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レポート&コラム

日本沿岸で行われるビルフィッシュトーナメントレポートと海外の釣行記です。

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モデル兼ライターの山下晃和氏によるビルフィッシュトーナメント体験レポート

2007年7月5日~7日 場所:和歌山県那智勝浦町

 乗り物が好きで旅が好きという僕にとって、大海原を自由に走れるボートは、いつかは手に入れたい乗り物のひとつ。ボートを走らせながら感じる潮風の爽快感は一度味わえば忘れることの出来ない経験だ。ふだんはシースタイルのクラブ艇を操船する程度で、フライングブリッジのあるボートでのクルージングやカジキ釣りの経験はまったくない。ボートについてはペーパードライバーも同然なのだが、運良くビルフィッシュトーナメントのレポーター役を引き受けることになった。
 今回訪れた那智勝浦町は近海マグロの水揚げで有名な港。風光明媚な港の景色、熊野大社の本宮や那智の滝など、この地を観光で訪れる人も少なくない。その勝浦の町がカジキ釣り一色に染まるのが、7月の初旬に開催される勝浦ビルフィッシュトーナメントだ。

紀の松島

勝浦港の外には「紀の松島」と呼ばれる奇礁奇岩が点在。この景色を見るだけでもボートを出す価値がある

スタートフィッシング

7時のコールと同時に全艇が南へと目指す。30ftオーバーのボートが駆け抜けるスタートシーンはまさに圧巻

航行中

ポイントを目指してフルスロットルで走る。やはりポイントには一番で着くことが、確率を高くする

 競技1日目の天候は雨。しかしながら海は「ベタ凪」(これはうねりや波のない状態を言う)で、釣りやすいコンディションだという。僕が乗ったボートはYAMAHA 32 CONVERTIBLEという32フィートのコンバーチブルボート。ちなみにこのコンバーチブルという言葉はスポーツフィッシャーとしての機能とクルージングボートとしての快適性を兼ね備えていることを指している。その言葉の通りこのボートは快適なキャビン空間とカジキ釣りを行う機能的なアフトブリッジを装備している。
 舫を解いて出港。周りを見渡せばこの大会の参加艇が同じようにフェンダーを外しながらスタートラインに向けて、デッドスローの状態で前進させている。大会旗を掲げた本部艇と副本部艇がスタートラインを形成しているが、多くのボートははるか後方で待機して、スタートのコールを待っている。
 そして無線からカウントダウンが始まり、7時に一気にスタート。すべてのボートが勢いよくスタートし、曳き波をものともせずにスプレーを上げながら進む光景は迫力満点だ。
 僕は、スタート直後に船室の心地よいソファに座り、あれやこれやとランディングの手順を反芻しているうちにうたた寝をしてしまい、こともあろうに酔ってしまった。昨夜の睡眠不足や、移動疲れが体によくなかったことが、後から判明。船室に入って下を向いていると酔いやすいので、僕のようなビギナーは、あれやこれやと考えずに、アフトデッキやフライングブリッジに座って、風に当たる方がいいという。また、遠くの水平線を眺めているのも効果的だ。でもこの日はあいにくの雨。キャビンでゆっくりしようと思ったのがいけなかった。
 1日目は残念ながらカジキがかかる気配が無かった。もし、かかったとしても僕は何の役にもたたなかっただろうから、明日はカジキを釣ることよりも、自分の役割が全うできる事を祈るばかりだ。

タックルチェック

出航前の準備。タックルチェックはクルー全員で行っていた

ルアー

ラインにセットするルアー以外にも異なるタイプのルアーを準備

展開

串本を過ぎたあたりでアウトリガーを展開。いよいよカジキとの勝負がはじまる

2日目は、やや雨足が強かった。
 昨日の反省を生かし、準備の後でフライングブリッジに座ることにした。やはり、フライングブリッジは遠くまで見渡せるので、酔う気配がない。波は、昨日よりも荒れていたが、キャプテンや、ベテランメンバーは、顔色一つ変えず、来る波に対して、巧みな操船で進んでいった。時々、大きな波が来て、ふわっと体が浮いて、ジェットコースターのような感覚になったが、これも船ではよくあることなのだろう。僕はモトクロスのコースをたまに走るが、波が連続的にやってくる中を前進していく感覚は、フープスを越える感覚に似ていると思った。だが、車やバイクと違って、前からだけではなく、左右や後ろからも波が来るので、状況はより深刻。さしずめ究極のラフロードと言ったところだろうか。
 2日目も初日と同じように周参見沖を目指して南下した。
 キャプテンは、鳥山がないか周囲を確認しながら潮目を目標にボートを走らせる。多くの参加艇と同じように串本沖を過ぎたところでアウトリガーを展開してトローリングスピードに入る。トローリング中はセオリーに従って、じっくりと船を走らせ、大きく旋回し、海を行ったり来たりしている。これも作戦のひとつで、やみくもに走らせているのではなく、カジキがいる場所に的を絞りながら、船を走らせているのだという。
 4本のロッドから繰り出されたラインの向こうには、ルアーがカジキを誘うように泳いでいる。時折、ラインの長さを変えながら、カジキがヒットするのを待つ。
 
 しかしこの日もノーカウント。 
 
 結局、カジキを釣り上げることはなかったが、自分にとって、船とフィッシングという関係を知るいい勉強になった。
 港に戻ると他のチームがランディングさせたカジキが、クレーンで運ばれているのが見えた。周囲の人は、「大した大きさじゃないな。」と言っていたが、僕にとってはその大きさ、たくましい魚体に正直驚かされた。

ウミジンクラブ

昨年の優勝チーム<ウミジンクラブ>も間近でカジキを探していた

天候

曇りから雨へ。そして曇りへと空模様が変わる中でカジキを探す。どのチームも粘り強く船を走らせる

検量風景

例年になく少ない釣果だったが、岸壁では勝浦町の人びとが一目見ようと大勢集まっていた

表彰パーティ

最終日は表彰式を兼ねたパーティが催された。和やかな雰囲気の中で参加した皆が、カジキ談義に花を咲かせていたる

 ビルフィッシュは、チームで闘うスポーツである。アングラーがカジキを揚げたとしても、それはアングラーだけの功績ではなく、チーム全体の功績なのだ。一致団結して、釣ろうとする情熱を燃やすことによって、捉えることが出来るという。さらに、まったく知識がない人間でも、経験豊富なメンバーがいるところに入れば、何の不安もなくカジキ釣りの醍醐味を経験できる。これは他の釣りではなかなか味わうことの出来ないスタイルだと思う。釣りに興味がある人なら、一度は体験してみてはいかがだろうか。機会があればぜひまた挑戦したいと僕自身もそう思った。


山下晃和氏

プロフィール
山下晃和 (やました あきかず)

1980年生まれ、モデル兼ライター
ファッション誌、フィットネス誌などの雑誌モデルを中心として活動する他、WEB、広告CMなどのモデル。バイク、アウトドア、自転車雑誌ではモデルだけでなく、ライター業として原稿も書き、フリーライドマガジンでは、連載コラムを持つ。
アドベンチャーレース等のアウトドアスポーツと、バイクでの林道ツーリングが趣味。船は、小型船舶一級免許と、小型特殊船舶免許を所持し、海の楽しみにも興味を持っている。

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