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開発ストーリー:TRICITY300

TRICITY300の開発ストーリーをご紹介します。

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ヤマハ発動機株式会社
MC事業本部GB統括部商品企画推進G
秋田 峻佑さん

フロント2輪・LMWの世界観を
さらに広げるモデルとして開発

当社では、長期ビジョンのひとつ「ひろがるモビリティの世界」として、移動の選択肢や可能性を広げて行こうとTRICITY125やTRICITY155を世の中に誕生させました。フロント2輪・LMWならではの安定感とスポーティな走りを両立した新しい楽しさや、斬新なスタイルは徐々に浸透し、TRICITYオーナーさんの中には、「普通の二輪車にもう戻れない」とおっしゃられる方も少なくなく、フロント2輪・LMWが根付いてきている手応えを感じています。

そんなTRICITY125やTRICITY155のオーナーのみなさんが、次に乗ってみたいのはどんなモデルだろうと想像しました。そしてLMWの世界をすごく好きになってくださったみなさんに向けて、より上級なモデルとして排気量もより大きく、また新機能“スタンディングアシスト”も搭載し、より快適・便利にすることで、TRICITYを、LMWの世界を、もっともっと好きになっていただきたい、その一心で企画したのがTRICITY300です。

TRICITYファンの多くは、LMWならではのナチュラルな走行性能や走りの楽しさを評価してくださっていることから、TRICITY300においても、その点をとても大事にしました。LMWはフロント2輪のため一般のスクーターより重さがありますので、お客さまの期待を超える走行性能を実現するためにも、エンジン排気量は、250cm3ではなくあえて292cm3を選択しました。LMWに292cm3だからこその加速感を付加することで、スポーティな走りにも対応しています。

※LMW= Leaning Multi Wheel。モーターサイクルのようにリーン(傾斜)して旋回する3輪以上の車両の総称、商標登録第5646157号

サスペンションを動かすメリットを活かした
新機能“スタンディングアシスト”

フロント2輪と聞いて一般的にイメージする機能でもあり、TRICITY125、155オーナーさんの要望にも応えたいとの想いから、「スタンディングアシスト」をヤマハの市販モデルとして初めて採用しています。
一口にスタンディングアシストと言っても、さまざまな選択肢がありました。我々商品企画や開発のメンバーとたくさんの議論を重ね、お客さまにとって最もメリットがあるものはどういうものか、重量やコスト、購入後のメンテナンスなど、さまざまな要素を俎上(そじょう)に載せ、さらに信号待ちや停車時、押し歩く時、段差を乗り越える時など、思いつく限りの使用シーンを想定し、徹底的に分析・検証しました。

そしてヤマハとしては、「車両のリーニング機構をロックする仕組みで、サスペンションの機能は活かしたままであることが、総合的にお客さまにとって最適である」との結論に至りました。例えば、停車や押し歩き、狭いところでの切り返し、そして段差を乗り越えるようなシーンにおいては、サスペンションが稼働した方が扱いやすいという判断です。一方、車両保持の機能としては、サスペンションをロックしなくても実用域では十分であると考えました。

信頼性・安定感に292cm3の高い機動力が加わり
毎日の移動やライフスタイルの可能性を広げる上質な1台

TRICITY125、155のオーナーさんは、一般のスクーターユーザーさんよりも安定・安心感を重視する傾向にあります。今回スタンディングアシストを搭載したことで、フロント2輪のメリットが一層強化され、加えて排気量も292cm3へとパワーアップし、心地よい加速フィーリングを実現しましたので、TRICITYファンのみなさんには、確実に満足いただけるモデルに仕上がっていると自負しております。

また「ひろがるモビリティの世界」を具現化するフロント2輪・LMWは、移動の選択肢や可能性をこれからまだまだ広げていく潜在力を秘めています。上質な乗り味で、安心・快適に楽しく乗っていただけるTRICITY300は、日頃の通勤通学の移動手段としてだけではなく、休日には少し足を伸ばしてツーリングしたいという方にもオススメです。
TRICITY300が新しいライフスタイルや世界を広げるきっかけになれば嬉しいですね。


ヤマハ発動機株式会社
PF車両開発統括部SV開発部LMW設計G
浅野 大輔さん

LMWの集大成

TRICITY125から始まってTRICITY155、そしてスポーツLMWのNIKENに続いて今回のTRICITY300。TRICITY125は“BLUE CORE”エンジンの搭載や足付きを考慮したシート高への変更などマイナーチェンジがありましたが、今回のTRICITY300はALL NEWでしかもTRICITYシリーズとして最上位モデルですので、これまでのLMWの集大成であるとの気持ちで開発に取り組みました。

そこでNIKENに搭載して好評のステアリング機構「LMWアッカーマン・ジオメトリ※1」を始めとするヤマハ独自のLMWテクノロジー※2を受け継ぎながらも、TRICITY300の特性に合わせた変更、工夫、ブラッシュアップを施し、さらにスタンディングアシストをヤマハの市販車モデルとして初めて採用しました。

※1
リーンし、なおかつ内外輪差が生まれるフロント2輪が、常に旋回方向を向く設計を成立させ、同心円を描く滑らかな旋回が可能とするヤマハ独自の構造
※2
パラレログラムリンクを用いたサスペンションと操舵機構で軽快感と安定感の両立に貢献する技術

ライダーの使いやすさを徹底追求した
スタンディングアシスト

ヤマハ市販車モデルとして初採用となるスタンディングアシストは、停止している車両のリーニング機構の動きを制限しながらも、サスペンションの伸縮機能は維持したままにすることで、停車時や押し歩きの時などに車両の自立をサポートする機能です。
スタンディングアシストの作動は、車速、スロットル開度、エンジン回転数などにより細かく設定されています。信号待ちなどで停止した際に手元のスイッチを押すとアシストが作動、信号が青に変わったらそのままアクセルを開けることで自動で解除され、スムーズに発進できます。作動状態は、メーター内のインジケーターと音(作動時「ピ」、解除時「ピピ」)で確認できます。

この機能は何よりもライダーの使いやすさを重視して作り込みました。使いやすさといっても色々あります。たとえば、操作時。ハンドル左側の手元にスタンディングアシストをONにするスイッチがあるのですが、その位置や形状、そして押した時の節度感は、かなり細かく作り込んでいます。

さらに停車してスタンディングアシストをONにした後、再度アクセルを開けてアシストが解除されるまでのタイミングは、操作するライダーの意思とシンクロするよう、コンマ何秒というタイミングにまでこだわって、セッティングしています。普通のスクーターやバイクも同じですが、スロットルをこれくらい開けたら、これくらい発進するだろうという、乗り手の感覚をとても大切にしているのです。

その感覚を言葉で言い表すのは、とても難しく、スポーツモデルなどでドライバビリティ(操作性)を説明する際にリニアリティ(入力した通りに動くさま)という言葉が出てきますが、スタンディングアシストでもまさにリニアリティを、人間の感性にうまくフィットさせるよう作り込んでいます。

スタンディングアシストの用途としては、例えば信号待ちで停止している時にスタンディングアシストをONにしていただくと、車両のバランスが取りにくいというストレスから解放され、シンプルにその快適さを感じていただけると思います。

さらにはタンデムの際、スタンディングアシストをONにした状態で、後ろに乗ってもらうと、車体の挙動が抑えられ、ライダーが踏ん張ることなく、安心してパッセンジャーを乗せることができます。

スタンディングアシストは、(1)車速10km/h以下、(2)スロットル全閉状態、(3)エンジン回転数2,000r/min以下、(4)スタンディングアシストスイッチがONのすべてを満たしている時にシステム作動状態になります。作動状態はメーター内インジケーターに表示されます。車両単独で完全に自立するシステムではありません。また停車時に車体に過度な力が加わると、片輪が浮いたり、スタンディングアシストディスクが滑り車両が転倒する恐れがあります。停車位置の路面状況に注意が必要です。押し引きの際は必ずエンジンを停止してください。

ライダースペースを確保するため専用チューニングした
LMW機構

今回292cm3エンジンを搭載していますので、TRICITY125やTRICITY155よりも速度域が高くなります。そこで、よりスムーズなリーニングが求められることから、NIKENに搭載して好評のステアリング機構「LMWアッカーマン・ジオメトリ」と呼ぶレイアウトを採用し、新たに専用設計しました。自然なハンドリングで安定感としなやかさを併せ持つ、上質な乗り心地を実現しています。

操舵軸とリーン軸をオフセットする基本的な機構は、NIKENと同じ考え方に基づいて設計しています。ただパラレルアームの角度をNIKENよりも立て、ライダー側にフロントフォークがあまり上がって来ないよう周辺の各パーツのサイズや位置を設定しています。と言いますのも、TRICITY300はコミューターモデルなので、足を投げ出しゆったりしたライディングポジションが取れるよう、ライダーのスペースを確保したかったからです。

ヤマハモーターサイクル初採用
ラチェットレバー式リアブレーキロック

TRICITY125やTRICITY155の頃からずっと、ラチェットレバー式のリアブレーキロックを搭載したいと考えていました。TRICITY300では、車格が少し大きくラチェット機構の取り付けスペースが確保できたことから、念願が叶いようやく採用に至りました。

ヤマハモーターサイクルとして初めてのラチェットレバー式ということで、ロックをかける時に手に伝わってくるノッチの感覚やノッチの幅、さらには周辺の外装含めて、指をレバーにかけた時のスペース、掛け心地といった細部にまで、実験のメンバーがこだわり、作り込んでいます。

欧州向けスポーツスクーターXMAX300の良さを譲り受け
さらに磨き上げたエンジン&ボディ

エンジンは、欧州向けスポーツスクーター「XMAX300」をベースに、専用FIセッティングなど、燃焼速度の向上やロス馬力の低減を図る仕様の最適化を施し、心地よい加速フィーリングや快適な乗り心地を実現させています。

実は、XMAX300の開発段階からゆくゆくはTRICITY300にも使いたい、つまりフロント2輪に搭載しても余力があるエンジンとして当初から開発を進めていたのです。そのため同じクラスのスクーターと比べて加速性能に静粛性、そして上質さがしっかり表現できるエンジンに仕上がっています。

またXMAX300は、ライダー居住性や収納力の高さが評価されていることもあって、シートやエンジンカバー、収納ボックスなど、一部共通のパーツもありますが、フレームは新設計です。実は、ボディ設計の担当者は大いに苦労しました。と言うのも「強度や剛性はしっかり確保しつつも、なるべく軽くしたい」という相反するオーダーを出し、しっかりその要件を守ってもらったからです(笑)。

そんな紆余曲折を経て完成した新作フレームは、細径パイプと板材を組み合わせて、強度と剛性のバランスを最適化し、安定感としなやかな乗り味を実現しました。ステアリングパイプとフレームを接合する部分は箱型として剛性を確保。さらにフレームへのエンジン懸架はリンク式で、懸架ポイントを最適化することでライダーに伝わる振動の低減に貢献しています。

フロント2輪・LMWだからこその安心できる上質なハンドリング
乗って楽しい爽快な仕上がり

TRICITY300はフロント周りにLMW機構があります。だからこそ「その重さを活かすことでフロントの接地感が増し、フロント2輪が路面をしっかり捉えていることが分かるようなハンドリングにしたい」という開発メンバーの想いがありました。
そこで操縦安定性の担当者ともすり合わせながら、「フロント2輪がしっかり路面に接地していることが強く感じられる、そして旋回時には、とてもしなやかで質感の高いハンドリング、これまでのヤマハ史上最高の安定した上質なハンドリングを目指そう」という目標を掲げ、作り込んできました。
そのため、ハンドルから地面に伝わるタイヤまでの間に設けているLMW機構のフリクションやロスの全てを一つ一つ事細かく見直し、作り込みました。フリクションが全くない、というのも良し悪しでして、その辺の加減やバランスを見極めながら開発を進めました。

また、「しなやかな」というところに大きく寄与してくるのがタイヤです。今回、ブリヂストンさんに協力いただいて、剛性バランス・コンパウンドをLMW専用に最適化した14インチタイヤ「BATTLAX SC」を専用開発。優れたグリップ性、耐摩耗性、ウエット性能を備えています。
このタイヤが、悪路を走った時の追従性であったり、高い走破性に大きく寄与しているのです。

また14インチタイヤは、デザイン的にも大きなポイントです。ただし、タイヤが大きいとライダーが足を投げ出して乗るスペースに干渉してきてしまうので、設計担当者は大変苦労しました。どこにライダーを座らせるか、どうやってタイヤをストロークさせるか、パラレルアームの角度も何度も変えて奮闘した結果、ライダースペースを確保できたのです。

ライフスタイルを豊かにする
新しいコミューティング

TRICITY300のコンセプトは、“The Smartest Commuting Way“、つまり“賢い移動手段”です。なかでもバイパスを使う中長距離の通勤に、ぜひとも使っていただきたいですね。郊外からある程度の時間をかけて電車で通勤されていらっしゃる方にもオススメです。もちろんツーリングでも十分に楽しい爽快な仕上がりになっています。

社会を取り巻く環境は日々変化していますが、TRICITY300の開発を計画し始めた当初から、TRICITY300がお客さまのライフスタイルそのものを変えるモデルになったらいいなと考えていました。満員電車に揺られ、ストレスを抱えて会社に行くよりも、TRICITY300で通勤すれば、自由な時間が多少なりとも増えると思います。そうして生まれた時間を他の色々なことに使い、毎日の生活を豊かにしていただく、そんなきっかけにしていただきたいですね。何より、通勤が間違いなく楽しくなりますよ!


ヤマハ発動機株式会社
プランニングデザイン部プランニングデザイン1G
安田 将啓さん

TRICITY300のデザインコンセプトは“My Right Arm”、つまり信頼できるビジネスパートナーのようなパーソナルモビリティの姿を目指しました。

14インチのフロントホイールで
安定感を視覚的にも表現

TRICITY300の大きな特徴である安定感を視覚的にもきちんと表現したいと、フロントの足周りの見応え感にこだわりました。デザイン企画の立場としては、足回りのがっちり感や強さが安定感を生み出し、乗り物としての魅力を高めると思っていましたので、「なるべく大きいタイヤにしたい、しっかりした足回りにして欲しい」という要望を出しました。とは言え、大径ホイールの採用は、レイアウトの自由度や重量など、さまざまな要素が絡んできます。

このクラスのスクーターでは13インチのフロントタイヤが一般的ですが、機能的にも性能的にもメリットがあり、最終的にTRICITY300では14インチのタイヤを採用しました。大径ホイールの採用は、デザインとしては譲れなかったポイントで、設計の皆さんには、とても苦労をかけたと思います。

逆台形シルエットの腰高な軸感で
軽快な走りをビジュアル化

長年二輪車を手がけてきたヤマハが手がけるLMWとしては、安定感に加え、運動性能やツーリングに出かける楽しさ、臨機応変にフットワーク良く動ける軽快さといったポイントもきちっと視覚的に打ち出したいと、アクティブに動けそうな腰高な軸感を意識し、サイドからのシルエットを逆台形にしました。

またフロントカウルの下からフロントフェンダーにかけてLMW機構が稼働する部分は、リーンしたり、ストロークする様子を感じさせる空間を設け、軽快感も演出しています。

さらに真正面やサイドから見たときに、ライダーを中心としたマスの集中と、“ハ”の字のスタンスによって、LMW特有の踏ん張り感、路面変化に対応できそうな凝縮感を表現しました。加えて、サイドから見ていただくと、エンジンからリアの駆動輪にかけて、パワートレインが車体に食い込むようなデザインとし、292cm3エンジンによる推進力も表しています。

TRICITYアイコンを継承しつつ新しさも演出

TRICITY125やTRICITY155に受け継がれてきたTRICITYアイコンをどの程度継承し、どう新しさを出していくか、頭を悩ませました。
そこで、TRICITY125、155で実績を重ねてきたフロントフェイスの特徴的な“Y字”のモチーフには、エアロマネジメント的な機能を加えました。
また真正面から見ると逆三角形を2つ重ねたように見えるのですが、このレイヤードトライアングルコンストラクションは、LMW機構の左右幅を底辺とする下側の逆三角形にボリュームを持たせて安定感を表現し、もう一方の逆三角形は、よりキュッと幅を抑え、引き締まった小顔に見える美しいシルエットとすることで、軽快性の表現につながるボリュームのバランスを図っています。

車体に調和した
ラチェットレバー式リアブレーキロック

ヤマハのモーターサイクルとして初めて採用するということもあって、ラチェットレバー式リアブレーキロックについては、開発初期段階でかなり議論を戦わせました。操作性の良さは大切ですが、どういう仕組みならデザイン的に対処できるのか、最後の最後まで議論を重ねましたね。
実用的な機能の部分ではありますが、見栄えも重要でしたので、開発や設計の担当者と相談し、最終的に車体に調和するようにデザインしました。

スーツ・革靴のコーディネイトに適した3カラーを採用

「スーツ、ジャケットにパンツ、足元は革靴で」というスタイルで乗られるユーザーさんをイメージし、カラーリングを設定しました。スクーターのメリットの一つが、「ギアチェンジが不要で、革靴でも気軽に乗れること」だと思います。ですので、ジャケットとパンツだったり、スーツだったりというスタイルにふさわしいカラーを採用しています。

ブルーイッシュグレーソリッド4 (グレー)
少しオフに寄り、街中を軽快に駆け抜けるアクティブな印象を演出しました。ホイールやフロントフェンダーといった動きがある部分にブルーのアクセントが動いて見えるように配することで、足回りの大きさ感や、軽快感を表現しています。

マットグレーメタリック6 (マットグレー)
フォーマルな印象を演出。服装やシーンを選ばず幅広いお客さまに支持されやすいシックなカラーコンビネーションで、安心して長く愛用いただけます。

マットダークグレーメタリックA (マットグリーニッシュグレー)
トレンド感を取り入れて、着こなしのうまさを感じさせるニュアンスカラーを組み合わせました。フォーマルになりすぎない、ジャケットとパンツを合わせたような、カジュアルビジネスなスタイルを意識しています。

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