車輌に最適なパフォーマンス
モーターサイクルの性能維持に必要な消耗部品の定期交換をお勧めいたします。純正部品の交換及び車両の整備はヤマハ販売店にご依頼ください。
エンジンのパワーをリヤホイールまで伝達できなければモーターサイクルは走ることができません。例えばYZF-R1ではドライブチェーンに約1トンの力が掛かるため、エンジン出力に合った耐久性と駆動力伝達性を持った駆動系の開発が不可欠となります。
ドライブチェーンとスプロケットは噛み合うため、サイズ規定があります。このサイズが合っていれば車体に装着することは可能です。しかし、サイズが合っていてもエンジン出力を受け止められる強度を持っていない部品は、消耗が激しいだけでなく駆動力伝達中のロスを生み、モーターサイクルの性能を損ねてしまいます。さらには強度不足によって回転中に破断する危険性もあります。
エンジン特性、車輌特性に合わせたチョイス
車体開発時にモーターサイクルのコンセプトに応じて駆動方式(チェーンドライブ、シャフトドライブ、ベルトドライブ)を決め、車輌特性に合ったパーツ開発とセッティングが行われます。チェーンドライブは各スプロケットの歯数を変えることで加速性能と最高速度のセッティングができます。走行試験を繰り返し、最適なスプロケットサイズが決められ、同時にドライブチェーンの選定も行われます。ドライブチェーンはエンジン出力、車体重量、モデル特性などを考慮し、各車種に最適なドライブチェーンを選択しています。モトクロスのYZシリーズは競技用モデルのため、走行毎のメンテナンスをすることを前提とした上で軽量化と駆動力ロスの軽減のために450ccでもノンシールチェーンを使用しています。
ドライブチェーンに求められる性能
ドライブチェーンは駆動力に耐えられる強度が求められるだけでなく、規格で決められたサイズであること、軽いこと、駆動音が静かであること、伸びにくいことも求められます。「引張り強さ」と「疲れ強さ」から強度を決め、「耐摩耗性能」から伸びにくさが決められます。強度と質量は材質とサイズで異なり、騒音は伸びにくさとドライブチェーンの種類によって差が出ます。
ドライブチェーンは、モーターサイクルの発進時や減速時、クラッチをつないだ瞬間に大きな張力が掛かります。これらの瞬間的な張力によって、ドライブチェーンが変形や破断をせずにどこまで耐えられるかを調べたものです。ノンシールのスタンダードチェーンは、軽量にも関わらず高い引張り強度を確保しています。
アクセル操作の度に駆動力は増減し、ドライブチェーンへの張力も増減します。繰り返される張力の増減は引張り強さの限界値以下でも、金属疲労の蓄積によりドライブチェーンを破断させてしまいます。断続的な張力にどこまで耐えられるか調べたものです。
ドライブチェーンはリンク部分が摩耗して隙間ができてくると、ドライブチェーンの全長が長くなります。ノンシールチェーンは各リンク部の摩耗量がほぼ同じですが、シールチェーンはシールリングの摩耗にバラつきが出てしまうためリンク毎の摩耗量に差が生じてしまいます。ドライブチェーンの伸びは潤滑油切れによる可動部分の摩耗が原因となるため、メンテナンスを行うことでチェーンの伸びを防ぐことができます。
スプロケットの歯数設定と最終減速比
減速比は出力軸1回転させるために入力軸が何回転するのかを表した比率のことです。エンジンが発生した回転力はクランクからミッション間(一次減速)とトランスミッションからスプロケット間(二次減速)で減速を行い、駆動輪を回転させています。減速比は大きくなるほど出力軸の回転数は減るが、出力軸の回転トルクは増大します。
車輌開発では、車輌のキャラクターと乗りやすさのバランスが取れた減速比にセッティングしています。