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小さなEVで農業の未来を変える
小さなEVで農業の未来を変える

木村さんは、かつて農業を嫌っていました。

「汚い、きつい、かっこ悪い。そんな農業はやりたくなかった。」

けれど長男として家業を継ぐ道を選んだとき、心に決めたことがあります。

「やるんだったら、日本で一番かっこいい農業をやろう。」

海外のトラクターを導入し、作業着にはアウトドアブランドを取り入れる。軽トラではなくSUVで畑に乗り入れる。農場の風景を変える"かっこいい農業"の挑戦が始まりました。

「農業ってかっこいい」そう思ってもらうことは、次の世代が農業に触れるきっかけになる。子どもたちが農業に憧れ、体験し、関心を持つ。その接点こそが、農業を持続可能な産業に変えていく第一歩だと、木村さんは語ります。

こうした挑戦はやがて、農業そのもののあり方を見直すきっかけにもつながっていきました。

小さなEVで農業の未来を変える

冬のリンゴ畑で必ず発生する作業が剪定枝作業。りんごの木の枝を切って、よい実がなるように木の形を整える作業です。剪定された木の枝を中腰で一本一本拾い集め、畑の隅に運んで燃やす重労働です。

木村さんも幼い頃から剪定枝作業を手伝わされましたが、雪深い畑で枝を運ぶ作業は、子どもにも高齢者にも過酷なものでした。特に腰の悪い祖母にとっては苦痛で、祖母はこの作業が原因で農業を嫌っていました。

「こんな非効率な仕事をなくしたい。ばあちゃんにも楽に農業を続けてもらいたい。」

その思いから木村さんは27歳のとき、自ら剪定枝回収機を開発。廃材を活用して作り上げた機械は、手作業の50倍の効率で枝を集めることに成功しました。

「祖母が『これなら腰が痛くても手伝える』と笑ってくれたのが、一番嬉しかったですね」

農業を効率化することは、家族を守ることでもあったのです。
効率化の工夫を重ねるうちに、木村さんは農業と環境の関係にも目を向けるようになります。

小さなEVで農業の未来を変える

木村さんは、農業を「食料を生み出す産業」であると同時に、「環境負荷の大きい産業」だと冷静に見つめています。

例えば、トラクターや作業車のガソリン、それに、切った枝や作物の残りなどをそのまま畑で焼いたりすることもあります。農業は自然を相手にしながら、実は地球に負荷をかけてきました。

「農業をサステイナブルにするには、農業で使うエネルギーを農業から生み出す循環が必要なんです」

その思いから、風丸農場では、剪定枝などをチップや薪に加工し、ボイラー燃料として再利用する取り組みを進めています。さらに将来的には、農作業や作物から出た廃棄物をバイオマス燃料として、農機具の燃料に転換し、農業で使うエネルギーを完全に循環させることを構想しています。

「農業で出たものは農業に還す。そうすれば農業は、持続可能な産業へと進化できる」

環境への視点はやがて、農業をどう続けていくかという"経営の問題"にもつながっていきます。

小さなEVで農業の未来を変える

木村さんは農業のビジネス化にも積極的に取り組んでいます。青森エリアの農業は、家族の無償労働に支えられている事実があります。家族の無償労働による仕組みでは、若い世代に農業を継がせることはできません。

「農業は我慢や犠牲で続けるものじゃない。きちんと利益が出て、次の世代が挑戦できる“事業”でなければならない。」

効率化と合理化によって利益を生み出し、農業をビジネスとして成立させる。木村さんの思想には、青森の農業を“持続可能な産業”へと転換する強い覚悟が込められています。

そして木村さんは、農業には経済や環境だけでなく、人の心を支える可能性があることにも気づきます。

小さなEVで農業の未来を変える

木村さんは、農業が“心のケア”や“教育”の場になる可能性を実感しています。

風丸農場では、学生を受け入れ、労働と暮らしを社内通貨で回す仕組みを試みました。農作業で得た対価を、宿泊費や食事代などに使える仕組みです。

その試みに参加した、悩みを抱えた学生が農作業を通して前向きになっていく姿を木村さんは見てきました。

「農業は人の心まで支えられる可能性がある。」

この体験を通して、農業は食べ物をつくるだけの産業ではなく、人と人をつなぎ、社会を豊かにする基盤になれると木村さんは実感しました。

小さなEVで農業の未来を変える

そんな現場に登場したのが、ヤマハの小型EV「C580(シーゴーハチマル)」でした。

「正直、色は好みじゃなかったんですよ。」と笑いながらも、免許を持たない若者や高齢者の移動手段になること、そしてトレーラーや木箱を組み合わせれば農業現場にフィットすることに、木村さんはすぐに気づきました。

「本体だけじゃ“移動”で終わる。カスタマイズできれば、農家にとって唯一無二の道具になる。」

「この小さなEVは、農業の効率化・合理化をさらに押し進める力になる。」
そんな木村さんの思いを実現するために、ヤマハとの共創が始まりました。

「小さなEVで、農業の未来を変える。」
木村さんとヤマハの挑戦は、環境にも配慮し、経営の合理化を助け、農業の枠を超えて社会を変えようとしています。

Japan Mobility Show 2025 出展モデル

小さなEVで農業の未来を変える

木村さんと共創している、C580の農業仕様モデル(Fork 105)です。

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