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湘南の海で命を守る――水難救助隊とウェーブランナーの最前線

茅ヶ崎消防本部の水難救助隊がウェーブランナー(VX Cruiser HO)を採用。

関東地方屈指のマリンレジャーの中心地である湘南・茅ヶ崎を舞台に、海や川の安全を守る茅ヶ崎市消防本部水難救助隊。その最前線で活躍する隊員たちを支えているのが、ヤマハ発動機製水上バイク「ウェーブランナー」です。

20年以上の水上バイク運用実績を持つ、茅ヶ崎市消防本部水難救助隊

湘南エリアを代表するマリンレジャーの中心地、茅ヶ崎市。その象徴ともいえる「サザンビーチちがさき」では、毎年夏になると多くのマリンレジャー愛好者が訪れ、令和6年には11万7,000人を超える来場者を記録しています。

しかし、海や川のレジャーには予測不能なリスクが伴います。こうした万一の事態に備え、この美しい自然を楽しむすべての方々の安全を守っているのが、茅ヶ崎市消防本部水難救助隊(以下、水難隊)と、2艇のヤマハ発動機製水上バイク「ウェーブランナー VX Cruiser HO」です。水難隊が初めて水上バイクを導入したのは2001年のこと。それ以来、ビーチや河口といった海岸線での高い機動力を生かして、マリンレジャー中の事故対応や人命救助、行方不明者捜索を行ってきました。

そんな同隊が使用するマシンには、水難救助車への搭載性や陸上での取り回し性を考慮したサイズでありつつも、高い凌波性、安定性を両立するハル、そして十分なパワーと、総合的な高性能が求められます。

「これまで使用してきたどの水上バイクに比べても、全方位的に頼もしい」と語る水難救助隊員の皆さまに、「VX Cruiser HO」の実力について伺いました。

茅ヶ崎市消防本部水難救助小隊には現在約30名の精鋭が所属する。隊員になるためには、潜水士と小型船舶等操縦士の免許の他、水難救助に関する専門教育を終了する必要がある。
海岸出張所に配備された「水難救助工作車」。水上バイクを1艇格納する他、ウェットスーツやシュノーケルなど隊員の装備が並ぶ。

水難救助活動を支える、水上バイクの「静と動」

水難隊約30名を代表して取材にご協力いただいた、茅ヶ崎市消防本部水難救助小隊鶴嶺出張所所属、青木海音さん(左)と金子哲也さん(右)。

今回、定期訓練の合間を縫って取材に応じてくださったのは、鶴嶺出張所に所属する水難隊員の金子哲也さんと青木海音(かいと)さん。金子さんは異動を挟みつつ通算約12年、青木さんは入局の翌年から6年にわたって研鑽を積んできた、ともにベテラン隊員です。

これまでに茅ヶ崎水難救助隊に配備されたすべての水上バイクを「相棒」としてきた金子さんは、「救助の現場では、水上バイクには静と動、ふたつの相反する要素が要求される」と語ります。要救助者の元へ素早く駆けつけるためにはスピードや凌波性といったダイナミックな性能が求められますが、いざ現場に到着すると、波や風で揺れる不安定な状況の下、生身の人間に船体を寄せ、安全に引き上げるという繊細な作業が必要になるからです。

水難救助事故発生の一報が入ると、水難隊が配備されている海岸出張所と鶴嶺出張所の両方に出動要請が下されます。基本的に出動は2艇1組。それぞれのライダーと救助要員、計4名が水上バイクに乗り組んで出艇します。

水難救助要請があった場合は、基本的に海岸出張所と鶴嶺出張所の両隊が同時に出動する。万一の事態に備えたバックアップや連携のためだ。

「第一報を受けた瞬間から時間との闘いが始まりますが、新型でまず違いを感じるのは船体の軽さです」と金子さん。「私たちが出艇場所としている茅ヶ崎漁港のスロープに到着してから走り出すまでの時間は、確実に短縮されています」と語ります。

海岸出張所、鶴嶺出張所共に、出艇場所が同じであるため、先に到着した部隊から出艇準備にとりかかる。

また海上には道がないため目的地まで一直線に進めるように思えますが、実際は横波などの影響で蛇行してしまうケースが少なくありません。 「波に対する安定性が高いということは、それだけ真っすぐ進みやすいので、最短距離で要救助者に向かっていけるんです」

「RiDE」システムが実現する、救助作業の安全と効率化

要救助者と接触できたら、これまでのダイナミックなライディングから一転、できるだけ安全に、そして迅速に近づき、水上の担架であるライフスレッドに乗せるという繊細な作業が始まります。「静と動」の「静」が求められる場面。「新型になって一番変わった」と2人は口を揃えます。

水難隊では、茅ヶ崎漁港を拠点に毎月4回程度の操船訓練を行っている。本番さながらの訓練に、ビーチを散策する人も足を止める。

「以前は右手と左手で別々の操作が必要でライダーは操船に集中せざるを得ませんでしたが、新型では左レバーだけでニュートラルと後進を切り替えられるので、微調整が格段に容易になりました(金子さん)」

これはヤマハ発動機独自のコントロールシステム「RiDE」によるものですが、特に『ニュートラル機能』の便利さは、隊員たちにとって大きな発見だったといいます。

「救助内容によって海上保安庁の船に要救助者を引き渡す場合があるのですが、従来は前進と後進をこまめに繰り返しながら、なんとか互いの位置をホールドし続けるという操作を強いられていたんです。しかし新型ではニュートラルを使えばその場にとどまることができるので、要救助者の引き渡しをより安全に、より短時間で行えるようになりました。岸壁への接舷など、活用の幅はもっと広がると思います(青木さん)」

左レバーでニュートラルと後進を切り替えられる「RiDE」。救助現場に不可欠な、繊細なマシンコントロールを支援するシステムだ。

そして要救助者をライフスレッドに乗せたら、再び「動」の局面です。要救護者に向かって一直線に進んできたノーズを転回し、可能な限り迅速に、陸上で待つ救急隊の元に急ぎます。

「高い安定性の強みは、こうしたシーンでも発揮されるんですよ」と青木さん。「マシンに任せられるというか、要救助者を確保した時にマシンが沖を向いていても、深いバンク角で一気にUターンして陸に向かうことができる。一秒を争う場面で、この差は大きいです」。

プロフェッショナルが認める、「VX Cruiser HO」への信頼

これからの救助活動について、青木さんは「茅ヶ崎エリアの水難事故発生ポイントの一つが相模川の河口付近です。堆積した砂が複雑な波を生じさせ、救助が難航することもありますが、このマシンは、一瞬の判断が求められる現場で大きな助けになるはずです」と語ります。

一方、金子さんは長期ユーザーならではの視点で、「整備担当の隊員も驚いていたんですが、このマシンは出動後の整備の際にエンジンルームから出てくるビルジ(侵入水)が驚くほど少ないんです。これまでは滴る海水が水上バイク本体のみでなく、水難救助工作車やトレーラーをさびさせることが大きな悩みになっていましたが、その問題も改善されるのではないでしょうか」と期待を込めます。

水難救助という極限状態でプロフェッショナルからの信頼を勝ち得た「ウェーブランナーVX Cruiser HO」。これからも水難隊の頼れるパートナーとして、茅ヶ崎の海の安全を守り続けていくでしょう。

蛍光イエローがまぶしい手前のマシンが鶴嶺出張所、奥が海岸出張所に配属されているマシン。鶴嶺出張所のイエローは販売店による施工。
装備面では基本的には標準仕様に準じるが、ライフスレッドの取付フックと、スターンの滑り止めが追加されている点が異なる。

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