機能・装備:YZF-R1M/YZF-R1
パワーユニット

01真のコントローラブル。水冷・DOHC・4バルブ・直列4気筒・997cm³・クロスプレーンエンジン
高性能エンジンであることは、もはや必然だ。その性能を、いかにして扱いやすく仕立て上げるか。開発の粋を集めた、動弁系、燃焼系、制御系により、「コントローラブル」という言葉の定義を変えた。アクセルを回し、戻す時に、まったく過不足なく、ライダーが期待している通りのリアクションをする。それが YZF-R1のエンジンである。当然のことのようだが、その実現は極めて困難だ。10% 開けた時に10%の、50%開けた時に50%の、そして100%開けた時に100%のパワーを得たとライダーが感じ取れること。アクセルを戻した時に、望むだけのエンジンブレーキが得られること。これは単にメカニズムの正確さによって実現できるものではない。ライダーの感性に寄り添ったフィーリングの作り込みが求められる。数値化できない感覚的な部分にこだわり抜く。これはヤマハが伝統的に貫いてきた、ライダー重視の姿勢そのものである。YZF-R1のエンジンは、その集大成と言える。安心して、アクセルを操作できる。その先に待っているのは、爽快で心地よいマシンコントロールの極致である。
02高回転での信頼性を確保するボックスブリッジ型アルミ鍛造ピストン
軽量アルミ鍛造ピストンはピストン往復重量とロス馬力の低減に貢献。ピストン裏面にボックス形状の“ボックスブリッジ”を設けることで剛性を維持しつつ、ブリッジの天面側への加工処理により剛性と軽さを両立させている。
03ロス低減と大端真円度を確保するFSチタンコンロッド
ロス馬力低減を図り、高精度な大端真円度を確保するため「FSチタンコンロッド」を装備。(FS;Fracture Split;破断分割式)
鉄同等の強度でありながら、軽量で高回転化を実現。高回転におけるクローズイン傾向(ピストンの慣性力で大端部の真円が保たれなくなる傾向)を抑止して優れた信頼性をもたらしている。
04優れた排気効率を引き出すミッドシップマフラーと排気デバイス
排気効率の確保とマス集中化のため4→2→1集合のミッドシップマフラーを装備。エキゾーストパイプ、マフラーにはチタン材を採用し軽量化に貢献。 チャンバーとサイレンサーの間には2系統の排ガス通路を設け、回転域により排気経路を調整する排気デバイスを設置。低中回転域では片方の通路はバルブで閉じられ、高回転域ではバルブが開き両通路が開放。モーター駆動によりバルブの開閉を制御し、低中速域と高速域で排圧を最適化することにより、コンパクトなサイレンサーを実現しながら優れた出力・トルク性能と十分な消音効果を両立させている。

05オンオフ切替可能なトラクションコントロールシステム
ドライバビリティを向上させるシリンダーヘッドを装備。スロットルバルブと燃焼室の距離が短い吸気ポートのため、スロットルバルブ下流の吸気容積を減少することにより高い吸気効率をもたらす。インジェクターとスロットルモーターの位置に合わせ、10 孔斜流インジェクターにより最適な燃料噴射位置とし、吸気バルブ傘裏方向に集中。燃料噴射は吸気バルブ傘裏方向に集中。ポート壁面への燃料粒子の付着量を低減し、より効率的な燃焼に貢献している。またツインインジェクターにより、高回転域ではファンネル上層のセカンダリーインジェクターからも噴射。必要な燃料の供給を行うとともに、吸気温度の上昇を抑え充填効率を高めている。
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- 画像は合成によるイメージです。

06最適な形状のフィンガーロッカーアームとカムプロフィールにより高回転域での信頼性を確保
カムプロフィールとフィンガーロッカーアームのプロフィールの合計によってバルブの最大リフト量が決まり、リフト量を確保しやすいフィンガーロッカーアーム式バルブシステム。各プロフィールの最適化により、超高回転におけるバルブ開閉時の衝撃緩和が可能で、ハイパフォーマンスエンジンの礎となっている。さらに、フィンガーロッカーアームの形状を最適化することで、高回転域でのバルブ開閉時の挙動をより安定。また、IN、EXともにカムプロフィールを調整し、実績のあるバルブリフト量とオーバーラップを継承。高回転域でのバルブ追従性を高めている。
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- 画像はイメージです。

07パワーロスを徹底的に低減しながら潤滑性にも配慮したオイルポンプ
ロス馬力の低減を徹底すべく、オイルポンプのローター幅は20mmとしている。さらにオイルポンプの吐出量に合わせて、各部の油圧とオイル供給を最適化している。クランクシャフトのオイル孔は大端部を小径とし、幅広いプレーンベアリングを装備。プレーンベアリングのオイル孔は1孔で、ピストンクーラーの吐出孔およびクランクケース油路寸法も最適化している。これらの相乗効果で優れた潤滑性をもたらす。
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- 画像はイメージです。
08より自然なスロットル操作感をもたらすAPSG採用のヤマハ電子制御スロットル
スロットルバルブの駆動には、YCC-T(ヤマハ電子制御スロットル=Yamaha Chip Controlled Throttle)を装備。スロットルケーブルやプーリーを廃止し、APSG(Accelerator Position Sensor Grip)がセンサーとマグネットによりアクセル開度を検出。そのデータをダイレクトにスロットルバルブ駆動モーターに反映させるシステムとしている。APSGはスプリング、スライダー、ギアによって自然な操作感を作り込み、優れたアクセル操作感を実現。アクセル開度が増すに従って可変的に摩擦感(抵抗感)が高まることにより、ライダーは適度なフィーリングでのスロットル操作が可能となっている。
09滑らかなコーナー進入を支える軽量・小径なA&S® クラッチ
高出力に見合う信頼性を確保しつつ軽量・小径化に貢献するA&S クラッチ(アシスト&スリッパー・クラッチ)※を装備。バックトルク発生時にボスクラッチとプレッシャプレートが、加圧力を減少させる 方向に動いて半クラッチに近い状態を作り、コーナー進入前のシフトダウン時などの穏やかな車体 挙動に貢献している。
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- 「A&S」「アシスト&スリッパ―」は、株式会社エフ・シー・シーの登録商標です。
車体

10クイックかつ安定したハンドリングをもたらすアルミ製デルタボックスフレーム&リアアーム
ハードブレーキングによる強力なストッピングパワーを、難なく受け止める。倒し込みのフィーリングはあくまでもニュートラル。レースシーンにおいて狙ったバンク角に、狙ったバンキングスピードで持ち込むことができ、コーナリング中は高い自由度でラインを変更でき、立ち上がりでは不安なくフルパワーを堪能できる。高剛性でありながら、縦・横・ねじりの最適バランスに配慮したアルミ製デルタボックスフレームとリアアームの組み合わせが、俊敏でありながら安定感のあるハンドリングをもたらす。

11前輪の接地感や安定性に寄与するウイングレット
レースマシンの開発で得られた技術をフィードバックしたウイングレットを左右サイドカウルの上部に新採用。ウイングレットから発生するダウンフォースが車体の操作性に貢献。レースシーンでのアンチウィリー制御の効果を引き出すと同時に、ブレーキング時やコーナリング時におけるフロントタイヤの接地感向上に貢献。カーボン素材を採用することで、軽量性と高剛性を両立。空力性能を追求しながらも、フラッグシップモデルにふさわしい高品質な仕上がりを実現している。
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- 画像は海外仕様で一部国内仕様とは異なります。


12コントロールフィーリングを向上させたフロントブレーキ
YZF-R1のフロントブレーキは、ブレンボ製ラジアルマスターシリンダーを新たに搭載。ピストンがブレーキレバーと同一方向に動作することで、レバー操作がダイレクトにブレーキ油圧へ変換。ライダーはレース中の様々な状況で、意図通りのコントロールフィーリングを体感できる。
また、ライダーのレバー操作にリニアに反応するブレーキングを実現するために、コントロール性に優れた摩擦材のフロントブレーキパッドを装備している。
ブレンボ製のモノブロックキャリパー「Stylema®」を新たに搭載。従来品よりもブレーキパッド周辺の開口部を拡大することで、2020年モデル比で軽量化と放熱性能の向上を実現。ラジアルマウントのボルト挿入部とブラケット間の距離も短縮され、軽量化に貢献。ブレーキ入力時のコントロール性が高まった。
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- 「Stylema®」はイタリア Brembo S.p.A.の登録商標です。
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- 画像は海外仕様で一部国内仕様とは異なります。
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- YZF-R1Mは2024年モデル継続。

13優れた操縦安定性をもたらすマグネシウム製鋳造ホイール
軽量なマグネシウム鋳造ホイールを装備し、高い走行性を引き出す。開放断面の形成を活かしたセンターリブのない滑らかなリム外観となり、表面は静電塗装を施し優れた強度・耐蝕性を備えている。また、ホイールバランス用のウエイト色も専用デザインとなっている。
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- 画像は海外仕様で一部国内仕様とは異なります。

14照射特性を最適化した軽量コンパクトなLEDデュアルヘッドランプとポジションランプ
軽量コンパクトで”R”デザインのアイコンとなる LED デュアルヘッドランプを採用。LowーHighビームとも照射特性を最適化している。
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- ヘッドランプは撮影用に点灯したもので、実際の走行状態を示すものではありません。ロービーム時は左側が点灯、ハイビーム時は両側が点灯します。
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- 画像は海外仕様で一部国内仕様とは異なります。

15グリップ力が高まった新作シート
前後ともに新たなシボパターンを採用した新作シート表皮を装備。24年モデル比でグリップが向上し 、ホールド性と体重移動のしやすさを両立している。特にコーナリング時の一体感が向上し、車体の安定感にも貢献している。
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- 画像は海外仕様で一部国内仕様とは異なります。
サスペンション
YZF-R1

16より正確なサスペンション制御を可能にするKYB製倒立式フロントサスペンション
YZF-R1のフロントサスペンションにはSDF(Separate Damping force Function)構造のKYB製倒立式サスペンション(内径43mm、ストローク120mm)を新たに搭載。左右で独立した減衰力調整が可能で、右側は伸び側の減衰力を、左側は圧側の減衰力を調整できる。(さらに左側は高速/低速の2段階設定が可能)また、両サスペンションに装備されたベースバルブが、サスペンション下部へのオイル流入を適切にコントロールし、シリンダー内の圧力を最適化。ストローク時の反応性が向上し、より正確なサスペンション制御を実現している。
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- 画像は海外仕様で一部国内仕様とは異なります。

17高い接地感を発揮するリンク式モノクロスリアサスペンション
リンク式モノクロスリアサスペンションにも最適な減衰セッティングを施し、ブレーキング、コーナリング、加速と、さまざまな場面でリアタイヤが路面をつかむ接地感がより分かりやすいよう配慮。定評ある「R1ハンドリング」を維持しながら高い接地感を発揮。
YZF-R1M


18快適な走行をもたらす前後サスペンション
伸側・圧側減衰力を統合制御するオーリンズ製電子制御サスペンションを前後に搭載。ÖHLINS製電子制御サスペンション・ERS(エレクトロニックレーシングサスペンション)を装備。フロントアクスルブラケット部にガスシリンダーを装備し、0.6MPa加圧することでキャビテーションの発生を抑制。高負荷時でも安定した減衰力を発揮する。
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- ディスプレイは撮影用に点灯したもので実際の走行状態を表したものではありません。
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- 画像は海外仕様で一部国内仕様とは異なります。
YRC(YAMAHA Ride Control)

19走行環境に応じて好みに設定できるYRC Setting
ワインディングやサーキットではエンジンレスポンスを高め、市街地や雨の日は過剰なエンジン出力を抑えるなど、さまざまな路面状況に合わせた走行が設定可能。幅広いシーンに対応する走行モードを好みに応じて選択できる。4つのYRC(YAMAHA Ride Control)は出荷時に1~4の各PWRに適したその他の各制御モードが推奨設定されており、好みや走行環境に応じて各制御モードを自由に組み合わせることが可能となっている。
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- ディスプレイは撮影用に点灯したもので実際の走行状態を表したものではありません。
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- 画像は海外仕様で一部国内仕様とは異なります。
20あらゆるシーンで意のままの走りをサポート
発進から加速、減速、旋回、そしてコーナーからの立ち上がり加速まで、あらゆる走行シーンにおいてLCS(ローンチコントロールシステム)、TCS(トラクションコントロールシステム)、SCS(スライドコントロールシステム)、LIF(リフトコントロールシステム)、QSS(クイックシフトシステム)、BC(ブレーキコントロール)、EBM(エンジンブレーキマネージメント)の各制御が連動して意のままのライディングをサポートする。
バンクの深さをも反映したTCS [ トラクションコントロールシステム ]
加速時に後輪タイヤの駆動力を効率よく引き出すTCSを搭載。前後輪の車速差の検出に加えて、IMUで推定したバンク角の情報から、走行状況に応じてTCS介入度を最適に補正する。バンク角が増えるに伴いTCS介入度が増える。
高い旋回性能をサポートするSCS[ スライドコントロールシステム ]
リアタイヤの横滑り情報を、エンジン出力に反映するSCSを搭載。IMUで推定するリアタイヤの横滑り情報を反映して出力を最適に補正。TCSとあわせて滑らかな走行性をサポート、ライダーのレースへの集中を支援する。
俊敏なスタートダッシュを支えるLCS [ローンチコントロールシステム]
レース時のグリッドスタートでの、滑らかで機敏なスタートを支援する LCSを搭載。LCSをオン設定しておけば、アクセル全開でもエンジン回転数は約1万回転以下に抑えられ、TCS、LIFとの連動効果により、最適エンジン出力に補正する。ライダーはクラッチミート操作と車体コントロールに集中することができ、スタート時のストレス低減を図る。
よりスムーズな走行を実現するQSS[クイックシフトシステム]
シフトアップ、シフトダウン時のシフトペダルの動きをシフトロッドにあるセンサーが検知すると、ECU(エレクトリックコントロールユニット)演算により出力を補正。ギアにかかるトルクを瞬間的にキャンセルし、スムーズなシフト操作をサポートする。加速時のシフトダウン、減速時のシフトアップにも対応している。
前輪リフトによるタイムロスを抑止するLIF[リフトコントロールシステム]
発進・加速時の穏やかな車体挙動をもたらすLIFを搭載。IMUの車両姿勢情報などから加速時の前輪リフト傾向を推定し、エンジン出力を補正、ライダーの運転操作を支援する。
エンジンブレーキの強さを選択できるEBM[エンジンブレーキマネージメント]
ギアポジション、エンジン回転数、アクセルポジション、スロットルポジションの情報に基づき、ECUが①スロットル開度、②点火時期、③燃料供給量を制御。扱いやすいエンジンブレーキ特性を実現する。EBMは3段階から介入度合いをセレクト可能。好みや走行状況に応じた最適なエンジンブレーキを選択できる。
ブレーキ圧を制御するBC[ブレーキコントロール]
前輪速度、後輪速度、6軸IMUの各情報をHU(ハイドロユニット。ABSユニットを含む)に集約して逐次演算し、前後輪のブレーキ圧力に反映させる。介入度は2パターンからセレクト可能。直進走行状態での緊急制動に対応する通常ABS※モードの「BC1」、さらにコーナリング中のやむを得ない緊急制動時など車両挙動が乱れやすい場面においてもブレーキ圧を制御する「BC2」を用意している。
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- 車輪に付けられたセンサーがスリップを検知すると、ブレーキを制御して車輪のロックを抑制します。制動距離を短くしたり、転倒を回避するシステムではありません。コーナー等の手前では十分に減速し、コーナリング中の急制動を避けてください。
前後サスペンションを統合制御するERS [エレクトロニックレーシングサスペンション/YZF-R1Mのみ]
サーキット走行でのポテンシャルをさらに引き出すÖHLINS製電子制御サスペンション、ERSを搭載。「IMU」及び、各センサー情報に基づき、走行状況に応じてSCU(Suspension Control Unit)が、前後サスペンションの伸・圧減衰力を統合制御する。 ERSでは、各種センサー情報をもとに走行状況を推定すると同時に、SCUで最適な前後減衰力を演算。サスペンションに内蔵されたステッピングモーターを駆動させ、減衰力の調整機能を受け持つニードル位置を調整する。
YZF-R1M専用装備

21シリアルナンバー入りエンブレム
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- 画像は海外仕様で一部国内仕様とは異なります。


22カーボン製フロント・リアカウル
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- ポジションランプは撮影用に点灯したもので、実際の走行状態を示すものではありません。
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- 画像は海外仕様で一部国内仕様とは異なります。


23ÖHLINS製前後サスペンション
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- ディスプレイは撮影用に点灯したもので、実際の走行状態を示すものではありません。
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- 画像は海外仕様で一部国内仕様とは異なります。