ソルティライフ
イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
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MONTHLY COLUMN  シンドバッドのふるさとに思う
キャビンの棚  文豪と写真家の出会い「ヘミングウェイとキャパの17年」
船厨  津軽産「カレイのムニエル・サワークリームソースがけ」
海の博物誌  人が造った自然の美
Salty One Day Boating  東京港沖の春探し
YAMAHA NEWS  マリンイベントスケジュール/インターナショナルボートショー2015の模様/免許を取るなら今がチャンス「春のわくわくキャンペーン!」実施中/「マリン塾」操船、離着岸、ボートフィッシングなど
4月の壁紙  『Salty Life』読者限定壁紙カレンダー

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MONTHLY COLUMN
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 2016年に開催されるリオデジャネイロオリンピック・セーリング競技の代表選考レースの日程表を眺めていたら、女子種目のひとつ、レーザーラジアルの世界選手権がオマーンで開催されることを知った。場所はムサナー(Masnaah)。首都・マスカットの西方に位置するリゾート地だ。もう8年ほど近く前になるが、オマーンに訪れた際、世界選手権が開催できるようなヨットハーバーは無かったと記憶している。ただ、ドバイに続け、とばかり人工島造成の計画があることを知って、中東諸国のリゾート開発への意気込みを垣間見てはいた。一生のうち、一度訪れるかどうかという外国人のわがままといえばそれまでだが、「オマーンは、このままでいいのに」などと、そのときは思っていた。
 8年前に訪れたのはマリーナ・バンダールだった。件のムサナーとマスカットのちょうど真ん中に位置するきれいなマリーナだった。当時、オマーンではドバイなどに比べてまだまだプレジャーボートは遊びとして定着していなかった。それでもオマーンには、ヨーロッパを中心に海外から赴任するビジネスマンも多く、マリーナ・バンダールもこうした人々と、地元の資産家たちの遊び場として機能していた。そして素朴な美しさが印象的だった。
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 夏ともなれば、日中はとても外に立っていられなくなるというオマーンを訪れたのは3月の下旬のこと。中東ではもっとも過ごしやすい時期なのかもしれないが、じっとしていると、乾いた空気を通して強烈な日射しを肌に感じる。荒涼とした、小高い山を背後に控えたそのマリーナにいると、目をまともに開けているのがつらいほど、眩しかった。
 マリーナのゲストバースに舫をとり、私たちを出迎えてくれたのは建築関係の仕事のためにマスカットに住むドイツ人のグループと地元のボートマン。彼らとともにアラビア海を臨むオマーン湾をクルージングした。
 マリーナに係留されていたボートの数こそ少ないが、マリーナから出てすぐに、この一帯がどんなに素晴らしい海を抱え、美しいクルージング・ロケーションに恵まれているかを思い知らされた。いつも海に出て思う美しさの条件とは、人の手によるものが「何もない」ことにつきる。
 茶褐色の乾いた崖が海に落ち込む海岸が延々と続くが、紺碧の空とコントラストが見事で、その美しさには息をのむばかりだ。そんな崖に囲まれた川のような入り江に入っていくと、ピクニックにやってきたオマーンの人々のグループを岸に見かけた。オマーンの人々のピクニックは、かなり立派で大きな絨毯を持ってきて、地面に広げて座り込んで食事をする。みんな、バーベキューが大好きなのだと聞いた。
 美しい入り江に母船として中東独特の船・ダウ船を泊め、ウォータービークルやボーティングに興じるグループにも出会った。プレジャーボーティングが普及していないといっていたが、どの人々も楽しそうに海辺での休日を満喫していた。
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 日が暮れる頃、マスカットのダウンタウン、マトラには、街中に備え付けられた拡声器を通してこの日4回目の祈りを促すアザーンが響き渡った。独特の調子の声が港にこだまする。人々はこの呼びかけを合図に一日に5回、コーランを朗唱し祈りを捧げる。
 祈りを終えた男たちはどこからともなくやってきて、美しい夜景を見渡す海辺のベンチに腰をかけ、何をするわけでもなく談笑する。
 実在の人物なのかどうかもわからぬのに、千夜一夜物語(アラビアンナイト)のおかげで世界的に有名になった海の男・シンドバッドも、オマーンの北部、アラビア半島随一の港として栄えるソハールから船出していたと伝えられる。マスカットも、かつてはインド洋を行き来する船乗りたちの最も重要な港として繁栄していた。山岳地帯に囲まれたオマーンだが、海との縁は深い。
 ラクダに跨り砂漠を行くよりも、ダウ船を操り大海原を駆けめぐる―、中近東・オマーンの男たちにはそんなシーンの方が、似合っているように、私には思えた。
 中東に限ったことではなく新興国のリゾート開発が盛んだ。先日訪れた、ある国の美しい海辺にも奇抜な形をした高層ホテルが建ち、それと競うようにしてあちこちで建築物が工事中だった。それらの建物から見える海や島の景色はもしかしたら美しく、それはいつまでも保てるかもしれないが、海から眺める陸の景色は、善し悪しは別として刻々と変化していく。「シースケープアーキテクチャー」という言葉があるかどうかは知らぬが、人は、そんなことをもう少し大切にしてもいいのかもしれない。

田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れた大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



キャビンの棚
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「ヘミングウェイとキャパの17年」
著者:山口淳
発行:阪急コミュニケーションズ
定価:2160円(税込み)
 アーネスト・ヘミングウェイとロバート・キャパは、1937年、内戦の混迷が深まっていたスペインのマドリッドのホテルで出会い、意気投合し、その後17年間にわたって親交を深めた。1937年当時、キャパはまだ駆け出しのフリーカメラマンで24歳。その彼が、「日はまた昇る」、「武器よさらば」で一躍名をはせた、一回り年上の大作家をどのようにみてきたのかは、とても興味深い。二人の共通点を上げてみてもあまり意味をなさないかもしれないが、特異な観察力がもたらす苦悩とともに、彼らの作品の深さと対照的な、純な幼児性を持ち合わせていたようにも思える。ふたりは飲み明かしては語らい、喧嘩をし、また仲直りをするという繰り返しだったらしい。
 「ヘミングウェイとキャパの17年」には、キャパ撮影のヘミングウェイの写真を軸に、こうした2人の出会いと交流、エピソードがまとめられている。著者の山口淳氏は、当初、キャパが撮ったヘミングウェイを物語る写真でミニ写真集をつくりたいと願ったそうだが、大人の事情で断念したようだ。それでも、本書に収められた51点の写真は見応えがあるし、なによりも、それまで漠然と知られていた、文豪と写真家という2人の親交を、エピソードを交えて垣間見ることができるのはファンにとって喜ばしい限りなのではないか。



船厨
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 ふだんは使い慣れた外来語の語源など考えることなどしないものだが、気になって調べてみると、意外な発見があったりして楽しい。たとえば、「ムニエル」。日本の家庭料理としてもポピュラーなフランス料理だが、フランス語でも学んでいない限り、その言葉が「ムニエ」の女性形である、なんてことは、知らないままだ。
 「ムニエ」は「粉」や「粉屋」の意味を持つ。はたして「ムニエル」は「粉屋のおかみさん風」ということになるんだそうだ。なんとなくオシャレな存在であった「ムニエル」がますます身近で親しみのある料理になるってものだ。
 先日、小欄は東北の西津軽の刺網漁に同乗する機会を得た。夫が港に戻ると奥さんが家から駆けつけて網からカレイを外す作業に加わる。作業が一通り終わると、大漁で網から外したカレイを発泡の箱に詰めながら「持って帰れ」と勧めてくれた。奥さんはこれでもかというほど箱の中にカレイを重ねていく。
 そんなわけで、翌日の拙宅の台所ではこちらも家族総出でカレイとの格闘が繰り広げられた。刺身や煮付けなどに加えてムニエルを作ったわけだが、それがまた美味いこと。フランス語風にいえば「カルレ・ア・ラ・ムニエール」となるのだろうか。そして粉屋のおかみさんならぬ、漁師のおかみさんの気っぷの良さと、どこかフランス語を彷彿とさせる美しい津軽弁を、再び思い出した次第。


「カレイのムニエル・サワークリームソースがけ」のつくり方
■材料(2人分)
カレイ切身(1尾分)、オリーブオイル大さじ3、塩、コショウ、小麦粉適宜、生クリーム100cc、プレーンヨーグルト100cc、レモンの絞り汁1/2個分

■作り方
1)生クリームとヨーグルトとレモン汁をよく混ぜ合わせサワークリームソースを作り、冷蔵庫で冷やす
2)カレイは水気を取り塩コショウして小麦粉をまぶす
3)フライパンにオリーブオイルを入れ中火で熱する
4)カレイの皮を下にして中火で焼く
5)皮に日が通り、パリッとしたら裏返して焼く
6)皿に盛り付け、1のサワークリームソースをかける



海の博物誌
 間もなくゴールデンウィーク。今年も日本各地の観光地が人々で賑わうのだろう。
 さて、天橋立や三保の松原など、海辺の「白砂青松」は景勝地として多くの日本人に好まれている。それら多くの白砂は、海流や波の影響で長年にわたって細長く砂が堆積してできあがったもの。人々はそこに、砂が飛び散り田畑に害を及ぼすのを防ぐため、また、その地形を安定的に保つために、松を植えてきたのだそうだ。つまり本来の自然の美しさではなく、人間が自ら作り上げた美しい景色、とうわけだ。
 松を植えた人々は、未来の日本人にどのような評価を受けるか、などは考えもしなかっただろうが、おそらく景観を大切にしてきたに違いない。



Salty One Day Boating
東京港の春といえば、お花見。そしてシーバス。コンクリートジャングルなんていう言葉で形容されることのある東京だけど、東京港やその周辺にはその気になって探せば春の訪れを感じさせる風景をたくさん見つけることができる。桜の開花はまだまだ先だったが、3月の半ばになり、春を感じたくてボートを出した。

桜が咲く前にお花見

 三寒四温とはよく言ったもので、3月に入ってから、気温が高くなったり、急激に冷え込んだりという日々が続いた。着実にホンモノの春が近づいていると感じられる日々。海も同様で、すっかり春を思わせる和やかな日が多くなってきた。この日も快晴とはいかなかったけど、暖かな日差しを感じる陽気で、絶好のボーティング日和。ボート走らせ、釣りをする、いつもの平凡かつ楽しい一日を過ごした。
 ニューポート江戸川から放水路を河口に走らせていると周りの土手に混じる緑が増えていることに気づく。橋を抜けて葛西臨海公園の水路をゆっくり行くと、右手に満開の菜の花畑があった。桜の開花はまだまだ先だったけど、人々が「はなみ、はなみ」と騒ぎ出す前に、ひと足早く春の花を水の上から眺めることができて大いに得した気分。周りをほとんどコンクリートで固められた東京の海だけど、春を感じさせる風景は意外と多い。
 少し霞んだ薄青い空の色も春。水鳥が少しずつ賑わいを見せたり。何よりもこの日はポカポカと暖かい。


春のシーバスフィッシング

 春になって心が浮き立つが、魚も同じなのではないかと思うことがある。東京港の代表的なゲームフィッシュのひとつシーバスがいい例だ。これまで、産卵などで底に居ついていたと思われる、シーバスはこの時期、活性が高くなる。というわけで、ボートにはもちろんタックル一式を積んでいる。
 春のシーバスといえば「バチ抜け」というイメージがある。ゴカイやイソメが海底の泥土から一斉に湧いて出る現象のことで、巷のシーバスフィッシング情報を弄るとこの言葉がかなり出てきて、それに合わせたメソッドの紹介も多くて惑わされそうだが、昼間のボートフイッシングではこだわらない方がいい。そもそもバチ抜けはほとんど夜に起こるのだ。
 むしろ昼間、しかもボートでシーバスを楽しむならストラクチャー(海上の構造物)に隠れているシーバスに出てきてもらって遊ぶ、または、エサを求めて表層に出てきたシーバスにルアーを見せる、そんな釣りの方が確立は高いと思われる。
 かくいう編集部もお気に入りのストラクチャーで一本一本シーバスをキャッチしていく。春の元気なシーバスと戯れることができた。
 帰港途中、少し雲が多くなってきて、風も強まり出した。気温も下がっていそうだ。三寒四温の「三寒」に突入するのか。ゲートブリッジの向こうに見える東京の街も、昼間より少し寒そうに見えた。


取材協力
ニューポート江戸川

●〒134-0084 東京都 江戸川区 東葛西3-17-16
●TEL: 03-3675-4701/FAX: 03-3675-4703
●ホームページ:http://marine.yamaha-motor.jp/Sea-Style/Common/Marina_Common.asp?marina_cd=80308541


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海へ!春のわくわくの始まります
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臨海公園の菜の花畑もきれいでした
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心なしか、海鳥も増えています
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羽田沖。春休み独特の空港の喧噪を想像しました
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シーバスも元気いっぱい
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サイズは出なかったのはいつも通り。それでも楽しめました
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夕方になって冷え込み始め、マリーナへと急ぎます
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ニューポートの帰路、お気に入りの回転寿司へ



ヤマハニュース
マリンイベントスケジュール
試乗会や展示会など春のイベント情報はこちらでチェック
https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/event/schedule/

インターナショナルボートショー2015の模様
http://global.yamaha-motor.com/jp/showroom/event/2015_international-boat-show/

免許を取るなら今がチャンス「春のわくわくキャンペーン!」実施中
ボート免許新規取得コースにネット申込みされた方が対象のキャンペーンです
https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/license/spring_campaign/

「マリン塾」操船、離着岸、ボートフィッシングなど
ボートで遊ぶための技術を基礎からしっかり学べるレッスンのご案内
http://sea-style.yamaha-motor.co.jp/marinejyuku/



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【編集航記】
先日、フィッシングボートの流し釣りでボートの風流れを押さえる装置「フィッシングサポートリモコン」の開発を担当した方のお話を聞く機会がありました。お仕事の3分の1は海の上にいるという方ですが、ヨットが好きで、休みの日も海の上にいることが多いのだそうです。さらに、フィッシングサポートリモコンのプログラムには、ヨットレースのスタートラインで船足を調整するテクニックが生かされているという意外なお話も聞きました。海にいるだけで、さまざまな発見があり、スキルが身につくのだなあ、などと感心してしまいました。
(編集部・ま)

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