マグロの切り身をたたきにしながら、壱岐の勝本に上がるマグロのことを思いだした。釣法は一本釣り。針にかかったそのときから漁師たちは慎重だ。捕獲時にマグロが暴れ過ぎると体温が上がり、いわゆる「身焼け」がおこる。業界用語ではこうしたマグロを「らっきょう」と呼ぶ。鮪の身は一枚一枚が重なっているように見えるが、いくら剥いても白っぽくなっていることからそう呼ばれるのだとか。もちろん味が落ちるのだ。
さらに商品価値を高めるために、漁師たちは釣り上げたマグロを船上で、半ば商品化してしまう。神経を抜き、内蔵を全て取り出し洗い、たっぷりと氷の入った船倉に収めて、港に上げる。港では一本一本、桐の箱に入れてから出荷される。
とにかくマグロを美味くするために、漁師は並大抵でない作業を船上で行っているわけだ。それに比べると、自分で釣ったマグロの味なんて、たかがしれているのだろうか。
そんなことを考えるうちに「マグロのたたき丼」が完成。今回のマグロをどのようにして手に入れたかは、「Salty One Day Boating」に続く。