XSR900 “カウルKIT” 作業者の技と術
何を想って企画したか、どのように創ったのか、アクセサリー開発の裏側を覗き見

カスタマーエクスペリエンス事業部
ボルトオンアクセサリー企画G
ヨーヘイさん
現在はボルトオンアクセサリーの事業企画を主に担当しています。数年前までは産業用機械の開発設計を行っていたメカ系の元技術者です。バイク好きなので社内の制度を利用して現職に転籍しました。どちらかと言うと未だにオーナー目線でいると思っているので、その視点から皆さんの(自分の)知りたい情報をこのコンテンツを利用して提供していきます。
アクセサリーパートを担当することになったヨーヘイです。
CX事業部にて純正アクセサリーの事業企画を担当しています。
このパートでは「純正アクセサリーの企画や開発のウラガワ」を様々な視点で紹介していきます。
皆さんは自分のバイクにステッカーチューンをしたことはありますか?
自分はテネレにステッカーを貼って自己満足に浸っています。純正アクセサリーにおいても2025年式以降でのテネレに対応したグラフィックキットの販売があります。他の人と被らないカラーリングは新鮮で自分のバイクって感じがしますよね。自分のテネレは元々青色でしたが現在は赤白になっており、ホイールが元からの青色なのでちょっとカスタム感があると思っています。
グラフィックキット Ténéré700(‘25~) | ワイズギア

このステッカー貼り、実際に貼ったことがある人なら分かると思いますが綺麗に貼るのはなかなかに難しい。
平面に貼るのならまだしも、バイクは曲面だらけでその曲面に沿ってラインを合わせてかつ気泡を入れずに貼るのは至難の業です。最初の数枚は気合を入れてバランス等色々考えながら貼りますが、数枚も貼っていくとだんだん集中力が低下していき、まぁこんなだよなと自己暗示しながら妥協していきます。貼っている本人が気にするほど他の人はそのバイクを気にしません。ちょっと気泡が入ったり、位置がちょっとずれたりしていても少し遠めに見れば意外と(本人が気にするほど)気にはならないと思ってます。
ここまでは自分のバイクの話です、当たり前ですがヤマハ発動機として販売する製品に関してはそうはいきません。皆さんがお金を出して購入頂く製品でありそこに気泡があったり基準以上にずれがあったり剥がれがあるのはNGです。
今年、2026年のモーターサイクルショーでも参考出品されていたのでご覧いただけた方もいらっしゃると思いますがXSRのインターカラーの外装のフロントカウルやリアシングルシートはグラフィックシートが貼り付けられています。今回はこのグラフィックシートの貼り付け工程を紹介します。

これらのカウルは様々曲面があり誰でも貼れるわけではありません。ヤマハ発動機では社内及び社外の協力会社においてこのようなグラフィック貼り付け工程を仕分けしています。今回紹介するXSR900のインターカラーのフロントカウル、シングルシートカウルのアクセサリーに関してはMARUHACHI株式会社様の協力の元、熟練の技を持つ作業者によって施工は行われました。作業頂いたのはサブ組職長徳田弘美さんです。徳田さんには従来より様々なアクセサリーのグラフィック貼り付けを担当頂いております。
作業工程
初めに貼り付け面全体を清掃して、専用治具台の上に対象部材、今回はカウルをしっかり固定させます。次に貼るシールの位置を正確に出して気泡が入らないように押さえつけながら場所を決めます。ここでの位置決めがうまくいかないと後工程では修正不可ですね。
少しでも貼り付けし易いように対象物を傾けたりするのも大事ですね。テネレはバイクにそのまま貼っていました・・・。
専用のスキージと指の感覚を頼りに貼り付けていきます。
スキージも硬さ違いでソフト、ハードの2種類がありサイズも大中小が準備されており各々使い分けて使用します。
大きな面を貼り付けたら細部の面を引っ張りながら貼り付けます。
これで半分貼れました。
残りの半分を折り返して入念に押さえながら大きな面から徐々にスキージを返しながら押さえこんでいきます。
小さな面も同じように貼っていきます。
最後にセンター部分を入念に仕上げていきます。
全体をなめしていき最後に保護フィルムを剝がします。
完成品!
作業工程
次にリアシングルシートカウルのグラフィックシートです。
フロントカウルと同様にシートカウル全体を綺麗に拭き上げて埃等を除去します。
こちらも専用の治具台にセットしセンター基準で貼り付け開始します。
このセンターを決める作業がかなり重要でここを間違えると全体のバランスが崩れてしまいます。
リアシングルシートカウルは曲面を回り込んで貼り付けしていますのでフロントカウルよりも難易度は各段に上がります。作業の難易度は上がりますが、この回り込み部分が商品企画者のこだわりポイントであり分割はされていません。
センター位置を決めたらグラフィックシートを伸ばしながら貼り付けます。
グラフィックシートは1枚毎にクセがあるためすんなり貼れる物もあれば、皺が入りやすいシートもあります。
リアシングルシートカウルは曲面を回りこんで貼る必要があり、皺が入りやすい部分はドライヤーで軽く温めてから
スキージで抑え込みながら貼り付けます。
クセの強いシートはこれを繰り返していきます。
片側が終わったら反対側も同様に貼り付けていきます。
これで貼り付けは完了です。
このカウルを回り込んで貼り付けするには熟練の技が必要であり、その技量を持つ人は極少数です。
今回のアクセサリー企画者も企画の段階では実際に製品にできるか一抹の不安を感じたため、サンプル素材を徳田さんの元に持ち込んで作成可否を確認し、GOサインを頂いてからプロジェクトを進めたとのことです。
参考に自分が練習用部材で試し貼りしてみましたがどうしても皺が入ったり、全体が上にずれてしまったりして綺麗には貼れませんでした。
今回取材した徳田さんのグラフィックシートの作業時間はフロントカウルで2分未満、リアシングルシートで5分未満でした。絶対真似できません・・・。
なお同じ型のグラフィックシートであっても、各々の持つクセによって作業時間は大幅に伸びることもあるそうです。クセは貼り付けしてみて初めて分かるそうですので皆さんも自分で貼り付けした際にずれたり、皺が入ったらシートのクセの可能性もあります。
リアシートカウルはこの後工程に塗装工程があるため入念にマスキングを施してから次工程に移ります。グラフィックシートを貼り付ける工程よりもマスキングしている時間の方が長いくらいです。
このマスキング後、塗装工程に進みます。


塗装も完了した完成品です。
商品企画担当者の一押しはこのリアカウルのテール近辺で綺麗に回り込んだラインです!
気を付けて見てみるとより一層綺麗に見えてきますね。
今回のアクセサリーは今年のモーターサイクルショーに参考展示されましたので今後の反響次第で販売されるかもしれません。
皆さんも愛車を今度良く見てみてください。自分の愛車にもグラフィックシートが貼られた場所があるかもしれません。普段何気なく見ている愛車にも様々な技術、熟練の技術が織り込まれている事が感じられるとまた愛着も湧いてくると思います。
自分のテネレも貼ってから2年以上経過しており、今回作業現場を取材させて頂いたことで貼り換えたい気分になってきたけどどうしようか思案中です・・。
この記事のまとめ
- XSR900インターカラー外装に採用されたグラフィックシート貼りの工程と、その裏側にある職人技を紹介。
- バイクの曲面へ気泡やシワなくステッカーを貼るのは非常に難しく、市販製品では高い品質基準が求められる。
- 貼り付け作業は協力会社MARUHACHIの熟練作業者が担当し、専用治具や複数種類のスキージを使い分けながら施工している。
- 特にリアシングルシートカウルは曲面へ回り込む一枚貼りのため難易度が高く、ドライヤーで温めながらシワを抑えて仕上げる。
- グラフィックシートには個体ごとの「クセ」があり、貼りやすさが毎回異なるため経験と感覚が重要。
- 企画担当者も商品化前に施工可能か不安を感じ、熟練作業者へ試作確認を依頼してから開発を進めた。
- 熟練者の作業時間はフロントカウル約2分、リアシートカウル約5分と驚異的なスピードで、簡単には真似できない技術である。
- 普段何気なく見ているグラフィックや外装にも、企画者のこだわりと職人の技術が詰まっていることを知ってほしい、という内容。