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デザインストーリー:MT-03/MT-25

MT-25 / MT-03のデザインに込めた想いをデザイナーが語ります。

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手にした人それぞれが宝物にできる。MT-25 / MT-03はそんなバイクです。

コンセプトは“大都会のチーター”。市街地で交通の流れの先頭を俊敏に駆け抜け、流れをリードする。そんな新しいネイキッドスポーツバイクのカタチを目指しました。
チーターが走る姿を想像してみてください。カラダ全体をギュッと縮めてチカラをため、それを一気に伸ばし、伸びやかに駆ける。シャープで引き締まった筋肉を活かして右に左にとステップを踏む。そして佇んでいるときにも、その躍動感を感じる。MT-25/MT-03が目指したのは、そんなチーターの姿やイメージでした。
その都会のチーターというイメージと、MTシリーズに貫かれる“MTらしさ”をどうミックスするか。そのためにはMTシリーズの輪郭を浮き彫りにする必要がありました。それこそ、アタマから煙が出るほど“MTシリーズとは何か?”を徹底的に考えました。
“MT”とは、今までに無かった新しいネイキッドスポーツのカデゴリーです。ヤマハ・スポーツモデルの最高峰であり、その血統を受け継ぐ“Rシリーズ”がエンジンパフォーマンスとハンドリングを究極の速さで楽しむのに対し、“MTシリーズ”は速さではなく、マシンを自由自在に操る楽しさを追求しました。そのためにエンジン特性と車体を磨き上げ、一目でその扱いやすさを理解することができるデザインを与えました。その扱いやすさの可視化こそ、デザインにおける“MTシリーズ”らしさなのです。
それを具体的落とし込んだキーワードが「マスの集中化」や「クロスレイヤード構造」、それに「クロスムーブメントデザイン」でした。

マスの集中化とは、ご存じの通り、バイクを構成する主要パーツを可能な限り車体の中心に集め、そのことで高い運動性能とコンパクトな車体を求めたもの。ヤマハがラインナップするほとんどのモデルがマスの集中を追求しています。くわえてMT-25/MT-03ではタンクは上面のタンクカバー部分、サイドのニーグリップ部分、その下を流れるエアインテークの3つの機能パーツが、重なり合うことで視覚的にもマスの集中化を表現。機能とスタイルを両立させたクロスレイヤード構造としました。
またタンクは、車体前方から後方に向かってボリューム感を持たせることで、さらには艶やかなサイドカウルと別れるようにマットブラックを採用したシートカウル、その形状に沿うように美しいラインを与えエッジを効かせたグラブバーなどによって、ライダーを中心にカタマリ感を表現することができ、実質的にも視覚的にもマスの集中化を図りました。
実はMT-25/MT-03のガソリンタンクは、MT-07と同じくインナータンクを採用。ガソリンタンクに見える部分は樹脂製のタンクカバーなのです。一般的なバイクは型抜きした鉄板を組み合わせたスチールタンクを採用しています。このスチールタンクはシンプルな構造と形状によってタンクの製造が比較的簡単で、ガソリン容量を確保しやすいのですが、複雑な形状に対応しにくいというデメリットを持っていました。しかしMTシリーズは、バイクにおけるデザインの重要性を強く謳ったモデル。とくにカウルを持たない、ネイキッドスタイルのバイクにおいて、ガソリンタンクの形状はスタイリングの肝となる重要なパーツです。だからMT-25/MT-03は、あえてインナータンクタイプとし、デザインの自由度が高いタンクカバーを採用したのです。
そのガソリンタンクカバーは、車体前方から後方に向かってボリューム感を持たせると同時に、両サイドから中央に向かってボリューム感を持たせています。分かりやすく言うとタンク上面の両サイドがエグレたようなデザインになっています。これによってハンドルを左右に切ったときにタンクとのクリアランスを確保するとともに、躍動感や軽快感も表現しています。

MTは操る楽しさを追求したモデルです。実際にMT-25/MT-03を走らせたときはもちろん、跨が った瞬間に、いえ極端に言えば見ただけでもその楽しさを感じて頂きたい。MT-25/MT-03なら自分でも乗れそう、MT-25/MT-03ならこんな事ができそう......そんな想像がどんどん湧いてくる。これは、「クロスムーブメントデザイン」による左右への動きの表現が、サイドシルエットだけ では分からない、跨った時に初めて感じる躍動感を生み出しているからです。この体験は、 MT-25/MT-03に跨がったライダーだけが感じられるワクワク感なのです。

もちろんサイドシルエットにもこだわっています。バイクのサイドシルエットは、バイクの印象 を大きく左右しますから。タンク下側のエアダクトから空気を取り入れ、それが燃料と混ざって エンジン内で爆発し排気する。内燃機がパワーを生み出す空気の流れを“Z”のラインで表現すると いう、MTシリーズのアイコンをしっかりと受け継いでいます。

また、ヘッドランプ上にあるLEDポジションランプはMT-25/MT-03ならではの個性を表現し、タンクカバー分割ラインを前方から水平に流し、フロントからリアに向けて水平基調を作り出しました。いままでの手法でバイクに躍動感を求めていくと、やや前下がりの、ダウンフォースを感じるデザインが多かった。しかしそれは、スポーツ走行に対するこだわりが強く表現されるカタチでした。しかしMT-25/MT-03が求めたのは、ジャケットをサラッと羽織って気軽に乗ることができるようなバイクのカタチ。それには水平基調が欠かせなかったのです。因みに、特徴的なメーターバイザーはMTシリーズのロゴマークをモチーフとしており、その下から睨みを利かせるLEDポジションランプと共に、MT-25/MT-03ならではの個性を表現しています。

また機能を可視化する意味において、バイクのパワーの源である、エンジンの存在感を最大化することはとても重要でした。MT-25/MT-03は、兄弟モデルに比べ排気量が小さい分、機能パーツが小さかったり少なかったりしています。それでいながら“都会のチーター”というコンセプトにふさわしい迫力を表現しなくてはなりませんでした。そこで外装パーツのデザインによって、機能パーツを強調しメカニカルな魅力を高めるという手法を採用しています。その象徴的なパーツがアンダーカウルです。MT-25/MT-03は小排気量のネイキッドマシン。スペース的にも重量的にも、徹底した軽量化と合理化が図られています。そんななかあえてアンダーカウルを装着したのは、それによって“都会のチーター”というコンセプトにふさわしい筋肉感や機械が持っている迫力を表現したかったからです。
MT-25/MT-03は軽量でコンパクトなバイクであり、それが故にスポーツライディングからツーリング、そして街乗りや通勤通学と幅広いシーンで活躍するバイクです。だからこそあらゆるシーンで、あらゆるライダーに満足して頂けるよう機能を磨き、デザインを磨きました。手に入れた人それぞれが、宝物にできるバイク。その手軽さとは裏腹に、良い意味でギャップを感じて頂けるバイクに仕上がりました。ぜひ、この驚きを体感してみて下さい。

プロフィール

本田宗久 GKダイナミックス

これまでヤマハのアジア市場向けモデルの車体デザインを数多く担当。モペッドモデルの最上位機種/ジュピターMXのデザインも担当した。また国内モデルではBOLTの車体デザインも手掛けている。

安永稔之 ヤマハ発動機デザイン本部

デザインの競争力強化を目的に2012年に新設されたデザイン本部所属。新モデルの立体からカラーリングデザインのデザイン企画グループリーダー。MTシリーズ、2015年の鈴鹿8耐で優勝した新型YZF-R1も担当。

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