ソルティライフ
イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
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MONTHLY COLUMN ● ランチクルーズの幸せ
キャビンの棚 ● 行動せずにはいられない作家の南太平洋紀行「十五少年漂流記への旅」
船厨 ● 見た目と味のギャップにとまどいつつ「イカスミの炒飯」
海の博物誌 ● 「まづめ」に魚が釣れるわけ
Salty One Day Boating ● 最高のボートでシーバスパラダイスを満喫
海の道具 ● バイリンガルなはなし
YAMAHA NEWS ● 「ヤマハ マリンジェット」2016モデル/東京モーターショーは今週末まで/「マリン塾」操船、離着岸、ボートフィッシングなど
11月の壁紙 ● 『Salty Life』読者限定壁紙カレンダー

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MONTHLY COLUMN
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 ボート遊びに欠かせないメニューのひとつに、ランチクルーズというのは、必ずあると思う。おそらく世界中で愛されている。飯を食うだけならば陸路でもいいではないかといわれそうだが、野暮なことはいうな。ボートで行って飯を食うことが肝心なのである。ところが、日本には、特に関東エリアにはそれを楽しむにふさわしい場所がかなり少ないといわざるを得ない。
 これまでに何度かすてきなランチクルーズを海外で体験してきた。特に思い出に残っている海のひとつにスロベニアがある。
 首都・リュブリャナからハイウェイを利用すれば一時間ほどでアドリア海に面した海岸に着く。コーペル、イゾラ、ピランなどの美しい街並みは、隣国のイタリアの影響を色濃く受け、レストランの看板やメニューもイタリア語の併記が目立つ。スロベニアの面積は日本の四国とほぼ同じ。海岸線はわずか40kmほどだ。それでも日本人から見ればうらやましいほど充分なファシリティを持つ美しいマリーナがあり、人々はそのマリーナをベースに、アドリア海がもたらす恩恵を、存分に受け取っている。
 スロベニアの海岸線にある街の中でも比較的南に位置するポルトローシュには多くのセーリングボートやパワーボートを抱えるマリーナがある。
 夏も終わり、秋が深まりつつある日曜日のマリーナ・ポルトローシュは、朝からたくさんの人々でにぎわっていた。この日、沖で開催されるヨットレースに参加するセーラーたちが、舫を解いて沖に出て行く。夏には対岸のイタリアからクルージングで訪れるセールボートも多く、ゲストバースはもちろん、私が滞在したマリーナのゲストルームも満杯となる。
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 慌ただしく出港していくセーラーたちを横目に、マリーナのレストランでゆっくり朝食をとり、その後、ボートで海に出た。夏の休暇には、スロベニアからさらに南に下り、クロアチアの島々をクルージングするボーターも多いというが、この日に目指したのは、目と鼻の先ほどの距離に位置するピランの港だった。
 小さな岬に位置する古い町。少し街の奥にゆくと赤茶色の屋根を持つ小さな家がひしめくように建ち並び、その隙間に無数の路地を作り出している。歴史的な建造物も多く、街全体が芸術的な遺産となっている。道路に面した岸壁には多くの小型ボートやセールボート、漁船が所狭しと舫われ、外港にはベネチアと航路を結ぶ観光船や、セールボート、パワーボートが絶え間なく行き来している。
 半島の海岸線には小さなホテルとシーフードレストランが建ち並んでいる。もう夏も終わりだけれど、ピランの街は強い日差しを浴びていた。レストランのテラスは、たくさんの人々の、極上の笑顔であふれている。みんながよく冷えた白や赤のワインでのどを潤しながら、山盛りのシーフードに舌鼓を打っている。さきほど朝食を平らげたばかりだったにもかかわらず、私たちもランチに加わった。
 いつも思う。海のそばでいただく食事はなんて美味しいのだろう。その場にいるだけで幸せな気持ちになる。海と海辺、そしてフネを愛する人々の独特の幸福感は、街の隅々にまで充ち満ちている。
 ふたたび日本に話を戻す。そういった場所が関東エリアには少ないが、海の駅のひとつである千葉県の保田などは人気スポットのひとつだ。また、一時期閉鎖されていた東京ベイエリアの人気レストランの桟橋も近くプレジャーボートの受け付けを再開すると聞いた。マナーを守ってそういう遊び場所を大切にしていきたいものである。

田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れた大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



キャビンの棚
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「十五少年漂流記への旅」
■著者:椎名誠
■発行:新潮選書
■価格:¥1,000(税別)
 今年の夏の終わりに、作家の椎名誠が、ジュール・ベルヌの代表作「十五少年漂流記」を長女と共訳した。椎名氏によると、本作の和訳はもちろん日本に多くあるが、その多くは英語訳からの訳で、原書のフランス語から直接訳されたものはかなり少なかったそうだ。
 椎名誠といえば、旅する作家として人気だが、本人曰く「本を読んで何か気になると、それを確かめねば気がすまない、というせっかちで落ち着きのない困った性格」で、小学生の頃に出会ったという「十五少年漂流記」にも確かめたいことがあって、その思いが募っていたようだ。
 本書「十五少年漂流記への旅」は翻訳に先立って、長年にわたって抱いていた本書に関する疑問を確かめるために敢行した旅の紀行文。物語のモデルとなった島がどこなのか、それがどのようなところなのかを知るために南太平洋の島々に向かう。
 「怪しい探検隊」シリーズの頃に比べて抑え気味ではあるものの、軽妙な椎名節はところどころに健在である。旅の同行者とのやりとりなどは、本筋とは関係が無いのに、この紀行文の楽しさを増しており、読んでいておもわずにんまりしてしまう。
 なお、ベルヌは1828年にフランスの港町・ナントで生まれ育ったが、小さいころから船乗りたちから異国の話を聞き、憧れをつのらせていた。そして11歳の時に西インド諸島行きの帆船に乗り込もうと企て、小舟に載って帆船へと向かう際に父親に見つかって連れ戻されるというエピソードが残っている。ベルヌもまた、椎名誠と同じく行動せずにはいられない困った性格だったのだろう。



船厨
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 これほど怪しげな食材も珍しい。器に貯めたそれをみると、コールタールのようだ。なんだかとても身体に悪いもののように見える。ところが、その味と風味は、海の恵みを大いに感じさせる。旨み成分であるアミノ酸が多く含まれているからだろう。イカスミのことだ。
 地中海地方ではパスタソースをはじめ、イカスミをあらかじめ練り込んだパスタ、リゾット、パエリアに使うこともある。日本の沖縄でも古くから料理に使われていたようで、「イカスミ汁」が知られている。なお、タコのスミもイカスミと同じくアミノ酸が多く含まれ美味いらしいが、墨袋の位置が取り出しにくい場所にあるそうで、そのために食材としてはそれほど使われることが無いのだという。
 さて、このイカスミを使った炒飯をこしらえてみた。正直言うと、いざ口にしてみれば、以前にご紹介したこともある、イカの腑を使った炒飯とほとんど同じ味であることに気づいた。ただ、この黒い米をむしゃむしゃ食べるのは一興だとは思う。そしてどちらも確実に美味い。


「イカスミチャーハン」の作り方
■材料(2人分)
イカ:1ハイ、ご飯茶碗大盛り2杯、にんにく2カケ、オリーブオイル 適宜、白ワイン大さじ1、塩・コショウ適宜

■作り方
1)イカははらわたを取り、食べやすい大きさに切る
2)はらわたに付いているスミ袋を丁寧にはがし、スミを絞り出し白ワインと混ぜておく
3)フライパンにオリーブオイルを熱し、みじん切りにしたにんにくを入れ、香りがたったらイカを入れいため、2の半量を加え塩コショウで味を整え皿に取る
4)3のフライパンにオリーブオイルを足し、ご飯を炒める。残りの2を加え、塩コショウで味を整えて皿に盛り、炒めたイカを盛り付ける ※イカの種類や大きさによっては充分なスミが取り出せないことがあります。今回は市販のイカスミペーストを追加しました。



海の博物誌
 釣り人は概して早起きだが、これは釣り人が好きこのんで早起きしているわけではなく、魚の習性に合わせてのことである。釣り人がしばしば口にする「まづめ」とは、朝日が昇る前後、そして夕日が沈む前後の時間帯のことで、それぞれ「朝まづめ」「夕まづめ」という。一日のうちでもっとも明暗差の変化が激しくなる時間帯で、多くの魚が動きが活発になり、食欲も増す、ということになっている。
 魚は一般的に昼に活動する。マグロやカツオなどは昼夜を問わずに泳ぎ続けてはいるが、やはり餌をとるのは昼の間だけのようである。もちろん夜行性の魚もいるが、いずれにしろ、これらの活動は太陽の動きに合わせ生活のリズムがつくられている、というのが定説だ。
 朝まづめは夜行性の魚にとって次の夜までに食いだめをする時間帯。昼型の魚は、腹ぺこの状態になっており荒食いをする時間帯となる。
 前言撤回。釣り人は好きこのんで魚の習性に合わせて早起きをする。



Salty One Day Boating
秋も深まり、朝晩に寒さを感じる季節になった。海の様相も日に日に変化していくが、夏にキハダマグロやシイラを追いかけて楽しんでいたその余韻と、思うように釣果が上がらなかったゆえのささやかなストレスもあって、釣りへの欲求がふつふつと湧き上がってくる。魚との戯れに思いを馳せつつ、京葉工業地帯の一画にあるマリーナからシースタイルを利用し、ボートを出した。

青物か、シーバスか

 千葉県市原市のほぼ西端、養老川の河口にマリーナを構える浜野マリンサービスでシースタイルに予約を入れた。初めてのマリーナというと不安を感じる方もいるかもしれないが、重大な危険が潜むマリーナなどそうはない。ここでは最初は同マリーナの泉水社長が同乗して、海に出るまでの走り方をしっかり教えてくれるから安心だ。一度マリーナに戻って泉水さんを桟橋に降ろし、再び出港する。その間、わずか10分ほどだ。

 出港前に、泉水さんから最近の釣果について話を聞いた。シーバスのコンディションがかなり良いという。とはいえ、イナダとサワラもできれば狙いたいと考えていた。実はこの前の週末も、東京の湾奥でシーバスを楽しもうとした。ところがその日は、いつものシーバスのポイントとは異なるエリアでところどころに鳥山が出ていた。欲を出したのがいけなかった。イナダ、もしくはサワラを追い求めたが、鳥に翻弄され、海を右往左往した結果、釣り糸を通して伝わる魚の躍動を一切味わうことができなかった。
 今回もリベンジとばかり青物を求め、千葉港沖から同マリーナのレンタルボートの航行区域の南西端にあたる海ほたるに至るまでを走ったが、狙った魚が泳ぐ気配が全くない。けっきょく前週の教訓を生かし、ターゲットをシーバスに絞ることにした。二兎を追えるのはマイボートやシースタイルの良いところだが、それほど良い結果を得られないことの方が多いと思われる。


教本通りの場所で楽しめた。

 早々と対象魚をシーバスに絞り、専念できたことが功を奏した。普段はほぼ江戸川放水路の河口以西で楽しむシーバスだが、京葉は初めてのエリア。最初は釣果に不安があったが杞憂だった。いそうだと思うところには、必ずシーバスがいた。まさにシーバスを始めたばかりの頃に読んだ、教本通りのポイントで出てくれるのである。
 変化のある構造の岸壁の際、工場の排水口周り、大きな杭の周り、キャストミスさえなければ、ルアーにアタックしてくる。また、広々としたエリアでも条件さえ揃えば出てくるので、キャスティングコントロールがそれほど身についていなかった初心者の同行者にもかなりの数が釣れた。しかもそこそこのサイズ。
 苦労して釣り上げる一尾の尊さ、その楽しさは釣りの魅力だとは知っているが、これだけ思うように釣れると、やはり釣りは、釣れてこそ楽しいのだなあ、と思えてくる。前回が前回だけに。
 もうひとつ、この日をとてもハッピーにしてくれた理由にボートの存在がある。SR-Xだ。例の独特のキャノピーが付いていないタイプだったが、これがかえってキャスティングをやりやすく、釣りを楽しくしてくれた。ドライバーとバウデッキに立つアングラーとのコミュニケーションも難なく行えた。安定性も良い。
 搭載エンジンはF115。この日は風も強めで沖はチョッピーな波が立っていたが、ほとんど叩かず、叩いたとしても着水がソフトで乗り心地はバッチリ。スピードはもちろん、機動性の面でもキビキビと動いてくれる。
 ここまで書くと褒めすぎでは、と思われるかもしれないが、偽らざる感想だ。
 これまで東京、横浜、木更津などをベースにシーバスフィッシングを楽しんできたが、この千葉港周辺エリアは穴場的存在かもしれない。シーバスファンには間違いなくオススメのエリアである。


取材協力
浜野マリンサービス 〒290-0067 千葉県市原市八幡海岸通り55-1 TEL: 0436-41-6881 ホームページ: https://marine.yamaha-motor.jp/sea-style/Common/Marina_Common.asp?marina_cd=0-78


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港口付近まで同乗して注意点をおしえてくれた。希望者には安全レクチャーを無料で実施
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港口エリアの南西端、アクアラインの海ほたる。風が強めでゆっくり釣りはできなかった
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海ほたるからの帰路は向かい風だったが、SR-Xはがんがん走ってくれる
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市原港沖の灯標。バイブレーションでよく反応
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サイズは50~60cmクラス
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マリーナから出て5分も走ると、様々なストラクチャーが点在するフィッシングエリアが広がる。パラダイス
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この日の最高は初心者の同乗者が釣り上げた。ご満悦であった
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この日、ベイトタックルはほとんど使わなかった。バイブレーションかシンキングミノーで楽しむ
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レンタルしたSR-X。もともとよく安定性に優れているのに加えスターンとバウには大型レール。キャストも楽々。シーバスフィッシングにばっちりフィットする



Salty One Day Boating
 グローバル化が進んだとはいえ、日本にはまだまだ英語アレルギーの方も多いと思う。日頃は多弁なのに、街で、見るからに外国人と思しき人が地図などを片手に辺りを見回していると、ついつい目を逸らせて足早に去ってしまう、なんていう方もいるのではないか。
 それともうひとつ、無線機での会話が苦手という人も多そうだ。一方的にしゃべり、しゃべり終えた事を伝えて相手の話を聴く。相手のしゃべり終えたのを確認して、またこちらがしゃべる…。その繰り返しがもどかしいのと、あの独特な間にためらいを覚えそうだ。それに無線というもの、電話と違ってなにやら無駄話をしてはいけないような雰囲気がある。さりとて、特に海の上では、仲間同士で航行中に重要な話などあるはずもない。精々釣果の自慢と帰港後の居酒屋選びくらいなものだ。
 そんなシャイな方たちにとって、将に天敵ともいうべき舶用機器のひとつが国際VHF無線機かもしれない。
 タクシーや刑事ものドラマでお馴染みの、業務連絡的会話に加えて、外国航路のバリッとした銀髪のキャプテンにも聞かれているかもしれない(聞いてはないし、銀髪かどうかも怪しいが)と思うと、声が上ずる。
 ただしこの機械、もしもの際には強力なお助け発信機となる。ボタンひとつで、電波が届く限りの船や基地局に緊急信号が届けられるのだ。しかも自分の位置情報まで一緒に届けられるというのだから、語学音痴にはありがたい。
 あとはただ一言、マイクに向って「メーデー、メーデー、メーデー」と叫べば、銀髪のキャプテンが助けに来てくれる、はずである。



ヤマハニュース
「ヤマハ マリンジェット」2016モデル
https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/lineup/marinejet/

東京モーターショーは今週末まで
たまには、陸上のヤマハ製品もいかがですか?人型ロボットがバイクを運転しています。
http://global.yamaha-motor.com/jp/showroom/event/2015tokyomotorshow/sp/

「マリン塾」操船、離着岸、ボートフィッシングなど
ボートで遊ぶための技術を基礎からしっかり学べるレッスンのご案内です。
http://sea-style.yamaha-motor.co.jp/marinejyuku/



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【編集航記】
先日、広島で開催された日本マリン事業協会のイベント「ボートゲームフィッシング」を取材してきました。よく晴れた素晴らしい天候のもと、100名以上のアングラーたちがボートフィッシングの釣果を競い合いました。釣果もさることながら、広島の海を訪れるたびに感動するのは、世界のクルージングファンからも絶賛されるそのロケーションのすばらしさ。今号のタイトルイラストはTadamiさんにその広島の厳島(宮島)を背景にしたクルージングシーンを描いていただきました。現在この絵の右手には新しいビジター桟橋が完成し、プレジャーボートの利用が可能になっています。機会があったら是非、訪れてみてください。
(編集部・ま)

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