ソルティライフ
イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
イメージ
MONTHLY COLUMN ● ダイビングっていいよね。
キャビンの棚 ● 楽譜の読めないピアニスト「Concert by the sea」
船厨 ● サリーの好物「はまぐりのスープ」
海の博物誌 ● ホタルイカの身投げ
Salty One Day Boating ● フネに乗って船を見る。
海の道具 ● アンカー引き上げと人生の関係
YAMAHA NEWS ● 春のイベント(展示、試乗会)スケジュール/「470級」で世界の頂点を目指すヤマハセーリングチーム2017年体制/「マリン塾」で操船、離着岸のテクニックを身につけよう!
3月の壁紙 ● 『Salty Life』読者限定壁紙カレンダー

※お使いのブラウザでHTMLメールを表示できない場合は、こちらのサイトからもご覧いただけます。

MONTHLY COLUMN
イメージ
 昨年の夏、生まれて初めてスクーバダイビングを体験してしまった。本欄で、これまで15年近くにわたって、ほぼ恒常的に上から目線で海について語ってきたのだが、実は潜ったことがなかったのである。
 潜らなかったのにはそれなりの理由があるに違いない。若いときに機会がなくて潜り損ねた。船乗りが海に入るのは飢えて食い物を探すか死ぬときだと考えていた。そして、何より怖かった。ふつうに考えてご覧なさい。海の中なんて息苦しいに決まっているではないか。私は想像するときでさえ、海水を飲み込んでしまいそうで、だいたいは息を止めてしまい苦しくなる。
 いつも眼下に広がる海なのに、その奥中は、とても遠い存在だったのだ。
 海中は実際に遠い存在だ。世界で最も高い山はエベレストで、そこは標高8,850メートルだといわれている。呆れたことに、何人もの人間がそこにたどり着いている。しかも徒歩でだ。
 ところがその逆、水深8,850メートルはどうだ。とうてい人間がたどり着くことなんてできない。生身の人間が潜ることができるのは一般的には30メートルが限界なのだとか。もちろん、自分が人間であることを忘れてしまったような、お茶目な人がいるにはいて、その記録が214mなのだとか。
 それだけ海の底は人間にとって遠い遠い場所だったはずなのだ。
 とにかく潜らない理由をつべこべと考えているうちに、フィリピンのセブ州マクタン島からバンカーボート(フィリピン独特の、それはそれは素敵なボート)に私は乗せられていた。先輩カメラマンの口車に乗せられて、出っ張った腹を引っ込めて、ウェットスーツに無理矢理からだを突っ込んで、重たいタンクを背負わされていたのだった。動きにくい。老いぼれたペンギンになった気分だ。
 そして、ついに自ら身体を海にレッコした。レッコという言葉を使うのは、昔ヨット乗りだった者としての矜持である。この時点でダイビングに魂は売りたくないと、まだ考えていた。  
イメージ
イメージ
 どうやって空気を吸い、どうやって空気を吐いていたのか、もう忘れてしまったが、とにかく「プシュー、ボコボコ、プシュー、ボコボコ」という、レギュレーター(といったか?)の音は、なまめかしく記憶に残っている。
 いい感じで男前の、素敵な女性インストラクターと手を繋ぎ、ゆったりと海の中を行く。いい気分と言いたいところだが、こちらは大いに不安である。その女性インストラクターが先輩カメラマンのお嬢さんだったからという理由もあったが、私は最初のうち、その女性インストラクターに手を離されたら死んでしまうと考えていたのだ。
 しかし、そんな不安も、ものの数分で消え失せる。潜ったのはせいぜい7~8メートルぐらいの深さだが、それでもその世界は、驚愕の一言に尽きる。素晴らしいのである。
 私はヤマメやイワナを釣るために、ときおり山に入ることがあり、その美しい風景に癒やされることが多いが、やはりそこはあくまでも人間の世界だ。ところが、海は文字通り「別世界」である。
 上を見上げると、海面越しにゆらゆらとうごめく真っ青な空を背景に、カスミアジか、ロウニンアジか、大型のアジが群れをなして泳いでいた。いつもはゲームフィッシュとみなして追っかけ回している相手だが、ここでは、決してゲーム(獲物)ではない。そして、私は完全に彼らに屈服している。そう思わせる、おおらかな自由さと力強さが魚たちにはあった。ここは海、彼らの場所なのだ。
 ここに人間が存在していていいのだろうか。そんな疑問がわく。だが、思えば海の上ですら、本来は人間がいてはいけないところなのだ。
 山に登ったとき、もしかしたら人は「征服」したと思えるかもしれない。だが、海に対して、そう思うようなことは、私には決して訪れないだろう。
 ものすごい景色を見てしまったおかげで、船に上がってもなかなか興奮が収まらなかったが、落ち着いてくると、ある気持ちが心の中に芽生え始めた。くさいことを言わせてもらおう。それは、海への畏れと感謝の念だった。


写真:エルアクアリオダイバーズ(http://www.elacuariodivers.com)/Manabu TAKI

田尻 鉄男●たじり てつお
外洋帆走部に所属しクルージングに明け暮れた大学生活、1年間の業界紙記者生活を経て、88年、プロダクションに入社。以来、日本のボーティングシーン、また沿岸漁業の現場を取材してきた。1963年、東京生まれ。



キャビンの棚
イメージ
「Concert by the sea」
レーベル:Colum
参考価格:927円(輸入盤参考価格)
 「ブロックコード」という、両手を同時に使い和音を弾く、ピアノの演奏テクニックがある。鍵盤上で両手が近づき、同じ方向に動くさまは、観客からは腕が固定されて同時に動くように見える。ジャズではブロックコードを奏でるピアニストのテクニックは「ロックド・ハンズ」とも呼んだりもする。メロディラインやスイングを強調させる効果で、ビル・エバンスやデイヴ・ブルーベックはソロ終盤に用いた。ブロックコードはジャズバラードの代表的なスタンダード「Misty」で知られるエロル・ガーナーの代表的なテクニックだ。
 エロル・ガーナーは、独創的で、印象派を連想させる美しい旋律を奏でるジャズピアニストだが、生涯に渡り、まったく楽譜を読めなかった。一度聞いた音を即座に再現する類まれな耳コピ能力で、楽譜や音楽を学ぶことに必要性や興味を感じなかったそう。NYでチャーリー・パーカーとの共演を経て、ビハインド・ザ・ビートと呼ばれる独自の演奏スタイルを確立し、エンターテインメント・ピアニストの道を歩んだ。現存する映像の中では、観客に笑顔をたやさず、軽々と演奏する彼の姿を見ることができる。エロルガーナーは、観客を巻き込むエンターテイナーでありながら、後世のジャズピアニストへ影響を与えるスタンダートを生みだした。そんな彼の代表作である「Concert by the sea」。
 西海岸モントレー半島に位置する、芸術家や詩人が集まる風変わりな海辺の街として知られるカーメル。この作品はカーメルのサンセットスクールで、1955年9月に開催されたコンサートの演奏を録音したものだ。序盤からブロックコードを駆使し、スイングのあるメロディラインをアップテンポに奏で、時に鍵盤を叩いて情熱的な演奏を展開する。毎夏カーメルのビーチサンセットにはとても多くの人々が詰めかける。そんな人々を盛りあげるかのように、トレモロやオクターブ奏法などの多彩なテクニックで、とても賑やかでドラマチックな演奏をする。彼とほぼ同世代のモダンジャズアーティスト達とは一線を画した、楽しさ、が彼の演奏にはある。じっくりと聞くというよりも、にぎやかな場所で誰かと聞けば一層に楽しめそうだ。



船厨
イメージ
 お嬢様のいる読者のみなさん、ひな人形の片付けはお早めに。ベストは「啓蟄の日(けいちつのひ)」だといわれています。2017年はまさにソルティライフをお届けしているきょう、3月5日がその日です。あまりぐずぐずしていると、お嬢様がお嫁に行けなくなる、などというのはもちろん迷信。いまどきは「セクハラ」などと叱られるかもしれません。
 桃の節句のならわしに「はまぐりのお吸い物」をいただく、というのもあります。これも「嫁」にまつわる言い伝えで、はまぐりに代表される二枚貝はぴたりと合わさることから、良縁が期待できるというものです。
 人形の後片付けも、はまぐりも、女の子の幸せはお嫁に行くこと、という、そんな価値観が当たり前だった時代から続いてきたならわしなのでしょう。
 さて、毎年お吸い物ばかりでは飽きちゃうかもしれず、ひな祭りに少し遅れて「はまぐりのスープ」をつくってみました。
 「スープ? これクラムチャウダーじゃないの」という方がほとんどだと思いますが、あえて「スープ」としました。
 筆者の愛読絵本の一つロバート・マックロスキーの「One Morning in Maine」の日本語訳「うみべのあさ」で、「clam chowder」が「はまぐりのスープ」と訳されているのです。
 日本語版の初版は1978年。クラムチャウダーという料理が広まっていなかったのか、それともあえて「はまぐりのスープ」と訳したのか、訳者の石井桃子さんにお尋ねする術はもうありませんが、なんとなく後者のような気がするのです。
 ソルティライフではロバート・マックロスキーもクラムチャウダーも何度も取り上げてきました。はじめて知った方は、ぜひ「うみべのあさ」を手にとってひらいてみてください。素敵なソルティライフの世界がそこにあり、手作りのクラムチャウダーが食べたくなるはずです。また、お吸い物と同じく娘への愛情に満ちた料理なのだと感じるはずです。
 来年のひな祭りにぜひ。


「はまぐりのスープ」の作り方
■材料
小粒のはまぐり30粒程、玉ねぎ1個、じゃがいも2個、ベーコン 100g、白ワイン 200cc、牛乳200cc、小麦粉 大さじ3、水400cc、コンソメ1個、生クリーム100cc、バター20g、ローリエ2枚、塩・コショウ適量
■作り方
1)はまぐりは砂抜きをしておく
2)鍋を熱し、バターを溶かし、1cm角切りの玉ねぎと1cm幅に切ったベーコン、1cm角切りのじゃがいもを炒める
3)白ワイン、ローリエを入れ、煮切ったら水を加え、コンソメを入れ、はまぐりを加え、蓋をして10分程煮る
4)牛乳に小麦粉を入れ、よく混ぜてから3に加える
5)生クリームを入れ、塩コショウで味を調える。好みでパセリのみじん切りやクラッカーを添えてもOK



海の博物誌
 3月から5月の新月の夜には富山湾の春の風物詩である「ホタルイカの身投げ」が起こると言われている。産卵期のホタルイカが、海岸に無数の数が打ち上げられる現象である。生息する200メートル~600メートルの深海から沿岸の浅瀬まで上がり産卵が行われる。新月の夜は、月の光を目印にするホタルイカが、誤って海岸に接近してしまい、深海に戻ることができずに陸地に打ち上げられてしまうという話だそう。真偽については、分かっていないが、新月の富山湾には多くの人が「ホタルイカの身投げ」を目当てに詰めかける。
 街を青く照らすイルミネーションイベントが流行っているが、夜の海岸を照らすホタルイカの姿も見てみたい。暗闇の中打ち上げられた無数のホタルイカが、海岸線に沿って青白く発光する様子は幻想的だ。



Salty One Day Boating
横浜のホームマリーナ、D-Marinaから出港した。2月、この日も穏やかな冬の海。先月にご紹介したSR-Xで、いつものシーバスフィッシングに出かけた。何度も繰り返すが、冬の穏やかな海は最高である。

 気持ちのいい海だからといって釣果に結びつくかといえば、そう単純なものでもなく、大潮の下げ止まりからスタートしたこの日は、なかなか魚に出会うことができなかった。ただ、潮が動き出せば、必ず釣れるポイントもあることだし、焦ることもない。
 割り切りつつ、それでも少しの期待を抱きながら、京浜運河内の平場でのんびりキャストを続ける。おだやかな天気だがそれなりに気温は低く、厚着をしてきた。キャストを続けていると少し汗ばんでくるのが感じられる。
 運河から沖へと出た。いつにもまして、大型船が多く感じられる。プレミアムフライデーの翌日だから、というわけはないけれど、車などの渋滞でいわれる「ごとうび」と似たような法則があるのかもしれない。
 横浜港、川崎港、東京港の総称である、いわゆる京浜港には、外航船だけでなんと年間約20,000隻が入港している。
 それらの大型船をよくよく見ると、それぞれに特徴があって、なかなか楽しいではないか。ヤマハの海の雑誌「キャプテンズワールド」の最新号に、ボートで飛行機を見に行こうという記事を見かけたのだけれど、海を当たり前のように航行していたり、停泊している船をひとつひとつ見ていくのは、かなり楽しいということに気づいた。
 いろいろな船を見ていて最も感動的だったのは、タグボートの活躍ぶりである。
 川崎沖のシーバスに係留していた大型船が舫いを解く。大型船と比べてかなり小さなボートがロープをつなぎ、懸命に引っ張る。タグボートの日常的な仕事であり、本当のところどれほど懸命なのかわからないが、そう見える。
 翼橋近くの岸壁に、同じく大型船が係留しようとしている。もちろんタグボートの登場だ。こんどは鼻っつらを大型船の胴体に押し当てて、懸命に前方へと力をかけている。スターンからはプロペラの回転で白い泡が渦巻いている。ぱっと見て、動いているようには見えないけれど、それでもゆっくりと大型船は岸壁に横付けされていく。
 スポーツカーのようなカタチをした大型船、タンクをいくつも積んだ大型船。そしてほとんどの船は外国から海を渡ってやってきた。どんな航海だったのだろう。船員たちは何を食べてきたのだろう。夜はどのように過ごしているのだろう。取材を進めればわかることかもしれないが、わからないことは残しておいた方が楽しいときもある。なお、周辺はSOLAS条約の指定港湾。無闇に外国船には近づかないように。
 そういえば、釣りだ。働くボートに声援を送った後、お目当てのポイントで、この日のために買い揃えた初使用のルアーが大当たり。満足、満喫。


取材協力
D-Marina
神奈川県横浜市神奈川区東神奈川2-49-11
TEL:045-461-1062
ホームページ: http://www5a.biglobe.ne.jp/~daruma/


イメージ
イメージ
イメージ
MAJUROってどこだかご存じ?マーシャル諸島の首都なんだそうです
イメージ
そのマーシャル船籍の船が出航します。タグボートがフネを真横に引っ張ります
イメージ
ずんぐりしたフネ。ノルウェーの船会社の所有船。何を運んでいるのか
イメージ
上とは対照的なスポーティな本船。どこか海外製のスポーツボートを思わせます
イメージ
この海の周辺は工場巡りもたのしみのひとつ。いろいろあります
イメージ
そんな工場とフネはよく似合います
イメージ
こんどは押します。ひたすら押します。感動的
イメージ
もちろん釣りも楽しんできました。最高です
イメージ
横浜ベイブリッジ。多くの大型客船がこの橋をくぐります



海の道具 マリンギア四方山話
 マリンライフに縁遠い人から見るとアンカーは、丸い輪っかを頭にして、下部に左右にフックを携えたようなものを想像するようだ。でも実際はそんな形をしたアンカーはなく、用途によって様々な形状をしている。
 レジャーボートでの主流はダンホース型といわれるものになるだろうか。
 シャベルを平らにして二つに割ったような羽根を根元だけ繋ぎ合わせ、その真ん中に、引っ張るための棒を取り付けている。羽根が海底の砂にざっくりと突き刺さることでロープの先の船を固定させる仕組みになっている。砂地の刺さり具合と羽根の上に乗った砂の重さで固定力が決まるわけだが、一方で引き上げるときにはうまく砂地から抜けてもらわなくてはならないから難しい。
 ところで、ロープを巻き上げる過程はまるで一つの人生のようなストーリーがあるのをご存知だろうか。
 巻き上げ始めてすぐは、ロープのたるみがあるためするすると動く。親に見守られながら揺籠で眠る幼児期のようだ。
 そのうちすぐにロープは張り、船を引き寄せながら巻き上げていく様は、成長期の苦悩のごとし。
 ググッとアンカーが海底から引き剥かれる瞬間は荒れる反抗期か社会人デビュー時の混乱だ。
 そこを過ぎるとアンカーは海中をゆらゆらと揺れながら順調に持ち上がり、海面から船に上がるときにちょっとした混乱があった後、最後はゆっくりとアンカーロッカーという墓に収められる…。
 ちょっと擬人化し過ぎか?



ヤマハニュース
春のイベント(展示、試乗会)スケジュール
https://www2.yamaha-motor.jp/Event/Marine/

「470級」で世界の頂点を目指すヤマハセーリングチーム2017年体制
https://global.yamaha-motor.com/jp/sailing/

「マリン塾」で操船、離着岸のテクニックを身につけよう!
ボートで遊ぶための技術を基礎からしっかり学べるレッスンのご案内
https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/life/stepup/marinejyuku/



今月の壁紙
『SALTY LIFE』読者限定
3月の壁紙カレンダーはこちらからダウンロードできます。
イメージ


バックナンバー
『SALTY LIFE』のバックナンバーはこちらからご覧になれます。


【編集航記】
今回のタイトル画は桜のお花見です。桜というと関東では4月のイメージが強いのですが、ソルティライフが出る頃に花見を思い出したのでは遅すぎる、ということで、一足早くTadamiさんに描いてもらいました。都内の運河はボートの交通量も多くなる季節。一部ではプレジャーボートや水上オートバイのマナー違反、ルール違反も指摘されています。すべての人が、いつまでも安全で楽しいマリンライフを過ごすため、その鍵を握るのは私や読者のみなさんだったりします。良いボーティング、良い釣りを。
(編集部・ま)

ソルティライフ公式Facebookページ 「Yamaha Motor Nautical Mile」

■ 『SALTY LIFE 』について
メールマガジン配信サービスにご登録いただいているお客様に定期的に配信するマリン情報マガジンです。


■ お問い合わせに関するご案内
『SALTY LIFE』は送信専用のアドレスより配信しております。
「配信の停止」についてはhttps://www2.yamaha-motor.co.jp/Mail/Saltylife/をご参照ください。
お問い合わせに関しては、marine_webmaster@yamaha-motor.co.jpまでご返信ください。


※お使いのブラウザでHTMLメールを表示できない場合は、こちらのサイトからもご覧いただけます。
ページトップへ
『SALTY LIFE』
〒438-8501 静岡県磐田市新貝2500
発行:ヤマハ発動機株式会社


Copyright (C) Yamaha Motor CO.,LTD. All rights reserved.
掲載文章および写真の無断転載を禁じます。