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部品復刻奮闘記

絶版部品の復刻と、復刻を可能にした社員たちの激闘のウラばなし

第2章

金型検討 完成篇

手順1. 3Dモデルを元に金型検討

意匠の修正が終わった3Dモデルを元に型検討を進めるうち、今度は金型成立性の確保のために形状を修正したいところが出てくるのですが、「『当時の製品を再現する』というコンセプトと相反する、金型成立性の確保」。このせめぎ合いが復刻特有の事象であり、苦労したポイントでした。
どちらを取るか。あるいは落としどころを作るのか。会話を何度も重ねながら3Dモデルを仕上げていく中で、当時の製品を再現する上で妥協できなかった部分の一つが、今では採用できないギボシ形状です。
当時のフレームへの組付性を考えるとどうしてもこの形状が必要だったので、どのように金型を成立させるかを皆で議論しながら進めました。型データが完成したときは心からほっとしましたし、成形する日が待ち遠しかったです。
終わってみればイレギュラーなことが多く、大変な製作ではありましたが、復刻という貴重で新鮮な仕事に関われたことは嬉しい体験でした。

手順2. 金型製作

今回、復刻プロジェクトにおける金型技術部全体のコンセプトは「普段の業務とは異なる工程を担当する事で、前後工程の人と繋がる」という事を意識して製作を進めました。
通常の作業担当者は指導員にまわり、通常業務と異なる作業者が作業を行うということなのですが、メンバーからは「他の人は普段どのような業務を行っているのだろう?」という不安や「この作業やってみたかったんだよね!」などの声があった一方で、指導員の側からも「人に教えるのは難しい」、「かっこ悪い部分は見せられない!」など本当に様々な声がありました。
「設計は自動で何とかなる部分が多いんじゃない?」→「人が介在する部分が多くて、製品の配置が難しい!」
「加工は機械が勝手に加工してくれるのでしょう?」→「寸法の調整が大変だ!」
「型の磨きなんてゴシゴシ削ればいいのでしょう?」→「形状を崩さずに磨き、部品を合わせていくのは職人芸すぎる」
などなど、実際に経験することで得られるものは多かったと思います。

手順3. 初回トライ実施、出来栄え組付け確認

組みあがった金型で、製品が成型できるのかテストを実施します。
無事に成形が完了し出来上がったばかりの製品を実際の車両に組付けて、着脱時のフィット感や形状を確認したのですが、コミュニケーションプラザの車両をお借りしての組付けテストは車両の価値も相まってか緊張で手が震えました。
懸念していたフィット感が1発でOKになったのはよかったですが課題もありました。
ですが実際の車両と製品が組み合わさることで1つの大きな通過点をクリアしたという安心感がありました。

金型設計の基準書やモノの設計基準って、過去の様々な経験やトラブルを経てスムーズにモノづくりを進めるための秘伝のタレなんですよね。今回復刻した部品は、その秘伝のタレ作りの途中の年代のものなので現代では採用されない形状がありました。形が変わると作り方が変わるので難しかったと思うのですが、大きな問題もなく一発でトライ品の成形を成功させたのは金型技術部さんの腕の見せ所だったかなと思います。

手順4. シボの織り込み

サイドカバーの当時の製作図面には、シボ加工品番が記載してありました。ちなみに図面が書かれたのは昭和54年と記載がありました(私の生まれる前に書かれた図面!)。
図面に記載されたシボ加工品番が現存しているものなのかシボ加工メーカーさんにお伺いしましたところ、今も対応可能との回答をいただけました。
その後、シボ加工メーカーさんと打ち合わせをする中で現存している成形品を確認したところ、シボが想定している深さと比べだいぶ薄いことがわかりました。シボ品番から想定される深さは15ミクロンだったのに対して、現存する成形品は7~8ミクロンほどしかシボの深さがなかったのです。
これは想像の域を出ないのですが、型製作当初は15ミクロン程度で製作されたシボが、長年製造される中ですり減っていった結果、製造当初と製造後期で質感が変わっていったということなのではないかと推測しています。シボが擦り減るほどに長く、多く生産された車両なのだな、と感慨深いものがありました。
復刻にあたりユーザーの皆さんに喜ばれるのは製造当初品なのか、製造後期品なのか、どちらを金型として狙えばよいのか、という問題もありました。皆で議論をし、製造当初品のヤマハのデザインが想定していた深さのシボを狙って製作を進めることとしました。

シボなし

シボ加工後

手順5. 金型修正

金型の修正加工は、既に完成している部分への追加の加工になるので、削りすぎてしまっていないか?取り扱いの際に製品面に傷をつけてしまっていないか?と特にひやひやした部分でした。特に今回は通常では使用しないフォントの文字を使用した部分だったので、文字の深さや太さが正しいか、最後まで不安な部分でした。

手順6. 修正後の再トライ

修正した項目は改善されているか?シボの出来栄えやオリジナルとの差はどうか?修正後のトライには初回の時とはまた違った緊張感がありました。
多くの人が見守る中で無事にトライが完了し出来栄えは狙い通りになりました。サイドカバーを車両へ組付けて、やっと一安心できました。当日立ち会った多くの人の笑顔は忘れられないです。

手順7. 復刻品 プロトタイプの完成

多くの方々の協力をいただくことで、無事復刻部品を作り上げることが出来ました。後に控える塗装工程を経てどのように見栄えが変わるのか非常に楽しみです。

この記事のまとめ

  • RZ250外装復刻では、当時の形状再現と現代の金型成立性の両立が大きな課題となった。
  • フレームへの組付性を保つため、現代では使われないギボシ形状も再現する方針とした。
  • 金型製作では部署を越えて工程を体験する体制を取り、設計・加工・磨きなどの理解を深めた。
  • 完成した金型で初回トライを行い、実車に組付けてフィット感や形状を確認した。
  • サイドカバーの表面加工では、昭和54年の図面に記載されたシボ加工の再現を検討した。
  • 現存部品よりも深い、製造初期に近いシボ深さ(約15ミクロン)を再現する方針を採用した。
  • 金型修正と再トライを経て、RZ250外装復刻のプロトタイプが完成した。
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