ソルティライフ
イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
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MONTHLY COLUMN ● 山の話。
キャビンの棚 ● 旅人の苦悶「直筆原稿版 オーパ!」
船厨 ● 魚介の花形「ホッケ」
海の博物誌 ● 好奇心と目的意識から生まれたダイビング
Salty One Day Boating ● 南国でファミリーボーティング!
海の道具 ● 魚に優しく「マルチブリザーパイプ」
YAMAHA NEWS ● 「マリン塾」で操船・離着岸の腕を磨こう/イベント(展示、試乗会)スケジュール/ボート免許更新お知らせサービス(無料)
5月の壁紙 ● 『Salty Life』読者限定壁紙カレンダー

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MONTHLY COLUMN
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 海は素敵だ。ボートやヨットを自由気ままに走らせて風を感じる。水平線の向こうに夢をはせ、沖を目指す。
「世界の海のなかでどこが一番すき?」とよく聞かれる。優柔不断なせいか、その時々で真っ先に思い浮かぶ海が異なっているのだけど、1つ共通点があることに気づいた。
 思えば、海というものは世界に1つしかない。ひとたび沖に出てしまえば、その景色はそうは変わらない。時間や波の高さや雲の形や日差しの具合などによって表情は異なっても、360度水平線に囲まれてしまえば、大差がないというのが実情だ。
 つまるところ、私にとっての「海の良さ」の基準は、「海」ではないということだ。それは、その海辺で食べたシーフードの味であったり、海から眺める景色でであったり、釣り糸を通して感じた魚の鼓動の思い出だったりする。
 海から眺める陸岸の美しさというものは、好き嫌いを決するのに大きな割合を占める。私の場合は「山」を意識することが多い。
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 例えば、世界的に名高いリゾートである仏領ポリネシア、いわゆるタヒチの島々が、もしも平べったい砂浜と椰子の木が生えるだけの地形であったなら、人々は今ほど魅了されただろうか。あの島々は、山があってのリゾートだと思う。周囲の海岸線が30kmほどのボラボラ島の中央にはオテヌマ山がそびえる。標高1000mに満たない山だが、その存在感は圧倒的だ。海の神と山の神と対峙。ビーチから沖を眺めていると背後から力が押し寄せてくる。目に見えぬエネルギーがその境界で渦巻いている。奇才に溢れた芸術家と呼ばれる人々がこの島に魅了されたのも、そんなところに理由があったのかもしれない。
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 山といえばマレーシアのコタキナバルもまた、私のお気に入りである。ボルネオの北岸に位置するこのマレーシア第二の都市は、南太平洋にあるような洗練されたリゾート地ではない。海もまた格別美しくもない。はじめてこの観光地を訪れた時、正直に言うと少々拍子抜けしたものだ。それでも低い雲の隙間から姿を現したキナバル山の山頂を海から眺めた時は興奮を隠せなかった。まるで怪獣の歯のような独特の山頂の形状は、山全体の体積をイメージさせ、力強さを演出している。コタキナバルの人々を見守るかのようだ。
 昨年の夏、2度目にコタキナバルを訪れたとき、またあの山を海から眺めることができるものと大いに期待したが、叶わなかった。聞くところによると、キナバル山の勇姿をボートから見ることができたのは、かなり幸運な出来事だったらしい。
 ハワイ島のマウナケア、マヘ島のセーシェル山、モーリシャスのラ・プティ・リヴィエール・ノワール山、そして駿河の富士山。
 海から山を想う時、ボートの魅力はさらに膨らむように思う。

田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れた大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



キャビンの棚
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「直筆原稿版 オーパ!」
■著者:開高健(写真:高橋曻)
■発行:集英社
■価格:¥3,000(税別)
 世の中には数々の紀行文や釣行紀があるけれど、開高健の「オーパ!」は、それらのジャンルを超越している。彼の筆から紡ぎ出される一つ一つの言葉は、美しく、感動的で、純文学を読んでいるかのような錯覚に陥る。
 読み始めるとその冒頭から、旅への憧憬と、釣りへの熱望をかき立てられる。さらに読み進めていくうちに、自分もまた、開高健とともに辺境の水辺でモノを食い、釣りにふけっているような感覚になってくる。それほどの力がある。
 勧められて「直筆原稿版 オーパ!」を手にした。これが素晴らしいのである。開高健のファンにとっては正に宝物。買って損はさせない企画である。ところが同時に、曲者でもある。文庫本で読み始めたような臨場感を伴う感動とは異なる何かを感じさせる。


なにかの事情があって/野外へ出られない人、/海外へ行けない人、/鳥獣虫魚の話の好きな人、/人間や議論に絶望した人、/雨の日の釣り師……/すべて/書斎にいるときの/私に似た人たちのために


 直筆版では少し異なっていて、こう書かれてあった。


なにかの事情で野外に出られない人。海外へ行けない人。日頃書斎にすわりこんでいる私にそっくりな人たちのためにわたしは書く。


 直筆版を手にとって、これまでそれほど意識してこなかった、この巻頭言が引っかかる。
 活字で感じた、旅人であり、釣り人であった開高健が、直筆版では正真正銘の作家となる。つまり、日頃書斎にこもって何かを生み出そうと苦悶する開高健の姿を思い浮かべてしまう。臨場感はあるが、それは旅先ではなく、書斎のなかでの、だ。窓の外には雨が降っている。灰皿には煙草の吸い殻の山。作家は万年筆を放り出し、部屋の片隅に転がるアブのアンバサダーに恨めしそうに目をやりながら、釣りへの渇望を募らせる。そんなシーンに引きずり込まれ、共感する。
 大作家は決して好きなときに自由奔放に旅をしていたわけではない。目の前の仕事に縛られ、自由に飢えていたのだという現実を思い起こさせる。
 でもそれは悲愴ではない。陳腐だけれど、明日の釣りを夢見て、きょうもプロの仕事をこなしていこうと勇気づけられる。



船厨
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 南北に列島を造る日本は、その漁獲も豊富で様々な魚種を食卓に並べることが可能である。そんな日本の中でも北洋で捕れる魚の代表格がホッケである。
 その産地の一つ、オホーツク海では5月ごろから漁が始まる。彼らとって稼ぎ頭は夏以降に始まるヤリイカの合間の漁で、その漁法も小型定置網に似た「底建て網」を流用している。とはいえ、ホッケは漁師にとっても消費者にとっても大切な海の幸であることに変わりはない。
 漁師たちは一尾一尾のホッケの単価を高めるために様々な工夫をする。紋別で漁業を営むある漁師は、仲買人に勧められて「活け締めホッケ」の出荷をはじめた。一定のサイズを超えるホッケはすぐさま船上で締められ、港に戻るときれいに箱に並べられる。各々が研究に研究を重ねた締め方は彼らにとっては企業秘密だ。こうして出荷されたホッケは主に札幌などで消費され、本州ではなかなかお目にかかることはできない。
 干物も同様だ。干物の美味さの条件はまず第一に魚そのものの質であろう。漁師が丁寧に扱い水揚げされたホッケの干物は、雑に扱われたそれよりも上手いのだ。当然、高いホッケは比例して上手くなる。
 最近ホッケの大きさが以前に比べて小さくなったと話題だ。『あんなに大きかったホッケがなぜこんなに小さくなったのか』(角川学芸出版/生田與克)によれば、その原因の筆頭はやはり乱獲にあるようだ。沿岸漁業の漁師は、常に今の生活の糧の確保と資源管理の狭間でもがいている。我慢は一筋縄でいかないが、踏ん張りどころかもしれない。
 ホッケは漢字で「魚」へんに「花」と書く。食卓に幸せを運ぶ北海の花。なんすてきな名前だろう。その恵みにいつまでもあやかりたい。


「ホッケの干物」の焼き方
1)冷凍物の場合はあらかじめ解凍する
2)身の方から中火よりやや強い火加減で7分ほど焼く
3)ひっくり返して皮側を中火よりやや弱火でで5分ほど焼く



海の博物誌
 本来人間は海の上を長くは移動できない生き物である。それでも人間は動物の浮き袋や、その辺に転がっていた丸太を使って、海の上を漕ぎ出した。同じように水の中へも潜った。そんな苦しいことをなぜ人間は始めたのか。なんとかして海の底から富を得たかったからである。
 人が潜るようになったことを表す最古の記録は、今から6万年ほど前、ネアンデルタール人が川の魚を潜って捕まえる様子が描かれたフランスの洞窟内の絵だ。
 人類が都市文明にたどり着いた紀元前1万年前以降は地中海や紅海でサンゴや真珠などを獲るために素潜りのダイバーが活躍していたという。
 我が日本においても紀元前9000年頃の縄文時代の貝塚から、潜らなくては得ることのできない貝類が発見されている。
 ルネッサンス以降、様々な潜水装置が発明され、人は海から大きな恩恵を得ることが出来るようになった。「富を得るために潜る」。もちろん、その富には美しい海中世界に身を置き、そこに住む生き物たちとの戯れる喜びも含まれる。



Salty One Day Boating
旅のついでにシースタイル。いつかはやってみたいと思っている人は意外と多い。旅のスケジュールと天候の変化など、気軽そうでいて、なかなか実現が難しいのが実情だが、今回はたぶん日本一、旅行者の利用が高い沖縄でシースタイルを利用することができた。

旅先でもっと気軽にボーティング

 シースタイルといえば、通い慣れたマリーナから出港して、いつも通りのコースでクルージングを楽しんだり、いろいろと情報を仕入れて新しいポイントでボートフィッシングに集中するというのが定番の楽しみ方だと思う。いつもとは違う海やボートになると、なんとなく不安な気持ちになってしまうものだ。クルージングスポットや釣りのポイント、航程全体の把握も、いやはや一日遊ぶだけなのにどれくらい調べなきゃいけないんだ、と思うぐらい、海に出るためには用意が必要になる(と思ってしまう)。だから旅行のついでにボートなんか選択肢にも入れないよ、という人も多いだろう。もちろん筆者も家族旅行でシースタイルは難しいと感じてしまうひとりだ。ただ旅先で海を見る度に、こっちからの景色よりも海からの景色の方が素晴らしいのだろうなとも感じてしまう。みなさんはどうだろうか。
 今回、家族旅行でシースタイルを利用したのは、沖縄の西海岸にあるエックス・パワーだ。これまで旅先では、天候に恵まれずシースタイルを利用する機会に恵まれなかった。特に沖縄のエックス・スパワーのゲレンデは潮汐の影響を受けやすく、これまで何度か利用してみようと計画したものの断念したことがあった。
 今回は沖縄に行く直前に問い合わせて確認したところ、旅行中に3時間なら利用ができることがわかり、早速、スポーツボート「AR190」を予約。幸いにも当日は潮良し、体調良し、天候は風が若干強く吹いているものの、空は快晴で絶好のシースタイル日和になった。


無重力に解き放たれた気分

 沖縄の東海岸にあるエックス・パワーは、マリンジェットのお店として全国的にも知られている。ショップの目の前にはビーチが広がり、休日になるとバーベキューをやりながらマリンジェットを楽しむ人がたくさん集まる。私たちのような旅行者にとっては何とも羨ましい限りの環境だ。
 でもちょっと待てよ。ビーチと言うことはビーチエントリー? ずぶずぶに濡れながらボートに乗るの?と思っているあなた。いやいや、ここではボートに乗船してから海にエントリーできるので濡れる心配はない。スタッフの方がボートを乗せた船台ごと海に移動してくれる。舫いを解かれたボートはゆっくりと船台を滑って、海に浮かぶ時にはふわっとした浮力を感じることができる。これには子供たちも大はしゃぎ。マリーナの係留艇では味わえない感覚で海に出ることができる。
 目指す津堅島は肉眼でも見える距離にあり、迷うことはないはずだ。途中の所々に曽根があるが、ドライバーズシートの目の前にGPS魚探があるので大丈夫。聞けば、津堅島は1時間以内で着くことができるクルージングスポットなので訪れる人も多いという。
 この日はあいにくと前日までの強風の名残で、波がバシャバシャすることもあったが、子供たちはジェットコースターのアトラクションを楽しむように、スプレーを浴びながらわいわいとはしゃいでいる。親の心配を余所にとはまさにこのことかと思いながら、バウデッキで存分に波をかぶっている子供を見ると家では見ない目の輝きに気づかされたり、津堅島の波打ち際でせっせとビーチコーミングに励むその姿に子供たちの好奇心の旺盛さを教えられたりと、たった3時間のクルージングでも思い出の印象は陸のそれらと比べてはるかに深かった。
 ボートで遊ぶには計画が必要だ。でも計画ばかりを気にしていて海に出ないなんて本末転倒だ。天候の確認やライフジャケットの着用など安全対策はもちろん前提として、後はありのままを受け止められる気持ちさえあれば、大切なことは海が教えてくれる。ネットで海の画像を見ているあなた。さあ、今年こそ舫いを解いて海に出よう。一人でも友人とでも、私のように家族でも海は楽しめる。偶然に満ち溢れた海の時間を大いに楽しもう。


取材協力
エックス・パワー
〒901-2401沖縄県中頭郡中城村字久場1927-1
TEL:098-942-3467/FAX:098-942-3468
ホームページ:http://www.xpower-yamaha.com/


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スポーツボートはビーチエントリー。このまま海に向かいます。
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子供たちは船上の時間を大いに楽しんでいるよう
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目的地の津堅島。この日はビーチ正面が風表になっていたので風波がたっていました
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ビーチコーミングを終えて収穫品を手に記念ポーズ
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女性陣はスプレーを浴びながら沖縄の海を満喫
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あっという間の3時間。帰港はこの中にボートを収めます
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沖縄といえばステーキですよね
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ソーキ蕎麦も楽しみの一つ。シーフードでないのに海を感じる不思議な一品
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南国の夕焼け。この空を見るだけでも沖縄に行く価値はありますね



海の道具 マリンギア四方山話
 イケスといえば料亭の水槽を思い浮かべる、というのはかなり呑兵衛な方だろう。が、ボートフィッシングファンならば、デッキの蓋を開けると、船底から海水の取り込み口がついているボックス型のスペースのこととピンとくる。
 初めてこのスペースを見たときは正直驚いた。船底に穴が開いてる!欠陥じゃないか、この船、と。 もちろん今では、水は喫水線までしかあがってこない事を知っている。
 では、その船底の穴を開いたまま、高速で航行するとどうなるか、ご存知だろうか。
 通常、穴は3個付いていて、2個の穴から注水し、1個の穴から排水されて、イケスの中の水が常に新鮮な海水となるように作られている。ところが3個とも開けたまま、高速で航行すると、ボックスに溜まった水は負圧により、どんどん排水されて空っぽになってしまう。
 折角イケスに入れて持ち帰り、新鮮な刺身を期待していた魚たちは、哀れ水のない船底にぺったんこに張り付いてご臨終ということになる。
 そうならないためには、航行時にはイケスの穴の蓋を閉めればよいのだけれど、これがまたちょっと難儀な作業だ。揺れるデッキに這いつくばり、水の中に手を突っ込んで船底に蓋をしなければならないのだから。
 当然ながら、困ったところに道具有りで、塩ビ管の先に、船底の蓋を取り付けたようなパーツが用意されている。しかもそのパーツ、注水量や排水量も調整できるという優れものなのだ。
 魚にも自分にも優しいイケスの道具、困った経験のあるボートオーナーにオススメである。



ヤマハニュース
「マリン塾」で操船・離着岸の腕を磨こう
ボートで遊ぶための技術を基礎からしっかり学べるレッスンのご案内です。
http://sea-style.yamaha-motor.co.jp/marinejyuku/

イベント(展示、試乗会)スケジュール
https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/event/schedule/

ボート免許更新お知らせサービス(無料)
どなたでもご利用いただける、メールでお知らせするサービスです。
https://www2.yamaha-motor.jp/marine/license/announce/index.asp



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【編集航記】
4月28日、ヤマハがセーリングチームを結成し、470級のヨットにおいて世界のトップを目指すプロジェクトが正式に発表されました。世界で闘うことのできる有望なセーラーがヤマハチームに加わるとともに、470級ヨットの製造ライセンスを所有していることから、ヤマハの技術力を駆使したレース艇の開発も同時に進めていくというもの。ぜひ、ご注目、ご声援を!
(編集部・ま)

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