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部品復刻奮闘記

絶版部品の復刻と、復刻を可能にした社員たちの激闘のウラばなし

第1章

手探りの3Dモデル化篇

手順1. 図面と実物と比較する

次にRZ250のサイドカバー、テールカバーの図面を探しました。
当然3Dデータなどあるわけもなく、紙の図面のスキャンのみでしたが、ちゃんと図面が手に入りました。図面と実物を比較して見てみますが、正直形状に関してはこれではざっくりとしか分かりませんので確認するのは仕様についてなど。カラーや材質の指示など得られる情報は色々とありました。

手順2. 3Dデータ化する

今回は初めてのリバースエンジニアリングということで全くの手探り状態でした。
3D化の方法もいくつか検討して、最終的に使い勝手が良かったのが産業用CTによる3Dスキャンです。カメラを使ったスキャンとは異なり、X線断面画像を用いて裏面や内部形状まで再現した3Dモデルを作成可能な優れもの。出力されたデータはそのまま製品化に使えるわけではないですが、モデリングの参考材料としてとても有用に機能しました。

そしてさらに、プロダクトデザイン部の協力により外装の曲面形状に関しては3Dデータを作ってもらうことに。普段は製品のクレイからデータ化を行っている部門で、デザイン的観点からの3D化を実施いただきました。
得られた全体の3Dスキャンデータ、表面の曲線データ、そして目の前にある現物の外装品、これらをもとに本格的にモデリングがスタートしていきます。

手順3. 3Dスキャンデータをもとに、モデリングする

今回の外装復刻プロジェクトでは、3Dスキャンしたデータと自ら作成したデータを組み合わせながらモデリングするという、これまでに経験のない業務に取り組むこととなり、多くの試行錯誤を伴う作業となりました。また、約45年前の紙図面とスキャンデータのいずれを基準とすべきか判断が難しく、その都度、関係者の皆さんと相談しながら作業を進める必要がありました。

正直、現物と図面があれば簡単に復刻できると思っていましたが、全然そんなことはなかったです。当時の図面は今のものと書き方が違っていて、試しに図面通りに締結座面を作ってみたら、強度が確保できないくらい薄肉になってしまったところもありました。
CTスキャンと後述の3Dプリンタ試作がなかったら、もっと苦労していたと思います。

手順4. 3Dプリントして実物と比較、実機に組付けて検証

今回は通常の開発とは異なるプロセスのため、モデリングと金型製作の間に3Dプリンタによる検証を挟みました。金型を作ってから問題が起こると、修正にお金も時間もかかってしまいますからね。

正直うまくはまらなかったらどうしようかとドキドキしていましたが、問題なく組付けができました。安心したのも束の間、メンバーの「ちょっと当時モノとプロフィールラインが違うように思うのですが…」という一言で場の空気が一変しました。
当時モノはシャープさが感じられる一方、3Dプリント品はややプロフィールが丸いような印象でした。

テールカバーの前端部と後端部、シャープエッジの箇所は、最初は角が鋭角にならないように作っていました。でも3Dプリンタで試作して現物と比べたら、全然違いました。現物は角がシャープで、車両に組み付けたときの見栄えが圧倒的にかっこいい。
現在の新製品では安全性等の観点から鋭角形状ができないようにしていますが、今回は「復刻」ということで、当時の形状をあえて忠実に再現することにしました。
全体を通して、最終的には図面に書かれていることよりも、実車との組付け性や製品としての強度、現物との見た目の一致感を重視して、締結位置や座面の大きさを調整していきました。

サイドカバーについても同様に、Rライン曲面のエッジ部が現物ではつぶれのないシャープな形状である一方、3Dプリンタ品ではエッジが甘く、線がぼやけて見えていたため、その数ミリの違いをモデリングで修正しました。また、プリンタ品と現物を比較する中で、リブの高さが数ミリ異なっていることに気づき、その差が生じた要因や修正方針についてチーム全体で議論を重ね、差異を含めて正確にトレースしました。
このように見落とされがちな細部にまでこだわることで、単なる形状の再現にとどまらず、当時の製品が持つ質感や雰囲気まで含めて再現することができ、より精度の高い復刻につながったと感じています。

Rの潰れ違い(左:現物部品、右:3Dデータによる試作品)

Rの潰れ違い(上:現物部品、下:3Dデータによる試作品)

普段は設計者からの指示を受けて動く立場ですが、今回は設計者がいなかったので、皆が設計者のような目線で意見を出し合って、形状を検討していきました。初めて関わる部署が多かったですが、部署間の壁を感じないフラットな距離感で会話ができて楽しかったですね。今回得られた知見から、次にまた復刻するときはもっとスムーズに進められると思います。

手順5. 再度、3Dプリントして出来栄えを確認

修正したデータを再度3Dプリントして、車両への組付けをしました。多様な角度からなめるように車両と部品との確認を行った結果、無事に目指していたラインが得られ、ようやく一安心することができました。
車両を確認していく中で、車両側の状態(シートの浮きや、車両フレームの歪み)も個体差があることが判明し、今市場に出ている車両がどのような状態なのか、どういった部品が求められているのかを知りたい気持ちが強くなりました。

この記事のまとめ

  • RZ250外装復刻プロジェクトでは、まずサイドカバーとテールカバーの紙図面を入手し、現物部品と比較して仕様や材質、カラーなどの情報を確認した。
  • 当時は3Dデータが存在しないため、産業用CTスキャンによる3Dスキャンを実施し、内部構造や裏面形状まで含めた3Dデータを取得した。
  • プロダクトデザイン部の協力により、外装の曲面形状についてもデザイン視点の3Dデータ化を行い、スキャンデータと組み合わせてモデリングを開始した。
  • 約45年前の紙図面とスキャンデータのどちらを基準にするか検討しながら、強度や組付け性を考慮して3Dモデリングを進めた。
  • モデリング後は3Dプリンタで試作品を作成し、実車への組付けや現物部品との比較検証を行い、形状やラインの違いを細かく確認した。
  • テールカバーやサイドカバーでは、エッジのシャープさやリブ高さなど数ミリ単位の違いを修正し、当時の質感やデザインを忠実に再現した。
  • 修正後のデータを再度3Dプリントして実車に組付け、最終的に理想のラインを再現するとともに、車両個体差(フレームの歪みやシートの浮き)も確認した。
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