の児童書だ。



船厨
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 ドライカレーが得意な老婦人がいる。その人のこさえるドライカレーは、よくあるピラフやチャーハンのようなドライカレーではなく、カレー味で煮込んだ挽肉がご飯にかかっている。レシピは自己流だというが、付け合わせが福神漬けとゆで卵ということが多い。このスタイルのドライカレーが、ある時代、豪華客船のメニューとして人気だったことをあとから知ることになる。そういえば、すでに亡くなっているご主人は、なかなかの趣味人であり知識人だった。そうと知ってこのカレーを奥さんに作ってもらっていたのかな、などと想像する。
 このドライカレーは、日本郵船の欧州航路船で日本人の料理長が考案したものだという。横須賀海軍カレーなども近頃有名だが、明治時代に生まれたカレーライスという日本独特のメニューは、海と関係が深い。イギリス海軍で供されていたシチューがベースになったのだそうだ。
 「カレーと福神漬け」という、よくよく考えれば不思議な組み合わせも、日本郵船の客船で考案されたものだそうだ。日本郵船のサイトによれば、1916年(大正5年)に大量の福神漬けを仕入れていたことを示す資料が残っているという。当時は福神漬けが高価だったことから、三等船客では沢庵が代用されていたらしい。
 しかし、このドライカレーはかなりイケる。使うカレー粉にこだわったり、ひと工夫するのが楽しい。
「ドライカレー(5~6人分)」のつくり方
■材料
牛挽肉1kg、玉葱2個、ニンジン1本、ニンニク2かけ、生姜の薄切り5枚、レーズン30g、リンゴ1/2個、サラダ油適宜、水500cc、ローリエ1枚、赤ワイン300cc、オールスパイス少々、バター10g、ミルク50cc、醤油少々、ウスターソース少々、中濃ソース少々、塩少々、胡椒少々、はちみつ20g、カレー粉大さじ5
■作り方
1)フライパンにサラダ油をしき、みじん切りにしたニンニクと生姜を炒め、ニンニクの香りが立ったら挽肉を火が通るまで炒める。
2)水とローリエを加えて、アクを取りながら中火にし、赤ワインとオールスパイスを加えて約40分間煮込む。
3)その間に別のフライパンでバターを溶かし、玉葱、ニンジンをいためる。玉葱が透き通ってきたら火を止める。
4)擦りおろしたリンゴ、砕いたレーズン、ミルクを2に加え、水が減ってきたところで3を加える。
5)醤油、ウスターソース、中濃ソース、塩、胡椒、はちみつで味を整える
6)最後にカレー粉を加え、よく炒め合わせて、できあがり。



海の博物誌
 日本近海ではビルフィッシュトーナメントが真っ盛りである。今シーズンもいまだ見ぬ大物を夢見て多くのスポーツアングラーたちが沖へとボートを繰り出している。
 さて、そのカジキだが、ちょくちょく「カジキマグロ」といわれることがある。これはいわゆる俗称で、おそらく同じように赤身の刺身がとれたことからそう呼ばれるようになったのだろう。だが、これは間違いである。両方ともからだは大きいが、見た目がまったく異なることからも容易に納得できる。
 ともにスズキ目に属するが(といっても魚の多くはスズキ目)、マグロはカツオなどとと同じくサバ科に属している。一方のカジキはカジキ科の魚だ。
 海好きを自認するなら「カジキマグロ」という言葉を安直に使うのは避けたいところ。マグロはマグロ、カジキはあくまでもカジキなのだ。



Salty One Day Boating
日本全国には、水郷と呼ばれる土地が点在する。九州・福岡の柳川、近畿・滋賀の近江八幡、関東・霞ヶ浦と利根川下流の一帯。これらはその代表的な土地であり、その昔、陸路の交通網が発達していない頃には、舟運文化が栄えた場所でもある。今回はこの中の霞ヶ浦、利根川の一帯をスポーツボートで巡った。

 つい先日、ボートとはどんな存在ですか?というインタビューをしていたときに、そのオーナーは「船に乗っているときは感じないんですが、乗ってない時ほど、無性に乗りたくなる。分かりますかね、この気持ち」と言い、なるほど確かにそうした気持ちにさせる乗物は船の他にはないと思った。客観的に見れば、船上は制限されることが多い。陸上に比べれば計画通りにいかないことも多く、初めての人にとっては食事やトイレや船酔いといった心配事もある。それが、船のある生活に慣れてしまうと、途端に心地良い揺れがないと、なんとなく物足りない生活になってしまうのだ。
 そんな物思いに耽けていたのは、水郷、潮来での水路巡りをしていた時だった。これまでボートと言えば海や湖で乗る機会が多く、こうした水路を巡る遊びはしたことがなかった。しかもボートは船外機艇ではなく、スポーツボート。乗り心地は、マリンジェットのスピードと船外機艇の乗り心地を合わせた、すこぶる楽しい船だ。先ほどのオーナーではないが、まさしく乗っていない時ほど乗りたくなるという類の船である。
 この船でいくつもの水門と橋をくぐり抜け、四方八方に伸びる航路を駆け抜ければ、自分がいる場所と周囲に見える場所のギャップの大きさに驚かされる。水上には非日常の時間が流れているのだが、その周りを取り囲む陸地は、当然のことながら日常の生活が営まれている。とても大海原では味わうことができない経験だ。水の中に身を委ねて水上を移動していると、西浦や北浦、外浪逆浦、常陸利根川など、霞ヶ浦を形成するこれらの水域が、少しずつ様相が異なるのも肌身で感じとれる。滔々と流れる利根川の本流や明鏡止水を思わせる穏やかな横利根川。黒潮の香りが近づく北浦の空気。そうしたことを感じるだけでも、水の上いる価値はあると思う。そんな初物づくしの時間を過ごしていたら、こうしてボートが好きになれたのも好奇心や船上でしか得られない充実感に他ならない。
 水郷という言葉には、海にはない長閑な響きがある。葦が茂る岸の背景には、実りつつある稲穂が一面に広がっている。聞けば利根川の千葉側は関東一の収穫量を誇る水田なのだとか。そうした風景を眺めながら船を走らせる。観光遊覧船やバスボート、マリンジェットなど行き交う船も珍しくはない。大安の休日ともなれば、嫁入り船に出会えそうな、そんな幻想さえもが現実と思えてしまう悠久の舟運文化が感じられる。
 夏休み。めいっぱい海で遊んだら、クールダウンで水郷クルージングへ。9月1日からの3日間は、12年に1度の開催となる鹿島神宮最大のお祭り、御船祭りが催される。関東開拓の頃が起源とされるこのお祭りには、見物船を合わせると100隻以上の船が集まるそうだ。都心から2時間弱の水郷、水路巡り。今年のメニューに加えてみてはいかがだろうか。


取材協力
水郷ボートサービス
〒311-2424 茨城県潮来市潮来5043番地
TEL:0299-63-1231
定休日:3~10月:無休/11月~2月:日曜・祝日
営業時間:8:30~17:00
ホームページ:http://www.suigouboat.co.jp/


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スポーツボートAR190。走りの楽しさを感じさせてくれる
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マリーナから15分で白帆の湯に到着。右手の砂浜はビーチングも可能
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水をテーマにした科学館【霞ヶ浦ふれあいランド】は桟橋への係留も可能
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水路の出入り口には必ずと言って良いほど閘門(こうもん)が備わっている。こちらは横利根閘門
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閘門の開閉は、そのほとんどがセルフサービス。このように備え付けのロープを引っ張り開閉する
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川の駅さわら。こちらの桟橋も水郷ボートサービスさんが管理されている。立ち寄る場合は事前に連絡を
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さわらには道の駅が併設され、地元の農産物やフードコートなど施設が充実している
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9月に開催される御船祭り会場となる鹿島神宮の水中鳥居。その大きさは国内最大級
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水郷の食と言えば鰻。天然物の産地として知られるだけに、名店と呼ばれるお店が多くある。ぜひご賞味を
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佐原は昔の街並みの面影を残す重要伝統的建造物群保存地区に選定。この街並みを見に多くの観光客が訪れるそうだ



ヤマハニュース

「Moving You」新たな感動と、豊かな暮らしをお届けしたい。ヤマハのムービー・ドキュメンタリ。
Vol. 7 メイド・イン・モーリタニア、国境を越えた師弟関係。
http://global.yamaha-motor.com/jp/yamahastyle/movingyou/007/

フィッシングボート「YFR」製品情報公開
さまざまなアングラーの要求に応えるハイバランスなフィッシングボートです
https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/lineup/boat/fishingboat/yfr/

「マリン塾」操船、離着岸、ボートフィッシングなど
ボートで遊ぶための技術を基礎からしっかり学べるレッスンのご案内です。
http://sea-style.yamaha-motor.co.jp/marinejyuku/



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【編集航記】
この号が皆さまのお手元に配信された2日後、立秋を迎えます。この日から暦の上では秋となるわけです。夏休みをこれから迎える方がほとんどだと思われますし、日中の猛暑は相変わらずだと思うのですが、私はその夏休み中、ふとしたことに秋を感じて少し寂しくなったりします。例えば夕方に草むらから虫の声が聞こえたり、夕方になると赤トンボが翔んでいたり。日本の夏は長いようで短い。特に「社会人」といわれるようになってからはそのことを強く感じます。大好きな夏です。思いっきり楽しみたいと思います。
(編集部・ま)
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