ソルティライフ
イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
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MONTHLY COLUMN スモールボート&ビッグゲームの美学
キャビンの棚 海をますます面白くする自然の摂理「鳥の渡りを調べてみたら」
船厨 思わず絶句する旬の美味さ「秋刀魚のしゃぶしゃぶ」
海の博物誌 誤用を引き起こした英語
Salty Who's Who 日本中の海を走り、世界の海に挑む
YAMAHA NEWS 「Moving You Vol. 8 砂漠のクリスマス」公開/プレミアムボート「EXULT(イグザルト)38 CONVERTIBLE」製品情報/「マリン塾」操船、離着岸、ボートフィッシングなど
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MONTHLY COLUMN
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 以前、カジキで町おこしを目論む福島県いわき市の関係者にお聞きしたのだが、あれだけ魚影の濃い常磐沖を目の前にした人々でさえ、「カジキ釣り」というとどこか外国の釣りのようなイメージを抱いている方が多いそうだ。考えてみれば、市場にはカジキが揚がっているし、魚屋にも切り身が並んでいるので、日本の魚だと気づきそうなものだが、イメージとはそいうものなのだろう。ハワイか何処かで、ビキニ姿の女性と一緒に大物釣りを楽しむイメージを抱きたくなる気持ちはとても理解できる。
 とはいえ実際には、日本の太平洋岸沖はカジキの魚影が濃い海である。クロカジキ(ブルーマーリン)、シロカジキ(ブラックマーリン)、マカジキ(ストライプドマーリン)、バショウカジキ(セイルフィッシュ)などが、主なターゲットとなるが、中でも(体格的に)もっとも成長するといわれるブルーマーリンは、日本近海に多く潜み、数、記録ともに期待のできるビッグゲームだ。JGFA(ジャパンゲームフィッシュ協会)のオールタックルにおけるブルーマーリンの記録は2000年6月に三宅島の南西沖でチーム・ラビットの佐久間文子氏が釣り上げたもの。428キロであった。グランダー(1000ポンド/453キロ以上のカジキ)には惜しくも及ばなかったが、女性による50ポンド・テストライン・クラスのワールドレコードとなり、日本の海が持つ可能性を実証してくれた。ちなみにオールタックルにおけるブルーマーリンの世界記録はパシフィック・ブルー(太平洋のクロカジキ)で、1992年にハワイ島・コナ沖で記録された624.14キロ。恐ろしいまでに巨大だが、実は日本でも伊豆半島沖で650キロのブルーマーリンが突きん棒で仕留められている。それを思うと、日本の海でオールタックルの世界記録を作ることも夢ではない。
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 さて、黒潮の流れとともに回遊するカジキは沖縄から三陸沖に至るまでの海に泳ぎ、黒潮が寒流である親潮とぶつかりあう三陸の沖で太平洋に向かい迂回していくと通常は考えられている。その意味で、三陸の沖は、シーズン終盤におけるカジキの溜まり場ともいえる。しかもこのエリアはカジキの餌が豊富だ。
 その三陸沖を競技エリアとするカジキ釣りの大会が、先月の初めに、宮城県の塩竈市にある北浜マリンベースを会場に開催された「塩釜ビルフィッシュトーナメント」だ。大会の実行委員長はこの地でボート店を営む鈴木雅博さん。三陸のカジキ釣りを多くのボータ―、アングラーに身近なものとして普及させた張本人だ。その鈴木さんと大会本部艇に乗り込み、競技期間中の2日間を過ごした。釣りや海についていろいろな話を聞くことができた。
 それにしても、今年の塩釜はすごかった。初日から本部船の無線には、競技艇からのカジキのヒットコールが休みなく飛び込んできた。記録を取る鈴木さんは食事をする暇もない有様だ。結局この大会では初日に52本のキャッチ、タグアンドリリースが2本。2日目は21本のキャッチ、タグアンドリリースが3本という釣果。参加チーム43艇、2日間で78本の釣果である。マカジキの日本記録も生まれた。珍しいことに釣れたカジキはほとんどがマカジキだ。数日前からこの兆候は現れていたようで、競技エリアでマカジキが荒食いをしていたという。魚影が濃いとは、まさしくこういう海をいう。何しろその辺でカジキがベイエリアのボラのように飛び跳ねているのだ。まさしくこのエリアの海は震災前の状態を取り戻しつつある。
 もうひとつ、特筆したいことがある。それは今大会に限らず塩釜の大会には23フィートから27フィートクラスの船外機艇のエントリーが多いことである。これも、ひとりでも多くの人にカジキ釣りの魅力を体験して欲しいと鈴木さんが仕掛けた結果だ。
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 釣りにはさまざまな考え方がある。非力なタックルで大物を釣った方が価値があるという考え方に対しては異論もあろう。しかし、実際には、ほとんどのカジキ釣り大会で、同じ重さのカジキを釣るのならラインクラスが低いほど得点が高いのだ。それを思うと、本格的なスポーツフィッシャーマンや大型コンバーチブルで参戦するチームと小型艇で渡り合うアングラーたちは、この海で輝いて見える(ポイントに反映されるわけではない)。
 とはいえ、鈴木さんによると、参加したアングラーたちには技術的な課題がまだまだあるようで、本部船から各船のファイトシーンを眺めながら厳しい論評をつぶやいていた。何しろ独りでフネを出し、カジキをフッキングさせ、巻き上げ、ランディングまでこなしてしまう人だ。もちろんその経験はマリーナのフィッシングクラブのメンバーにも伝授される。
 北浜マリンベースではシースタイルのレンタルボートでカジキを狙うことも可能だ。チャレンジする価値は十分にある。


田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れた大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



キャビンの棚
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「鳥の渡りを調べてみたら」
●発行:文一総合出版刊
●著者:ポール・ケリンガー(丸武志 訳)
●3024円(税込)
 長年、海の上で遊んでいると、それなりに海に関する知識が身につく。そしてその知識が海をますます面白いものにしてくれることに気づく。例えば、海で見かける鳥たち。この鳥についての知識は、ただの鳥を、まことに興味深い知識欲の対象にしてくれる。おもしろさに異変をもたらすのだ。
 本書は、鳥の渡りに関するさまざまな生態が書き記されている。決して難解な学術書ではなく、わかりやすい。「基本となる飛び方」「飛ぶ早さとその距離」といった具体的なテーマを設け、さらにそのなかでは実際のケーススタディを紹介し、行動の説明が付け加えられている。
 キョクアジサシは高度1000kmの上空を対気速度約50km/hの早さでスカンジナビア半島を横断していたり、アシボソハイタカは220kmの航程を6時間かけて飛んだりと、小さな個体からは想像も付かない、渡りの世界が見えてくる。
 渡り鳥の数は年々減っている。環境破壊による飛来地の減少が理由の大部分を占めるが、渡りを続けなくてもよい環境が整いつつあるのも事実だという。それはバードサンクチュアリのような保護環境ではなく、人間社会の出すゴミが彼らの餌となり、その行動を妨げているからだという。
 長距離航海者にとって、渡り鳥は唯一の友だと話を聞く。そういえば巨大カジキと孤独な闘いを繰り広げたサンチャゴ(老人と海)も鳥に話しかけていた。彼らには風を読む力があり、コンパスを持ち、時には漁や狩りをしながら目的地にたどり着く。
 渡り鳥について語る本書『鳥の渡りを調べてみたら』は、空で暮らす鳥たちの自然との付き合い方が見えてくる。カモメたちの飛翔を見て風の振れ方を見極める。そんなことが可能になるかもしれない。



船厨
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 詩人・佐藤春夫の代表作に「秋刀魚の歌」というのがある。

 あわれ、秋風よ、情けあれば伝えてよ
 男ありて、今日の夕餉にひとり、
 さんまを食らいて、思いふけると


 谷崎潤一郎の細君譲渡事件の渦中にあり、その後、谷崎の翻意によって愛する者を失い、孤独となった佐藤が、一度は妻となった女性への思慕を歌ったものだ。
 1人での食卓に秋刀魚がのっているシーンなど、何となく侘びしさが募る歌ではあるが、平成の時代になり、秋刀魚のイメージは大きく変わった。
 炭火焼きの秋刀魚が美味いのは昔と変わらぬが、冷凍保存法や流通整備のおかげで産地以外の人々でも刺身で食することができるようになったのも、イメージチェンジを果たせた要因のように思える。相変わらず、値段的には庶民の魚。不漁で高いといってもたかがしれている。
 刺身でもいける、宮古産の新鮮な秋刀魚をしゃぶしゃぶで食した。これはあくまでも筆者の私的な感想だが、寒ブリのしゃぶしゃぶに匹敵する、いや、それ以上の美味である。100円、200円の値上がりなどで文句を言う気がしれない。日本人にとって、秋刀魚は宝だ。
 これに美味い日本酒でもつけば、失恋の傷心も忘れる。明るくいこう。ただし、飲み過ぎにはご注意。
「秋刀魚のしゃぶしゃぶ」のつくり方
■材料
刺身用秋刀魚(食べたい分)、水800cc、日本酒200cc、昆布10cm角、生姜(1カケ)、長ネギ適宜、ぽん酢、すだち
■作り方
1)刺身にできる新鮮な秋刀魚を三枚におろし、腹骨をそぎ落とし、中骨をとり刺身状にスライスする(処理が面倒ならば最初から刺身になった秋刀魚でもよい)
2)水を入れた鍋に火をかけ、昆布、皮をむいた生姜、日本酒を加える。
3)沸騰したら好みでネギなどの野菜を入れ、しゃぶしゃぶを開始!
※ぽん酢の代わりに醤油とスダチの組み合わせなどご自由に。



海の博物誌
 「フィッシュストーリー」という小説(伊坂幸太郎)がある。「フィッシュストーリー」という言葉には「法螺話(ほらばなし)」という意味があるのだが(釣り人の習性から生まれた言葉のようだが、さもありなん)、作中に登場する翻訳者がそれを知らず「法螺話」を「魚の物語」として訳すエピソードが描かれている。
 ヘミングウェイの名作「老人と海」が和訳された当初、老人・サンチャゴがイルカを食べるシーンが出てくるのは有名な話。実はこれも誤訳で、原書に出てくる「ドルフィンフィッシュ」を「イルカ」と訳してしまったのだそうだ。釣り好きには知られているが「ドルフィンフィッシュ」は「シイラ」のことである。
 釣り番組や雑誌の中で「マグロゲーム」や「シイラゲーム」とか「ゲームを組み立てる」などという言葉を目にしたり耳にしたりする。この、日本の釣りシーンでよく使われる「ゲーム」も多くは誤訳が定着したものだろう。「ゲーム」は、猟の対象となる獲物に当てられる単語。釣りの場合は「ゲームフィッシュ」として対象魚そのものを指す言葉であり、「釣り」という行為を表すものではない。ちなみに「ビッグゲーム」は、狩猟ではライオンや象のことを指し、釣りの場合ではカジキなどの大魚を指す。IGFA(国際ゲームフィッシュ連盟)やJGFA(ジャパンゲームフィッシュ協会)の「ゲームフィッシュ」は「釣魚」と訳す。これらの協会が知られることによって、どこかお洒落っぽい雰囲気がするからなのだろうか、「ゲーム」という言葉だけが日本語的な意味を持って独り歩きし、あげくには「ゲームフィッシング」という、何を指すのか、だれもうまく説明できない不思議な日本語が定着してしまったのかもしれない。



Salty Who's Who
日本中の海を走り、世界の海に挑む
明治学院大学体育会ヨット部
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 10月15日から22日の8日間、フランスのラロシェルで学生によるヨットの世界選手権「第34回SYWoC(The Student Yachting World Cup)」が開催される。今年、日本での国内予選で優勝し、出場権をつかんだのが明治学院大学の体育会ヨット部だ。
 学生のヨットといえば多くが470級やスナイプ級といったディンギーを思い浮かべるだろう。しかし、明治学院大学のヨット部は、1962年の創部以来、外洋ヨット、いわゆるセーリングクルーザーで活動を続けてきた。現在、日本学生外洋帆走連盟には、明治学院大学の他に、慶應クルージングクラブ、神戸大学オフショアセーリングクラブ、甲南大学体育会クルージング部、東京大学体育会ヨット部クルーザー班、東京都市大学体育会ヨット部、千葉大学ヨット部、日本大学理工系ヨット部、防衛大学校ヨット部クルーザーの9校(クラブ)が加盟している。
 彼らの活動は濃い。
 夏は長期のクルージング。明治学院大学の場合は、過去にホームともいえる伊豆七島はもちろん、紀州、四国、九州、沖縄へと航跡を刻み続けてきた。草創期には小笠原へのクルージングを果たした実績もある。それも20フィート、25フィート、30フィートといったヨットで。GPSが普及するまでは海図をにらみながら、夜は灯台を頼りに、ハンドコンパスやDF(方向探知機)を駆使して海を駆け回っていた。揺れるヨットで飯が作れるのは当たり前。数多くの港を知っている。混雑した港で槍付けができる。天気図も書け、読める。台風ともなれば、舫を取り回し、夜通しワッチもする。もちろんヨットの整備も自分たちで行う。ウインチを分解し、グリスを塗り、元に戻せる。
 4年間を過ごせば、どこに出しても恥ずかしくないシーマンシップに長けた海の男、女ができあがる。商船高専や大学などの専門の教育機関を除いて、このように脈々とヨット乗りとしてのシーマンシップを継承している機関はなかなかない。
 明治学院大学のある4年生部員は言う。
 「4年間を通して、目標を遂げるための準備の大切さを知り、責任感が身についたと思っています。ヨットは海という大自然を相手にするスポーツであり、逃げ場のない環境で練習をしなければならない。一つの判断ミスで命を落とすような事故を起こす可能性があるなかで、12人乗りのヨットの船長として責任感を持ち、常に安全第一を念頭に活動に取り組んできました」
 ヨットの運航に秀でた彼らも、相手との駆け引きや、コースの引き方などで差が出るレースに関しては、経験が少ないというのが現実かもしれない。世界選手権で、ヨーロッパやアメリカの学生とクルーザーレースで対等に渡り合うのは並大抵なことではないだろう。
 それでも、「大学の4年間という短い期間でしたが、積み重ねた練習と苦楽を共にしてきたチームメイトと最高のレースをしたい。そして、勝ちに行きます」(4年生部員)と意気軒昂だ。
 健闘を祈りたい。


※写真は今年の夏季クルージングのひとコマ(提供:明治学院大学ヨット部)



ヤマハニュース

「Moving You Vol. 8 砂漠のクリスマス」公開
新たな感動と、豊かな暮らしをお届けしたい。ヤマハのムービー・ドキュメンタリ。
http://global.yamaha-motor.com/jp/yamahastyle/movingyou/

プレミアムボート「EXULT(イグザルト)38 CONVERTIBLE」製品情報
YAMAHAの魂とも言える「走りのDNA」を注ぎ込むことで到達した新次元コンバーチブルモデル。
https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/lineup/boat/bigboat/exult38convertible/

「マリン塾」操船、離着岸、ボートフィッシングなど
ボートで遊ぶための技術を基礎からしっかり学べるレッスンのご案内です。
http://sea-style.yamaha-motor.co.jp/marinejyuku/



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【編集航記】
今回の巻頭エッセイで、カジキ釣りについて紹介されていますが、塩釜の沖合は世界三大漁場といわれるのがうなずけるほど、釣りが楽しめます。いまの季節、あるポイントではワラサがよく釣れます。行ってみればわかりますが、釣り堀でもこんなに釣れないだろう、というぐらいジギングで釣れます。ぜひチャレンジしてはいかがでしょう。もちろん私も目論んでいます。
(編集部・ま)
ソルティライフ公式Facebookページ 「Yamaha Motor Nautical Mile」

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