JWキッズユーザーインタビュー:翔人さんとJW(Vol.2)
ヤマハジョイユニットX PLUS+を装着した電動車椅子を利用されている関 翔人さん。お母さまの由佳さんにお話を伺いました。
本人の意思で
行きたいところに行ける
自分で移動できることで
ガラガラって世界が変わった
関 翔人さん(9歳)
車椅子を押すことは地味に大変だったんだなと改めて実感
脊髄性筋萎縮症の類似疾患で、呼吸筋が弱く人工呼吸器を使用しています。そのため車椅子には、人工呼吸器、吸引機、呼吸器に付属している加湿器、加湿器用のポータブル蓄電池と、20kg近いものをぎゅっと積み込んでいます。JWは外へ出かけるときに使用し、家では座位保持装置に乗り換えています。
未就学の時から電動車椅子に乗せたいという想いがずっとあり、小学校入学に合わせて電動車椅子を使用するために長いこと練習してきました。そして申請が通ったところで、これまでバギーをつくってもらっていた販売店さんに車椅子づくりをお願いしたんですが、「これほどの荷物を載せられる車椅子は、うちではちょっと難しい」と断られてしまったんです。
他の販売店さんにもあたりましたが、重心バランスや配線の関係で、安全性が約束できないと断られてしまって。電動車椅子購入にあたってせっかく制作のゴーサインが出たのに、車椅子をつくれる販売店探しで難航、振り出しに戻った感じでした。そこでリハビリの先生に相談。紹介いただいた販売店さんで、ようやく作成できたんです。
学校の送り迎えをするために、福祉車両を使用しています。電動車椅子の作成にあたっては、家の間口や自動車の荷室幅など、全て測定し、自動車に積載できるギリギリの幅で作ってもらいました。
でも出来上がりの印象は、電動車椅子と聞いてイメージしていたものよりコンパクト。めちゃくちゃでかくて、ゴツイ車椅子がきたらどうしようと思っていたのですが、予想を超えるコンパクトさでした。
車椅子には翔人のための工夫がたくさんあります。学校で勉強するときのために、車椅子にテーブルを付けられるようになっています。また、後ろが見えるようにバックミラーも付けてもらっています。
狭い部屋や曲がりながらドアをくぐる時など、フットレストから背もたれの先端まで意識しなければならないのですが、翔人はそういう感覚の筋が良くて運転がとても上手なんです。
JWにしたことで車椅子を押す機会が減ったんですが、車椅子を押すことは地味に大変なことだったんだなと改めて実感しています。
本人の意思で行きたいところに行けるという点がかなり大きく
自分の意思で動く喜びをものすごく感じているよう
小学校入学のタイミングで電動車椅子を使い始めたかったのですが、実際は夏休み明け、1年生の2学期からJWでの登校が始まりました。学校もとても協力的で、校内で使えるかどうかテストをしてくれました。テストに合格したあとも、電動車椅子の速度を一番遅い設定にし、「廊下が交差するところでは必ず止まってね」とか、「廊下は右側通行だよ」などと先生が指導・練習してくれたんです。
電動車椅子に乗る小学1年生は学校にとっても初めてだったようです。担任の先生が、ピッカピカの初心者マークをつくって車椅子に貼ってくれたのがとても印象に残っています。
バギーから電動車椅子に乗り替えたことによる変化としては、本人の意思で行きたいところに行けるという点がかなり大きいですね。あっち行って、こっち行ってと私が押すのではなく、ここちょっと行ってみたい、こうやって行ってみたいと自分で決めることができます。自分の体が自由に動かない分、自分の手や足代わりとなって自由に動ける喜びをものすごく感じているようです。
自分で移動できることでガラガラって世界が変わった
悩んでいるんだったら電動車椅子は絶対オススメ
翔人は、首がすわっていません。この子が電動車椅子に乗れるのか、役所からOKが出るのか、ということが最初は不安でした。でもこのJWを手がけてくれた販売店さんが、今までのバギーと同じような体勢の電動車椅子ができますよと言ってくれて、それならうちの子でも乗れる、と安堵した記憶があります。
私たちの場合は、電動車椅子の導入を目指して、セラピストの皆さんが、「チーム翔人」を組んでくれたことが大きかったですね。
「無理でしょう」とか、「ちょっと早いんじゃない?」と反対する人が誰一人としておらず、「翔人さんなら操作できるよ、大丈夫」と励ましてくれました。周りのポジティブな協力体制が電動車椅子の導入を後押ししてくれました。
どうしようかと思い悩んでいるのであれば、電動車椅子にチャレンジしてみては、と伝えたいですね。電動車椅子に乗れるということは、ある程度自分の意思を伝えられる子だと思います。押してもらっている時もあっち行って、こっち行ってと指示できると思いますが、指示して押されて行くのではなくて、自分の意思であっちに行ってみよう、こっちに行ってみようと移動できることが、その子の成長にとってどれほどすごいことか。ガラガラって世界が変わるくらいの変化があると思うので、悩んでいるんだったら絶対オススメです。できるだけ早い時期に電動車椅子にしてあげたらいいのかなと思いますね。
- プロフィール
- 関 翔人(せき しょうと)さん
小学3年生(9歳) ※2021年取材当時
脊髄性筋萎縮症の類似疾患。呼吸器機能が弱く人工呼吸器を使用。小学校入学のタイミングでの電動車椅子利用開始を目指し、早い時期から走行練習を開始。
仲良しの先生とは、校内ですれ違うたびにコミュニケーションを図ったり、時々変顔を披露したりと、ひょうきんな面があるそう。「家でもよくふざけるし、とても面白い子なんです」とお母さん。一方、学校からの連絡はきちんと伝えるしっかりもの。
Professional eye's
「チーム翔人」
作業療法士:日高先生 言語聴覚士:山下先生 理学療法士:小島先生
関 翔人さんの電動車椅子走行訓練をサポートしていた宮崎県立こども療育センター・言語聴覚士の山下先生と作業療法士の日高先生に伺いました。
電動車椅子の導入には移動することへのモチベーションが不可欠
リハビリの40分間、どうやって翔人さんのモチベーション保ち続けて操作練習につなげるかという点においても言語聴覚士の力を借りました。
電動車椅子の魅力は、自分で好きなところに行けることです。これを活用するためには移動することへのモチベーション、言い換えれば、「あそこに行きたい」という欲求を、本人の中に芽生えさせる必要があります。翔人さんの場合は「このカードが○○○にあるよ、それを探しにいこう」と宝物探しのような設定で練習に励みました。
電動車椅子を使う上で、交通ルールを理解し、暴走しないなどの聞き分けが良いことは大前提ですが、そこからさらに、「どこかに行きたい」という外に向かっていく気持ちが大切です。それがなければ練習が続かないし、電動車椅子に乗り続けていけませんからね。
セラピストとして認知レベルの判断は慎重におこなっています
言語聴覚士の立場から考えると、電動車椅子の導入は認知発達のレベルがクリアできていれば、あとは操作練習を積むことで実現できると思います。ただ、その認知レベルの判断が迷うところです。
電動車椅子を正しく操作し、状況に応じてきちんと止まれるかどうか、安全面での判断が的確に行えることがとても重要です。安全面の判断が難しい場合は電動車椅子の操作練習を安易に導入しない方がいいケースもあります。認知発達状況を見極める立場として、そこは慎重に判断するようにしています。