ソルティライフ
イラスト・Tadami
いつでも潮気のある生活を過ごしたい。
イメージ
MONTHLY COLUMN ● ヨンナナマル大国・日本のプライド
キャビンの棚 ● 4つ打ち本来の魅力を堪能する「MG4」
船厨 ● 北洋の花「ホッケのオリーブオイル焼き」
海の博物誌 ● リアス(式)海岸とシルク=ロードの意外な関係
Salty Who's Who ● 新天地で世界を再び
海の道具 ● あげたりさげたり
YAMAHA NEWS ● 深海への挑戦/ボートのレンタル・シェアリングならマリンクラブ・シースタイル/「マリン塾」操船、離着岸、ボートフィッシングなど
8月の壁紙 ● 『Salty Life』読者限定壁紙カレンダー

※お使いのブラウザでHTMLメールを表示できない場合は、こちらのサイトからもご覧いただけます。

MONTHLY COLUMN
イメージ
 470級。全長4.7mに由来するこの2人乗りレーシングディンギーの名称を日本ではヨンナナマルと呼ぶ(ちなみに英語ではfour-seventy)。テレビ局のアナウンサーは「ヨンナナマルきゅう」と、ヨンとマルにアクセントを置くようだが、セーラーはヨンナナマルと平板アクセントで発音する。多くの場合『級』は省略されるが、さらにヨンナナと短縮すれば玄人っぽさは増す。
 欧米が圧倒的強みを見せてきたセーリング競技において、日本が世界に伍して戦える唯一の種目が470級なのだ。乗り手の合計体重120kg前後が適正とされており、日本人の平均的な体格に近似する。日本では国体や全日本学生ヨット選手権などに採用されていることから、470級のマザーランドであるフランスを上回る普及艇数となっており、競技人口も群を抜くヨンナナマル大国となっている。
 過去の実績を見ても世界選手権では1979年と1989年に日本チームが優勝、オリンピックでは1996年のアトランタ大会で女子が銀メダル、2004年のアテネ大会で男子が銅メダルを獲得している。『お家芸』と呼ぶには少々物足りない実績ではあるが、他の五輪種目はオリンピックの表彰台どころか、世界選手権で10位以内に入ることさえままならない(1人乗りのレーザーラジアル級で土居愛実選手が2015年の世界選手権で8位に入ったのが唯一の例外)状況を見れば、470級が『相対的なお家芸』であることは間違いない。

イメージ
イメージ
 男子2チーム、女子1チームによる470級のセーリングチームYAMAHA Sailing Team 'Revs'は2016年に結成された。2020年に世界でトップとなることを目標にしている。420級(ジュニア世代の国際クラス)世界選手権で優勝した髙山大智(19歳)、2015年全日本インカレで関西学院大学を470級クラス優勝に導いた神木聖(23歳)、2015-2016年とインターハイ2連覇を成し遂げた宇田川真乃など、いずれも若くて生きのいいヘルムスマン揃い。最年長はリオ五輪にクルーとして出場した32歳の今村公彦で、他はいずれも20代前半の若いチームだ。
 この話を聞いて既視感を感じるとしたら、それは相当オタクなオールドファンだろう。ヤマハ発動機はかつて通称ヤマハファクトリーチームという、複数チームによる470級の活動を行っていた。それは日本の470が最も輝いていた1980年前後のこと。470級が五輪種目に初めて採用された1976年のモントリオール大会でヤマハ発動機所属の小松/黒田が10位となり、翌1977年の世界選手権で小松/箱守が1位に1点差の2位、翌年行われたモスクワ五輪のプレプレ大会で同チームが優勝、そしてモスクワ五輪代表選考では、同じヤマハファクトリーチームの三船/箱守が勝利するなど、日本470の黄金時代を支えたのがチーム・ヤマハだったのである。
 ヤマハが行うキャンペーンのアイデンティティは「日本のヨンナナマルで、日本人選手が、メインポールに日の丸を掲げる」ことにある。そう、世界一のセーラーを育成すると同時に、世界一のヨンナナマルを開発/製造することが、ボートビルダーでもあるヤマハ発動機が行うキャンペーンの特質なのだ。
 日本の代表となるのは1チームだけにもかかわらず、複数チームによる活動を行う理由はそこにある。厳格なクラスルールで定められた微少なアローワンスの中で、他の製品に対する優位性を追求しながら開発される競技用のディンギーは、実地(海上)における極めて厳格なテストを繰り返すことによってしか、優位性のエビデンスを立証することはできない。そのためには技術力が高いレベルで拮抗した複数のチームによる2ボートテストを行える環境が要求される。三味線を弾くことなく、互いの技術をオープンにし合えるチームメイトである必要がそこにある。
 同じ釜の飯を食い、世界一のヨンナナマルをつくるべく力を合わせた者同士が、最終的には敵になる。実に過酷なストーリー立てだが、ヤマハはこの重いミッションを、3組の若者に託した。彼らの若い情熱と新鮮な感覚に賭けたのである。
 そして、そんな若者たちを率いるジェネラルマネージャーが、第二次ヤマハファクトリーチームのクルーとして1984年のロス五輪を目指す活動を経験した飛内秋彦だ。

イメージ
 最年長の今村を除く5人にとっては初めての参加となる470級の世界選手権が7月、ギリシャのテッサロニキで開催された。ジュニア時代から国際レースに慣れているとはいえ、オリンピッククラスの世界選手権ともなるとそのレベルは桁違いだ。中でも、今年の3月まで高校生だった女子ヘルムスマンの宇田川にとっては、いきなり高すぎるハードルと言ってもいい。
 結果を先に言えば、神木/疋田が日本チーム3番手の16位、髙山/今村が日本チーム6番手の21位、女子の宇田川/関はゴールドフリート(上位半分)に残ることができず、トータルでは日本チーム2番手の37位。6人全員にとって不満と後悔の残る順位であっただろう。しかし、この順位こそがYAMAHA Sailing Team 'Revs'が世界に刻んだ第一歩の足跡であることに間違いない。
 「今大会優勝したオーストラリアのベルチャー(ヤマハセーリングチームと提携)と、ゴールドコーストで合同練習してきた成果として、ボートスピードにはそれなりの自信を持ってのぞむことができたと思います。3チームそれぞれ課題が見つかったようなので、これからの練習でどこまで克服することができるか、僕は楽しみですよ」と優しい笑顔で語る飛内GMの言葉からは、今は順位よりも克服すべき具体的な課題を見つけることが大切な時期であることが理解できる。レベルの差に圧倒されつつも、逃げることなく自らの弱点に向き合うことができた若獅子たちは、大きな宿題を抱えて日本へと帰国した。
 飛内GMの手によって受け渡されたヤマハファクトリーチームのDNAは、この若者6人たちの中でどんな進化を見せ、日本のヨンナナマルの歴史にどんな物語を書き込んでいくのか? 期待を持って見つめていきたい。


写真:レース後に笑顔でセーラーに声をかける飛内GM(写真上)/ ヤマハセーリングチームのDNAを受け継ぎ世界に挑む若き獅子たち(撮影・本文:松本和久)

松本和久●まつもとかずひさ
1963年生まれ。愛知県出身。ヨット専門誌「ヨッティング」編集部を経て、1995年にフリーランスの写真記者として独立。現在「舵」誌でヨットレースを中心に取材。ヨットレースの他にも、漁業や農業など第一次産業の取材も得意とする。



キャビンの棚
イメージ
MG4
レーベル:ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ
参考価格:¥2,881(税抜)
 海の家でかかる、けたたましい重低音の打ち込み系音楽。大音量の音楽にはトラブルが多く、海の家から発する音には4年前をピークに厳しい規制がかかりはじめた。それでも、ボートやヨットに乗りながら、こんな曲に身を委ねるのは悪くない。
 海の家でかかる強い重低音のきいた音楽の多くは、4つ打ちと呼ばれるもの。そんな4つ打ちは、ビートをひたすら単純に繰り返し、時間をかけて徐々に展開していくのが魅力であるため、本来は長く聞けるサウンドが好まれる。
 Mondo Grossoのリリースした「Life feat. bird」は2000年代の代表的な4つ打ちのひとつである。4つ打ちのビートに加わるトロピカルなメロディと伸びのあるbirdの声。最初のサビ以降、ビートにさらに重なるブラジリアンパーカションのタンボリンやカイシャなどが効果して、南国の空気を漂わせながら、徐々に盛り上がっていく展開になっている。2000年の全日空沖縄のキャンペーンソングであったことも納得できる高揚感がある。
 アシッドジャズの代表的なバンドとしても知られるMondo Grossoは、ラテンミュージックやジャズに影響を受けている。「MG4」に収録されている15曲には、さまざまなラテンやジャズのインスパイアを感じるが、アシッドジャズの持つクールでノリのいい雰囲気は一貫している。リリースは少し昔だが、時を経ても色褪せていない一枚、夏の水辺で、少し気持ちを変えたいときに重宝しそう。



船厨
イメージ
 ホッケといえば居酒屋メニューの代表格。正に庶民の味だ。脂の乗ったホッケの開きはビールや日本酒の肴にはもちろんのこと、飯のおかずとしてもばっちり。
 さらに、オリーブオイルを少し使ってホッケの干物をフライパンでソテーにすると、これが洋風となってワインやパンにもぴったりの味となる。これはホッケの力もさることながら、オリーブオイルの魔力といえるかもしれない。
 さて、庶民の味であるはずのホッケだが、このところ漁獲量の減少の影響で値が高騰し、高級魚といってもいいぐらい。資源の減少には様々な理由が考えられるが、乱獲や北海道沿岸の水温の上昇などがあげられている。北海道では漁獲量の推移を見守りながら、漁獲制限を続けている状況だ。
 ホッケは漢字で魚へんに花と書く。北海道の味を代表する北洋の花。再び満開となる日がくることを祈る。


「ホッケのオリーブオイル焼き」の作り方
■材料
ホッケ 、オリーブオイル大さじ3、ニンニク1片
■作り方
1)フライパンにオリーブオイルを熱し、スライスしたニンニクを加え、香りがたったら取り出す
2)ホッケを身から中火で焼く
3)身に火が通ったらそっと返し、皮を弱火で焦がさないように焼



海の博物誌
 「リアス式海岸」という言葉が教科書から消えつつある。平成18年以降の教科書にはリアス海岸と記載されている。リアスはスペイン語の入り江という意味で、「式」が不要とのこと。確かに竪穴式などの「〜式」は人間のつくるものが多く、長い時を経て形成される自然の入り江には相応しくないのかもしれない。
 もともとリアス式海岸はドイツの地理学者・探検家のリヒトホーフェンが1886年に名付けた。スペイン北西部ガリシア地方の入り江を由来とする。ちなみにリヒトホーフェンは、中国の調査旅行をまとめた著書「中国」で、あの東西の貿易路であるシルク=ロードもまた命名している。海のシルクロードの起点である福建省は、長いリアス式海岸をもつ、天然の良港である。リヒトホーフェンはリアス式海岸を名付ける15年以上前に中国調査を行っている。リヒトホーフェンにとって最初のリアス(式)海岸はスペインのガルシア地方ではなく、福建省だったのかもしれない。



Salty Who's Who
今村公彦(セーラー)

イメージ
 6名のセーラーの中で最年長。今村公彦は昨年の秋、470級のクルーとしてヤマハセーリングチームに加入した。昨年の夏に開催されたリオ五輪セーリング競技に470級の代表として出場した今村は、17位という成績に終わった。その悔しさを胸に、日本の代表として東京の舞台に立つことを目指している。
 現在、コンビを組む大学2年のヘルムスマン・高山大智とは14歳差だ。どちらかというとヘルムスマンがレースの主導権を握ることの多いツーマン・ディンギーにおいて、クルーが14歳年上というのは異色のコンビともいえる。
 「高山君は勢いのある素晴らしいセーラー。でも勢いだけでは迷うこともある。そんなときに自分の経験なりが役に立つと思う。いま、少しずつそれがかみ合ってきていて、いい面が出ている。
 いまはすごく楽しいですね。僕も頭が固くなっているところがあるんですが、そんなとき、逆に高山君が新たな視点でアドバイスをくれることがあって大きな刺激になります。このコンビでさらに上にいくことができるんじゃないかと思っています」
 こうして臨んだ7月の世界選手権では、21位という不本意な成績に終わった。
 それでも若い高山は「これまでで、もっとも今村さんといろいろ話をしながらできたレースだった。いろいろなことをつかめた」と大会を振り返る。
 今村は「苦手な軽風域のレースでボートスピードの差よりレースの戦い方がまだまだ未熟だと感じました。自分たちの得意な風域ではそれほど遅れはとらないと思う。大きく攻めていく場面とタクティカルに行く場面を上手く使い分けることができるよう、改善していきたいなと思います」と次のレースでの挽回を誓う。
 ライバルには、世界だけでなく、神木・疋田組という軽風域にめっぽう強いコンビが同じチームで立ちはだかる。それは、ともに切磋琢磨しながら世界を目指すヤマハセーリングチームの強みでもある。



海の道具 マリンギア四方山話
 船を停泊させるには、桟橋や岸壁のような陸地にロープで繋ぎとめるか、アンカーを海底に沈めて停めるかどちらかしかない。アンカーで船を停める事を投錨といって、船を停泊すること全体をそう呼ぶ場合もある。あの重たいアンカーを巻き上げたり沈め落とすときに活躍する機器、それがアンカーウインチだ。
 今は電動のものばかりだが、パイレーツが暴れまわるような映画を見ると、太い柱にロープを巻きつけ、水夫たちが横竿を抱えて柱をぐるぐる回っているシーンにあるように、人力の時代もあった。そんなシーンを見ても判るように、アンカーを引き上げるのは大仕事だ。客船やタンカーほどではないが、レジャーボートにおいてもアンカーウインチは大きな戦力となる。揺れるデッキ上で踏ん張りながら重たいアンカーやチェーン、水をたっぷり含んだロープを引き上げるのは並大抵のことではない。さらに根掛りなどしようものなら、腕も腰も悲鳴をあげる。
 そんな力強いアンカーウインチだが、プロ達の世界では、アンカーを上げることだけにしか使わないような勿体ないことはしない。例えば、貝を大きな鉄製のかごで掻き揚げるシジミ漁などでは、かごに取り付けた棒をアンカーウインチのローラーにあてがって、引っ張り上げる手伝いをさせている。
 ただ、そんな便利なアンカーウインチも、注意しないと大きな怪我に繋がることもある。最たるものが、ロープと共に指などを巻き込んでしまう巻き込み事故だ。
 意外に思うかもしれないが、事故の多くはアンカーウインチが回っているから起きるのではなくて、ロープがウインチのドラムから滑ることで、ロープを握った指をドラムの間に挟みこんでしまうことから起きるケースが多い。アンカーを引き上げているときは必ず、いつでもロープから手が離せる準備を怠らないことが大事だ。
 手放す勇気は押入れの整理のときだけの心がけではない、ということ。



ヤマハニュース
深海への挑戦
無人の海底探査レースに挑戦する「Team KUROSHIO」をヤマハ発動機は応援しています。
https://global.yamaha-motor.com/jp/profile/ocean-discovery/

ボートのレンタル・シェアリングならマリンクラブ・シースタイル
https://sea-style.yamaha-motor.co.jp/

「マリン塾」操船、離着岸、ボートフィッシングなど
ボートで遊ぶための技術を基礎からしっかり学べるレッスンのご案内
https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/life/stepup/marinejyuku/



今月の壁紙
『SALTY LIFE』読者限定
8月の壁紙カレンダーはこちらからダウンロードできます。
イメージ


バックナンバー
『SALTY LIFE』のバックナンバーはこちらからご覧になれます。


【編集航記】
2017年の夏は猛暑といわれています。「俺(わたし)は夏男(女)。暑いの大好き」と思っている貴方、油断大敵です。それは突然やってきます。そう、熱中症。時には命に関わることも。一昨年の夏、恥ずかしながらわたしは赤道に近い海外への出張中に見舞われました。水はがぶがぶ飲んでいたのです。ところがなんとなく喉を通った水が身体に吸収されない気がしてきたと思ったら、嘔吐。そして発熱。もだえ苦しみました。大量に汗をかいたからと水ばかり飲んでいると血液中の塩分・ミネラル濃度が低くなり、熱中症を引き起こしやすくなるとのこと。つまり塩分補給がポイントのようです。以来、夏場のアウトドアでは塩飴やスポーツドリンクを必ず持参しています。皆様もご自愛を。
(編集部・ま)

ソルティライフ公式Facebookページ 「Yamaha Motor Nautical Mile」

■ 『SALTY LIFE 』について
メールマガジン配信サービスにご登録いただいているお客様に定期的に配信するマリン情報マガジンです。


■ お問い合わせに関するご案内
『SALTY LIFE』は送信専用のアドレスより配信しております。
「配信の停止」についてはhttps://www2.yamaha-motor.co.jp/Mail/Saltylife/をご参照ください。
お問い合わせに関しては、marine_webmaster@yamaha-motor.co.jpまでご返信ください。


※お使いのブラウザでHTMLメールを表示できない場合は、こちらのサイトからもご覧いただけます。
ページトップへ
『SALTY LIFE』
〒438-8501 静岡県磐田市新貝2500
発行:ヤマハ発動機株式会社


Copyright (C) Yamaha Motor CO.,LTD. All rights reserved.
掲載文章および写真の無断転載を禁じます。