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とあるサービス部社員が語る整備の世界

サービス部社員に歴史あり。個性派社員による整備の話などなど

エンジンオイルとてんぷら油 エンジンオイルとてんぷら油

カスタマーエクスペリエンス事業部サービス部

ケニー筒井さん

とりあえず、気になる事は
自分でやってみる人(笑)

長いことサービス部門で働いています。原付から大型スポーツ、ATVにスノーモービルまで、ヤマハのサービス業務を手広くやってきました。バイクはオフロードからスーパースポーツまで乗り継いだ末に、今はネイキッドに落ち着いています。趣味はキャンプや料理、自宅での音声応答ローカルAI構築、EV自作までと節操がなく、「とりあえず自分でやってみる」の精神で大体なんでも手を出します。その結果、やめときゃ良かったと後悔することも多いです。

こんにちは。ヤマハ発動機のサービス部門のケニー筒井です。
今回のブログを書こうと思ったきっかけは、同じ事業部のある同僚の出来事です。
同僚は12万キロ走行の車のエンジンオイルをしばらく交換せずに乗り続けた結果、彼の車のエンジン内部の部品が壊れました。整備工場の人には 「エンジンオイル交換、怠っていましたね」 と詰められ、修理費はなかなかの高額万円。オイルはほぼ空っぽだったそうです。このブログの第1回で「マニュアルを読め」と力説した私の立場はどうなるんでしょうか……。世に向けたサービスブログで「整備の世界!」とか楽しそうに書いてる横で、思わぬ整備サボり事案が起きてしまいました。結果的に私は同僚にも読んでもらえないブログを書いてる痛い人となってしまいましたが、彼の車のエンジンはもっと物理的に痛かったと思います。
さて。この出来事をきっかけに、エンジンオイル交換について改めてブログに書いてみようと思ったんですが、一つ問題がある。エンジンオイルの話って、真面目に書くとめちゃくちゃ退屈になるんです。
「定期的に交換しましょう」「オイルには潤滑・冷却・密封・緩衝・防錆・清浄の6つの役割があります」。はい、正論。100点満点のド正論ですねコレ。でもド正論だけで人が動くなら、私の同僚のエンジンは死んでないんですよ。
というわけで今回は、エンジンオイルの話を 一般の方が分かりやすい「てんぷら油」に例えてブログの中身を考えてみたいと思います。

なぜてんぷら油なのか

エンジンオイルとてんぷら油。片方は機械の中で働く油、片方は台所で働く油。根本的な用途は全く違います。でも、「劣化の仕方」がとても似ているんです。
どちらも熱と空気に触れることで酸化する。使うたびに不純物が混じっていく。てんぷら油なら天かすや食材のカス、エンジンオイルなら燃焼で生じた煤やエンジン内部の金属粉。そして使い続けるうちに色が変わり、性能が落ちていく。 さらに言えば、どちらも使っているうちに少しずつ減っていく。
ここまでは「ふーん、似てるね」で終わる話なんですが、面白いのはここからです。

エンジンオイルではなくてんぷら油なら、あなたはきっと許さない

たとえば、こんな状況を想像してください。出先でてんぷら屋に入った。目の前で揚げてくれるカウンター席。ふと鍋の中を覗いたら、 油が真っ黒。 しかも量が明らかに少なくて、鍋底がうっすら見えている。店主に聞いたら「この油?2-3か月変えてないかな。減った分は足してるけど」と言う…あなた、そのてんぷら食べますか?食べないですよね!私なら絶対に食べない!「おなか壊すでしょ」「ベッタリしてて不味そう」「衛生的にアウトだろ!」。当然の反応です。仮に4日間使いまわしでも嫌な人は嫌でしょう。口に入れるものだから、油の鮮度には敏感になる。 口にする油に関しては、みんなかなり厳しい基準を持っているでしょう。
では、ここでエンジンオイルの話に戻ります。あなたのバイクのエンジンオイル、最後に交換したのはいつですか?半年前? 1年前? ......覚えてない? 真っ黒に変色し、金属粉と煤と酸化物を大量に含み、量も減ったオイルがエンジンの中をグルグル回っている。 てんぷら油だったら絶対に許されないその状態を、エンジンオイルだと「まぁまだ走れるし、大丈夫っしょ」で許容してしまう。これ、冷静に考えるとすごい温度差ですよね。
もちろん、てんぷら油は口にするものだから生理的な嫌悪感が強いのは分かりますよ。エンジンオイルは自分が飲むわけじゃない。でも、 エンジンは「血液の様に全身にオイルを回してる」んです。 毎分何千回転もクランクシャフトが回る中で、そのオイルに命を預けている。てんぷら油で「おなか壊す」に相当することが、オイル交換が先延ばしになっているエンジンの中で静かに起きているかもしれない。

エンジンオイルは何をしているか

エンジンオイルには6つの役割がありますが、教科書的に並べると眠くなるので、ざっくり一言で言います。
エンジンオイルは、エンジンの「血液」です。
摩擦を減らし、熱を運び、隙間を塞ぎ、錆を防ぎ、汚れを取り込む。エンジンが動いている間、ずっと内部を巡り続けて、あらゆる仕事を同時にこなしている。
ここで大事なのは最後の「汚れを取り込む」です。エンジンオイルが黒くなるのは、燃焼で出た煤や不純物をオイルが吸い取っている証拠。汚れているのは、ちゃんと仕事をしているということ。 でも、吸収できる量には限界があるし、オイルはすこしづつ減っていく。
限界を超えた不純物は、エンジン内部にヘドロのように溜まっていく。なんだか健康診断で指摘されるコレステロールの蓄積の様で耳が痛いのです。飽和しちゃうと行き場がなくなってどこかに溜まってしまうのは、悪玉コレステロールも尿酸結晶も……オイルの汚れも大して違いはありません。ただ、血液と違いオイルは交換すればすぐにリフレッシュできるのが大きな違いですね。

メーカー指定の交換時期
―てんぷら油の「交換目安」と近いイメージ―

てんぷら油にも「交換の目安」ってありますよね。色が濃くなった、粘りが出てきた、嫌な臭いがする。あるいは「揚げ物◯回分」みたいな基準。
エンジンオイルにも同じように、メーカーが指定する交換目安があります。「◯◯km毎」あるいは「◯ヶ月毎」。これは何かというと、 「ここまではこのオイルの品質が保たれることを、開発の人たちが実験で確認した実績値」 です。ここを超えたらどうなるか、超えた後どこまでなら大丈夫なのか。正直に言うと、誤解なく正しく伝えることが難しい。
だってその時の、そのエンジンの状態、走り方、気温、オイルの残量など、条件が多すぎて「ここまでなら大丈夫」とは明確に言えないんですね。
てんぷら油で例えるなら、交換目安を過ぎた油で揚げたてんぷらを食べて「大丈夫かどうか」は、あなたの体調、胃腸の強さ、何を揚げたか、油の劣化度合い次第。 「まぁ、イケるっしょ!」で食べた結果、おなかを壊すかもしれない。 エンジンも同じです。走れてしまうから気づかない。異常に気づいた時にはなかなかの高額万円コースです。
あと一つ。メーカーの交換目安は、基本的に純正オイルでテストした結果です。「高級オイルを入れてるから交換サイクル伸ばしても平気でしょ?」という声もありますが、これはてんぷら油で言えば 「高級ごま油だから長く使っても美味しく揚がるっしょ?」 みたいな話。油のグレードと交換時期は別の話です。いい油でも、使えば劣化する。

「絶対に交換時期までに変えろ」とは言わないけれど

ここまで読んで、「うわ、ちょっとオイル交換サボってるかも」と思った方もいるかもしれません。でもね、正論振りかざして「指定距離内に絶対変えろ」なんて言いませんよ私は。メンテのタイミングもあるだろうし、お財布事情もあるでしょう。 実はね、私だって偉そうなことを言える立場じゃないんです。化粧水や日焼け止めの大切さを説かれて「うん。そうだね。大事だね」と言った翌日にはもう塗っていないような男ですから。 人は「大切だと分かっていること」と「実際にやること」の間に、とんでもなく深い溝がある。 エンジンオイル交換もたぶんそこにある。
だから今回は「交換時期に必ず変えろ」じゃなく、 「時々思い出して」 と言いたいんです。エンジンオイル交換をサボった結果は、すぐには出ません。てんぷら油と違って、自分で酸化具合や匂いも確認しにくい。だからサボれてしまう。 でも「走れている」と「エンジンが健康」はイコールじゃない。 これは第1回のブログでも書いた、バイクの一番タチの悪いところ。オイルを変えないと見えないところで悪玉コレステロールの様に吸収しきれなかった汚れが溜まり始めているかもしれない。
次にこのブログを読んでくれたあなたがてんぷらを食べる時。ふと 「そういえばうちのバイクのオイル、てんぷら油で言うとどのくらいだろう」 と想像してもらえたら。それだけで、この変なブログを書いた意味があります。

※このブログは「サービススタッフの個人的見解」であり、ヤマハ発動機の公式見解ではありません。正確な点検内容・時期についてはオーナーズマニュアルおよびお近くのヤマハ正規ディーラーにご確認ください。

この記事のまとめ

  • 同僚の“オイル交換放置によるエンジン故障”をきっかけに、エンジンオイルの重要性を解説。
  • エンジンオイルの劣化は「てんぷら油」に例えると分かりやすいと説明。
  • 熱や酸化、不純物の蓄積で性能が低下し、量も徐々に減っていく点が共通している。
  • てんぷら油なら交換を気にするのに、エンジンオイルは軽視されがちという“温度差”を指摘。
  • オイルはエンジンの「血液」であり、潤滑・冷却・清浄など重要な役割を担っている。
  • メーカー指定の交換時期は、純正オイルで性能維持を確認した基準値。
  • 「絶対守れ」と押し付けるのではなく、まずは時々オイル状態を思い出してほしい、というメッセージで締めくくられている。
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