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ヤマハ発動機株式会社 Revs Your Heart

クリーンウォーターシステム(CW)

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社員の声

現場の様子や経験談

社員の声イメージ

安全な水を世界中の人々に届けたい

海外市場開拓事業部 企画推進部
クリーンウォーターグループ
グループリーダー 金丸 正史

私は、事に仕えるのではなく、事に志す、いわゆる志事を通して社会に貢献する、途上国のフィールドでお客様の生活を豊かにしたい、そういう気持ちを強く抱き、このプロジェクトに飛び込みました。水や電気のインフラが届いていない地域に安全な水を届ける、まさに感動創造企業を自ら体現できる志事です。
初めてアフリカに導入したのが2011年、西アフリカのセネガル共和国。以降、途上国の農村部を中心に導入を進めています。そこが私たちの現場です。そこでの経験は、今でも成長の糧になっています。現地の公用語やローカル言語がわからず意思疎通が難しかったこと、暑い日には摂氏45度を超える灼熱の中、現地の人々と共に汗を流しながら設置工事を行ったこと、太陽光パネルや部品が盗難被害に遭い、気持ちが折れそうになったこと、その他多くの出来事を経験しました。それでも、初めてきれいな水が出た時の住民が抱き合って喜び合う現場に立ち会う瞬間は、何ものにも代え難い経験です。

現在でも、現場での経験を生かして、装置や施工方法の改良に取り組んでいます。楽しいことばかりではありませんが、先輩からの言葉「どんな状況でも諦めるな、最後までやり切れ」をいつも胸に刻んでいます。私は、全ての経験、人との繋がり、先輩からの言葉で培ったDNAを次の世代に引き継いでいくため、これからも最前線に立ち続けます。

私自身を成長させてくれた思い出に残る業務

2012年~2013年、モーリタニアへのヤマハクリーンウォーターシステム(以下YCW)導入

2012年から2013年にかけて、西アフリカのモーリタニアにYCWを設置した業務は、私自身を一回り大きく成長させてくれました。今その当時を振り返っても、やり切ったあの時の経験が今の自分の礎になっていると感じます。
その前年、2011年にアフリカにおけるYCW1号機をセネガル共和国北部のサンルイ市郊外の集落へ導入しました。とても苦い経験でした。初めて経験する日本との9時間の時差に苦しみ、また言葉の壁が想像以上に高く、暑さと疲れも重なり、体調を崩してしまいました。それまで、東南アジアでの業務経験を通じて芽生えた自信が折れました。さらに、導入過程で致命的なミスを犯してしまい、しばらく装置を停止せざるを得ない事態となり、現地の方たちに迷惑をかけてしまっただけではなく、上司に烈火のごとく叱責されました。

その翌年、モーリタニアでのYCW導入業務のミッションを与えられました。上司が私に挽回のチャンスを与えてくれたと意気に感じました。その期待に応えるため、二度と同じ失敗を繰り返さないよう、入念に準備を進めました。モーリタニアの国土は日本の約2.7倍。大半が砂漠地帯で、首都ヌアクショットは砂漠の中にある大都市といった様相です。人種はアラブ系アフリカ人が多く、セネガル川を挟んで南側のセネガルとは雰囲気が随分と異なります。

広大な面積を持つモーリタニアですが、当時の総人口は約300万人で、その約1/3が首都に住んでいました。首都から一歩出ると延々と砂漠地帯が広がり、居住区を見かけることは難しい、そんな印象を持ちました。延々と続く国道を走る道中、突如として現れた建物は小学校でした。子供達が勉強していましたが、近くに民家はありません。学校まで歩いてきたんだと思うと、いかに厳しい生活をしているのかを知ることができました。

首都から南に約300km、セネガルとの国境近くに湿地帯が広がっています。ジャウリン国立公園。この国立公園を管理するモーリタニア政府の職員と近隣村民の居住区にYCWと太陽光発電装置を設置することが、今回のミッション。このエリアは無電化地区で、かつ水道設備が整備されていませんでした。住民はセネガル川の水を飲用するか、車で30分ほど行ったセネガルとの国境近くの街まで水を汲みに行くという厳しい環境です。モーリタニア政府が、日本国政府のODA予算(草の根無償援助資金)を活用して、当社の機材を導入します。当社が責任を持って機材一式を導入し、同国の飲料水質基準を満たした浄水を供給する。大きな不安を抱え、プロジェクトがスタートしました。

仕事以前に滞在すること自体が試練。村人と同じ環境に身を置くことで見えてくる世界がある

私たちの現場は、安全な水にアクセスすることが困難なエリアであり、そもそも水道インフラが整備されていません。しかも、その大半は電気が通っていない無電化村。ジャウリン国立公園内にホテルはなく、私はゲストが寝泊まりする建物に滞在しました。
当然、きれいな水はないので川の水で体を洗う。トイレもない。小さなソーラーパネルがあるため、携帯電話やカメラの充電はできました。しかし蛍光灯はなく、日没とともに室内は暗闇に包まれます。部屋にいる時は常に蚊帳の中にいました。マラリアに罹ることが最大のリスク。蚊の羽音に恐怖を感じながら夜を過ごしました。

夕食は、職員が暗闇の中、懐中電灯を使って私を呼びに来てくれて、食堂へ連れて行ってくれます。食堂といっても、御座が敷いてあるだけの大広間。蛍光灯が薄暗く室内を照らしていました。大皿に乗せられたご飯やお肉を、数人で片膝を立てて囲み、一斉に食べます。全員揃わないと食べ始めない。それがルールでした。私が着座するのを待って、食べ始めることも時々ありました。この時、私は政府職員が、私を一人の日本人としてだけではなく、家族と同じように接してくれていると感じました。私はスプーンを与えられましたが、職員は右手で食べます。私が遠慮していると、もっと食べろと手で引きちぎった肉をくれました。食事はとてもおいしい。その料理を作るための水は何を使っているのか、細かいことは気にしないことにしました。気にしだすと、このような環境で仕事はできません。

施工作業は思いもよらない事態の連続。なぜかそれでも楽しかった

上司から基礎工事の開始から完了まで見届けるよう指示を受けていました。基礎工事の業者が図面通りに施工できているのか、彼らと要所で寸法を一つ一つ確認する日々を送りました。基礎の完成を見届けて一時帰国。そしてYCW機材を乗せたコンテナ船のモーリタニア到着予定日を確認して、再びモーリタニアへ出発。いよいよ浄水器本体の施工作業に取り掛かります。作業は私一人ではできません。施工作業には現地村民、政府職員だけでなく、2011年にセネガルの集落に浄水器を導入した際にサポートしてくれたセネガル人3名を臨時で雇いました。英語が全く通じない環境では、フランス語やアラビア語、身振り手振りを駆使して私の考えを伝えるしか術はありません。ですが、これが意外と楽しい。

施工自体は入念に準備を進めていたおかげで順調に進みました。ここで想定外の事態が発生。太陽光発電装置を乗せたコンテナ船が、モーリタニアの港に立ち寄らず、セネガルへの寄港を優先してしまいました。これで、当初の予定より2週間遅れです。そのため、私の出張期間も延長を余儀なくされました。太陽光発電装置含め全ての組み立てが完了したころには、滞在が1カ月を超えたため、一時帰国しました。

施工開始から2カ月が経過。2012年の年の瀬が迫る中、12月に再びモーリタニアへ渡りました。ジャウリン国立公園へ行く前に、首都で在モーリタニア日本大使館へ挨拶に行きました。大使との面会の席で、セネガル川周辺で大規模な火災が発生していることを伝えられました。大きな不安を抱えながら、一路ジャウリン国立公園へ。現場の様子はこれまでと一変していました。セネガル川での違法漁業による失火で、セネガル川に群生する葦の湿地帯を広範囲に焼いてしまっていました。焼け野原という表現しかない光景。その影響で川の水は炭色に変色。幸いにも取水配管やポンプは燃えず、民家にも影響はありませんでした。がくぜんとする私に対して政府職員は、お前の責任じゃない、時間がたてばなんとかなると励ましてくれました。確かにどうしようもありません……。

少しずつでも川の水質がよくなることを祈りながら、残りの組み立てと通水作業を終えました。数カ月後、川の水質も回復。YCWから出る浄水は、公的機関による飲料水許可を得ることができました。これで私のミッションが完了しました。

引き渡し式典への出席 2013年8月

本当であれば、私のミッションはこれで終わり。日本政府を代表して在モーリタニア日本大使が参加する、機材の引き渡し式典には、当社から執行役員や事業部長が出席するのが通例でした。今回、一人でやり切ったことを会社から評価され、私が当社を代表して出席することが許可されました。在モーリタニア日本大使、モーリタニア環境省次官、地元市長など要人が出席し、盛大に式典が行われました。私は要人たちに浄水装置の仕組みを詳しく説明しました。

式典の前から、既に公園の管理職員や地域住民がYCWから得られる浄水を使用していました。これまでは川の水を飲み、食事にも使っていたことを考えると、とても大きな変化だったと思います。子どもたちが笑顔で水を飲む姿を見て、大変なことの方が多かったけれど、自分の仕事が子どもたちの笑顔に繋がることに、私自身が喜びを感じた瞬間でした。大変なことばかりでしたが、振り返ると楽しかったと思えるあの経験が、自分自身を一回り大きく成長させてくれたと思います。

仕事への情熱を燃やし続けるには現場での経験があってこそ

安全な水を世界中に届けたい、その一心で業務に取り組んでいます。モーリタニアでの業務を通じて、想定外のさまざまなことが起きる現場において、解決する力、やり切る精神力を鍛えることができました。さらには、事前の備えや準備がいかに大切かをあらためて知ることができました。上司は、このモーリタニアでの業務を通じて私に多くのことを感じ、学んでほしかったのだと思います。失敗も成功も自分で経験しないといけない。自分で経験するからこそ、同じ失敗をしてはいけないと心に誓うし、次は絶対に成功させてやる、というモチベーションを生み出します。仕事への情熱も同じで、現場を知る、経験することで、情熱を燃やし続けられる。
SDGsの目標No.6では、2030年までに全ての人が安全な水にアクセスできることをゴールに掲げています。一人でも多くの人々に安全な水を提供することを通じて、あらたな感動と豊かな生活を提供していくために、これからも最前線に立ち続けます。

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