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YAMALUBEのヒストリーとブランド

Liquid Engine Componentコンセプトに込められた思い

オートルーブから、液体パーツへ オートルーブから、液体パーツへ

カスタマーエクスペリエンス事業部
マーケティング推進部

S.M.さん

YAMALUBEオイル担当

バイク歴は約30年、仕事の守備範囲は主にマーケティングまたは企画系、ヤマハ発動機に入社して29年目になりますが、そのうち14年間は海外駐在で、タイ・オランダ・アメリカのグループ会社に出向していました。現在は本社で純正オイルブランドであるYAMALUBEの戦略立案を担当しています。愛車は2025年式TENERE700です。

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「潤滑」という性能設計

すべては、エンジンを守るという発想から始まっている。
1964年、ヤマハ発動機は世界に先駆けて「オートルーブシステム」を実用化した。2ストロークモーターサイクルエンジンの混合給油が当たり前だった時代に、エンジンと潤滑を一体で設計するこの仕組みは、単なる利便性の向上にとどまらない意味を持っていた。エンジン性能を最大限に引き出し、信頼性を高めるために、潤滑そのものを設計領域の中に取り込むという思想である。

オートルーブシステムを初採用した1964年式「YA-6」

潤滑は補助ではない。性能の一部である。

この考え方はその後のヤマハ発動機のものづくりの中に自然に根付き、やがて一つのブランドへと結実する。1967年、米国で誕生したYAMALUBEである。ヤマハ発動機モーターサイクルの性能を最大限に引き出すために最適化された純正オイルとして生まれたこのブランドは、モーターサイクルだけでなく、船外機、ATV、スノーモービル、その他多くのプロダクトレンジへと範囲を広げながら発展してきた。

現在ではYAMALUBEは日本を含む世界各地で展開される全世界統一ブランドとなっている。地域ごとに市場環境やレギュレーションは異なるが、その中心にある思想は変わらない。ヤマハ発動機が設計し、評価し、性能に責任を持つ潤滑油であるということだ。

グローバルブランドとなったYAMALUBE

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49年目振り返り

しかし長い歴史の中で、ある課題も見えてきた。YAMALUBEというブランドの価値が、本当に正しく伝わっているのか?という疑問である。

2016年、マーケティング担当のMは約20年ぶりにアフターセールス事業へ戻ってきた。そのとき最初に目にしたのが、YAMALUBEの現状だった。特に競合ひしめく欧州市場ではブランド認知度の低さが目立つ市場調査の結果を見た。MotoGPをはじめモータースポーツのイメージを活用したコミュニケーションは既に行われていたものの、ロゴマークの露出だけでは商品そのものの価値が十分に伝わっているとは言い難かった。

Mには、「お客様にはヤマハ発動機製品のパフォーマンスを100%発揮し、安心して楽しんで欲しい」という強い想いがあった。そのためにはYAMALUBEをひとりでも多くのヤマハ製品ユーザーに使ってもらいたい。

Mはふとこう言った。「品質がいい、という言葉では弱いんだよな」。

もちろん品質は大切だ。しかし冷静に考えてみれば、「品質がいい」というメッセージはどの有名オイルメーカーも掲げている。そうなると、「なんとなく良さそう」という印象は残るが、ヤマハ発動機の純正オイルである必然性までは伝わらない。

そこからYAMALUBEの価値を見つめ直す作業が始まった。タグラインを作ることが目的ではなく、YAMALUBEというブランドが本来持っている価値を、社内、代理店、ディーラー、そしてお客様へ正しく伝えたい。そのためのコミュニケーションをゼロベースで考え直すことにしたのである。

このプロジェクトにはヤマハ発動機の社員であるMのほかに外部の視点も取り入れられた。ヤマハ発動機モーターサイクルの宣伝に長く携わってきたコピーライターの栃澤氏、セローのカタログを初代から手掛けてきたデザイナーの大平氏、さらに映像制作を担う制作会社のI氏である。ヤマハ発動機の世界観を誰よりも理解するメンバーが4人集まり、まずは徹底的な取材からスタートした。

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答えは、49年間開発思想

色々と調べていく中で見えてきたのは、ヤマハ発動機におけるエンジンオイルの扱いだった。ヤマハ発動機にはオイル専門の部署があるわけではない。しかし開発、設計、実験、品質保証といった本体製品の専門家たちが、オイルをあたかもエンジン部品の一部のように評価し、その性能にお墨付きを与えている。つまりヤマハ発動機にとってオイルは単なる潤滑油ではなく、エンジン性能を構成する重要な要素として扱われていたのである。

さらに取材を進めていくと、社内にはオイルのレジェンドと呼ばれる技術者たちがいることも分かってきた。2ストロークのY氏、4ストロークのM氏、マリンのN氏、スノーモービルのK氏。話を聞いていると、エンジンの話から戦闘機の話まで飛んでいく。しかしその中で一つだけ、はっきりしていることがあった。

ヤマハ発動機はオイルを単なる消耗品として扱っていない、ということである。

新しいエンジンを開発するとき、オイルも同時に評価される。時にはオイルを前提としてエンジンが設計されることもある。つまりオイルは、後から選ばれるものではなく、エンジンとともに考えられる存在なのだ。

この事実をどう言葉にするか?数々の議論の末にたどり着いたのが、
A Liquid Engine Component
― 液体パーツ

という言葉だった。

決して新しい思想を作ったわけではない。1964年のオートルーブシステムに始まり、1967年の米国でのYAMALUBEブランド誕生以来、ヤマハ発動機が愚直にやってきたことをあらためて言葉にしただけである。液体でありながら、コンポーネントパーツである。その一文に、YAMALUBEの歴史とヤマハ発動機のものづくりの姿勢が凝縮されている。

次回は「液体パーツ」の誕生にまつわるストーリーを紹介していく(続く)。

この記事のまとめ

  • ヤマハは1964年にオートルーブシステムを実用化し、潤滑をエンジン性能の一部として設計する思想を確立した。
  • 潤滑は補助ではなく、エンジン性能と信頼性を左右する重要な設計要素として位置付けられている。
  • 1967年に誕生したYAMALUBEは、ヤマハ製品の性能を最大化する純正オイルブランドとして発展し、現在はグローバル展開されている。
  • しかし市場では「品質が良い」だけでは差別化できず、ブランド価値が十分に伝わっていない課題があった。
  • 2016年以降、社内外の専門メンバーによるプロジェクトで、YAMALUBEの本質的価値を再定義する取り組みが始まった。
  • ヤマハではオイルを単なる消耗品ではなく、エンジン開発と一体で評価される“機能部品”として扱っている。
  • その思想を表す言葉として「A Liquid Engine Component(液体パーツ)」が定義され、ヤマハのものづくりの本質を示している。
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