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テクニシャンエピソード 01

整備技術は高くて当然。優れたメカニックは、お客様ひとりひとりの期待を察知する。

JPN

Episode 01
鮫島 遼平

WTGP2016 スポーツモデルクラス 優勝

PROFILE

  • 出身: Kanagawa, Japan
  • 所属: YSP Kawasaki Chuo

YSP川崎中央に勤務する、新進気鋭の若手メカニック。有言実行の自信に満ちた言動が頼もしいが、実は人一倍の努力家でもある。2016年度WTGPでは「どうせ本番では80%しか実力が出せないんだから、120%の力を付けて」臨み、見事33,000人の頂点に立った。

メカニックを目指したきっかけ

実は高校生になるまで、バイクに興味をもったことはなかったんです。きっかけはふたつあって、ひとつは友人が当時の中型二輪免許を取得したこと。僕は通学用に50ccの原付に乗っていたので、単純にいいなあと思っていました。そしてもうひとつが面白いんですが、通学中に買った缶コーヒーのおまけだったんです。確かヤマハの古いバイクシリーズで、僕が引き当てたのは80年代の名車、RZ。こんなにカッコいいバイクがあったのかって、一目ぼれでした。友達の影響で何となくバイクに乗りたいと思っていたのが、一気に「RZに乗りたい」に変わったんです。ただ、RZは当時ですら車齢20年前後の、いわゆる旧車。周囲の勧めもあって、結局後継車の「R1-Z」を選びました。

それからは、朝から晩まで走り回って、バイクのことばかり考えていました。ただ、その頃はあくまでもライダーとして夢中になっていただけで、メカニックになるなんて考えてもいませんでした。このR1-Zを買ったお店との付き合いが、僕がいつしかメカニックの道を歩み始めるきっかけになったんです。
このお店はちょっと変わっていて、扱うバイクは中型以上のみ、夕方にオープンすると夜中営業し、明け方には閉店してしまうんです。いつも常連ばかりがたむろしているようなお店で、僕もその一人でした。やがて店の隅で工具を借りて整備するようになり、お客様のバイクでもちょっとした修理なら手伝うようになり、いつしかお店の鍵を渡されていました(笑)。RZのスタイルに一目ぼれして誕生したバイク好きが、気が付いたらメカニックになっていた。それが、偽りない僕の経歴なんです。

得意な整備

バイク好きが高じてメカニックになった僕ですから、バイクに触れているときは楽しいですね。よく得意な整備や好きな整備を聞かれますが、敢えて自分の中にそういうものを作らないようにしているんです。というのも、以前先輩メカニックに言われた「どんな整備にも苦手意識を持つな」という言葉がずっと心に残っているからです。メカニックにはどんな仕事が来るかわかりません。中にはオイルでベタベタになったり、非常に難しい作業もあります。でも、ちょっとでも「嫌だな」って思ってしまうと、それが苦手意識になり、苦手な整備になってしまう。お客様の大切なバイクに触れる以上、どんな整備でも高いモチベーションを持って取り掛かかれることは大切なんです。

この仕事をしていて良かったと思う瞬間

そういえば、かつてこんなことがありました。インターネットオークションで安くバイクを買ったという方が来店されたのですが、何でも購入した翌日にバッテリー上がりで走れなくなったというんです。購入先は売った後は知らんぷりという態度で、困り果てて当店を訪れたということでした。充電系統に不具合があったのですが、古いモデルのため部品の在庫はありません。それでもなんとか直して欲しいと仰るので、中古品を流用したり配線等の修正をするなど、考えられるだけの工夫をして直したところ、大変喜んで下さいました。結局お客様がバイクを買った値段の半額くらいかかってしまったのに「こんな親切に対応してくれるなら次はちゃんとしたお店で買うよ」と。自分の対応にお客様が喜んで下さったとても嬉しい瞬間でした。
私たちの仕事には、単に作業をするだけでなく、安心安全を提供してその対価をいただくという側面もあります。同じオイルを入れてどうしてこの店は高いんだ、といわれることもありますが、オイル交換ひとつとってもリフトアップして、周辺部品もチェックしながら確実な整備を行い、作業後はオイルの状態に応じてお客様に的確なアドバイスを行う。これが僕たちYSPのサービス方針です。
目先の安さに引かれてしまう人は多いですが、そういうお客様でも本物のサービスを体験していただけば、きっとその価値に気付いてくれるはず。先のオークションのお客様のように、自分の仕事でそのことに気付いてもらえるのは、メカニックとして嬉しいですね。

仕事上で大切にしていること

メカニックとお客様の関係というのは面白いもので、お客様ごとにメカニックの担当を決めていない当店なのに、入社して1年も経たないのに指名を受けるメカニックがいます。そういうメカニックは何が違うのかというと、お客様と共通の趣味や価値観を持っているんですね。古いバイクが好きだとか、同じ峠を走っていたとか。僕自身で言えば、かつて僕も乗っていたTZRのお客様がはるか遠方から来店してくれています。メカニックにとって整備技術はもちろん大切なのだけれど、一番大事なのはお客様の気持ちがわかることなんじゃないでしょうか。
整備の説明をするときも同様で、買い物用の原付に乗るお客様とスポーツモデルに乗るお客様では、機械への理解度も違うし、バイクにかける情熱も違う。バイクに詳しくない人に、バッテリーの起電力が11.5Vまで落ちていますので交換したほうがいいですよと伝えることは、必ずしも正しいとは言えません。「冬になるとバッテリーが上がってしまうかもしれないので、今のうちに交換しておきませんか」。それだけで充分なことも多いんです。
だから、僕はお客様を置いてきぼりにしないギリギリの詳しい説明で、さすがプロと思っていただける合格ラインのちょっと上を狙って説明をするようにしています。ただ、その合格ラインがお客様によって大きく違うので、結構難しいんですけれども。

Message

先日、MotoGPのピットワークを間近で見学する機会があったのですが、当店のスタッフでも整備技術だったら負けないという確信を持ちました。じゃあ何で日本人のメカニックはいないんだと聞いたら、日本人メカニックは英語が苦手なのでライダーとのコミュニケーションに問題があるのだとか……。
そしてライダーとメカニックのコミュニケーションが大切なのは、レースだけじゃありません。お客様の期待を全力で受け止めるメカニックがYAMAHAディーラーにはいますので、YAMAHAにお越しの際には、ぜひメカニックたちに気軽に声を掛けてください。バイクがもたらしてくれる感動を、私たちが全力でサポートします!

Ryohei Samejima

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