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開発ストーリー:YZF-R3/YZF-R25

YZF-R3/YZF-R25の開発者インタビューをご紹介します。

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プロローグ

R25(アール・ツー・ファイブ)は、ヤマハが久しぶりに開発した250ccロードスポーツモデルです。1980年代のバイクブームを経験したライダーの方々にとっては懐かしい、ビギナー向けからレースベース車までじつに個性豊かなモデルがひしめき合っていたクラスでしたが、免許制度の変更やバイクを取り巻く環境の変化、ライダーの嗜好の変化によって、ヤマハとして長らく国内市場にニューモデルを投入していませんでした。

しかしここに来て250ccロードスポーツモデルは、新たなミッションを負う重要なカデゴリーとして注目を集めています。日本を中心とした先進国と、東南アジアや南米といった新興国の両方にアプローチすることができる新たな世界戦略車として、その存在感を高めているからです。

R25は、その重要なカデゴリーに投入する新規のモデルとして開発しました。コンセプトは「毎日乗れるスーパーバイク」です。スーパーバイクといってもレースカテゴリーの車両のことではありません。スーパーカーのバイク版と捉えていただけると分かりやすいと思います。

1997年、ワインディングロードにおける「最高のエキサイトメント」を提唱し、スーパースポーツの新基軸を示したことで高い評価を受けたYZF-R1にはじまるYZF-R6やYZF-R7などの“Rシリーズ”はヤマハ・スポーツモデルの代名詞となりました。R25は、そのRシリーズの一画を占める250ccロードスポーツモデルです。この新たな世界戦略車は、仕向地ごとにパフォーマンスやスタイルを検討するのではなく、我々が考える“最高の一台”を作り上げ世界に向け発信します。その結果、もっとも多くの国と地域で、もっとも幅広いキャリアのライダーにアピールする “Rシリーズ”となりました。とりわけ先進国における250ccクラスは、その注目度の高さとヤマハモデルに対する期待が高まっていたこともあり、日本をはじめとする先進国で通用する走行フィーリングを造り込みました。

また250ccカデゴリーは、先進国では通勤や通学に使える移動手段であるとともに、軽量コンパクトな車体と扱いやすいエンジン特性を持っていることからツーリングからスポーツライディングといった「バイクに乗る楽しさ」を幅広いユーザーにアピールし易いモデルでもあります。

だからこそ“毎日乗れる”と“スーパーバイク”という対極にあるバイクの魅力を合体させ、ひとつのパッケージにまとめ上げる必要があったのです。もちろん、どちらも妥協することなくともに高いレベルを達成できたと、自信を持っています。

R25はライダーの操作に対して素直に反応し、同時に走行中の安定感も高いため、ビギナーでも安心してライディングを楽しんでいただけます。またビッグバイクを経験したベテランライダーが乗ってもワクワクする気分を味わっていただけるよう、エンジン特性と車体のフィーリングにもこだわりました。それらは250ccロードスポーツモデルのイメージを変えることができたと自負しています。是非、R25でバイクの楽しさを存分に味わって欲しいと思います。

エンジン

180度クランクを採用した排気量249cc水冷4ストローク直列2気筒4バルブエンジンは、R25のために新たに開発しました。クロスプレーン型クランクシャフトエンジンの開発にも携わったエンジン担当者は、250ccロードスポーツモデルのエンジンのフィーリングとはどういうものか、それこそ単気筒や4気筒、直列やV型、360度/270度/180度のクランク角と、じつに多様なエンジン形態を徹底的に検証しました。そこで採用したのが180度クランクの直列2気筒エンジンだったのです。

もちろんWR250Rなどの既存のエンジンを使用することも検討しました。しかしR25は燃料のクオリティや路面状況が著しく異なる新興国でも販売することから、そのような環境でも高いパフォーマンスを発揮するとともに、ワクワクするエンジンフィーリングを実現するという目標をクリアするため、軽量コンパクトな、2気筒エンジンをゼロから設計することを選びました。 180度クランクエンジンのメリットは、ピストンが上下するときにクランクケース内の圧力変動によって発生するポンピングロスが小さくできること、そして振動をキャンセルするためのバランサーが1本で済むことから、エンジンの高出力化とコンパクト化、及び軽量化が図れることにあります。

それらの特徴を活かしながら、Rシリーズのロードスポーツ・エンジンとして、エンジン回転が上昇したときの高揚感、ワクワクするようなフィーリングを目指しました。じつはエンジンには主に4種類の振動が発生します。それはどのエンジン形態でも同じで、気筒数やクランク角、バランサーによってそれらを打ち消すことができます。そのなかでR25が採用した位相角180度クランクは、1本のバランサーをセットすることで3種類の振動をキャンセルすることが出来ます。そして残る1種類の振動を利用することで、エンジンを回したときに高揚感のあるフィーリングとしました。これはRシリーズの兄弟車/海外仕様のスーパースポーツモデルであり、180度クランクを持つ直列4気筒モデル「YZF-R6」に近いフィーリングです。

もちろん、残った1つの振動も消すことができます。4つのピストンをすべて違う位相にしたクロスプレーンクランクシャフトと1本のバランサーを持つ「YZF-R1」や、2本のバランサーを持つ「FJR1300」のエンジンはそれぞれの方法で4つの振動すべてを消しています。しかしR25は残った振動を利用したことで「YZF-R6」に通じるエンジンキャラクターを作り上げているのです。

“毎日乗れる”というミッションをクリアするには、低中回転域の扱いやすさにもこだわりました。高回転域での高揚感を求めてクランクは軽量化されていますが、ACM(発電用マグネトー)の重量配分を最適化することで低中回転域での扱いやすさも確保しています。

また低中回転域での扱いやすさを増すため、燃焼室内での燃焼にも注力しました。混合気が吸気バルブを通り燃焼室に入るとき“タンブル”と呼ばれる混合気の縦渦を積極的に発生させています。これにより燃焼速度が速まり、しっかりと燃焼することで扱いやすいエンジン特性を作り上げました。しかしタンブルを発生させる為の吸気管路は同時に吸気抵抗も生むので高出力を発揮する時には邪魔になります。そこで、この相反する事象を両立することが出来るポート形状を作り込みました。

さらにR25ではアクセルグリップ内に収められる、アクセル開度を決めるプーリーと、それに合わせて混合気の空気量を調整するフューエルインジェクション(FI)用スロットルボディのプーリーを、ともにプログレッシブプーリー(楕円プーリー)としています。真円プーリーを使うとアクセル開度に対し空気の流入量は正比例して増えていきます。対して楕円プーリーを使うことでアクセル開度に対して、プログレッシブに空気の量を調整できるのです。というのも低中回転域での扱いやすさを求めると吸入量よりも吸入スピードがポイントとなります。その領域でアクセルを開けすぎると吸入スピードが落ちるので、スロットルバタフライの開度を最適化し混合気の吸入スピードを高めることで扱いやすさを向上させました。ヤマハ電子制御スロットル(YCCT)など電子デバイスを持つモデルであればプログラムで対応していますがR25ではプログレッシブプーリーを使うなどにより理想とする低中回転域での扱いやすさを生み出しています。

電子デバイスに頼ることなく幅広いシーンで扱いやすく、かつハイパフォーマンスを発揮しています。目の前に立ちはだかる課題に対し知恵と工夫を凝らし、丁寧にクリアしていく。R25のエンジンはまさに、そうやって作り込まれ、そしてクラス最高レベルの出力と操作性を実現することが出来ました。

フレーム

エンジン同様、フレームや足周りに関しても革新的な技術を用いている訳ではありません。当たり前のことを丁寧に造り込んでいきました。現在ヤマハは250ccロードスポーツモデルをラインアップしておらず、ベースモデルが無いことから開発初期の段階では構造解析と実験ライダーからのフィードバックにより試行錯誤を繰り返していました。

そのなかで我々が目指したのは、軽量でスリムなフレームです。軽量コンパクトな2気筒エンジンの特性を活かしながら、ワクワクするエンジンフィーリングをしっかりと感じ、そして支えられるフレームとするため、スチール鋼管のトラスフレームとしました。スチール鋼管をトラス状に組むことで、フレーム幅を抑えることができると同時に求めるフレーム剛性と適度なしなやかさを得ることができたのです。

開発初期においては、R25として最適なディメンションと剛性や重量のバランスを模索しホイールベースやエンジン搭載位置など、車体の根幹に関わる部分がドラスティックに変わっていきました。解析技術や机上検討によって導き出した数字をベースにしながらも、それと実験ライダーの感覚を摺り合わせ、それを再び数値化して再度実験ライダーが確認する。その繰り返しでした。ハンドリングやエンジンのフィーリングなど、それらを数値化するのはとても難しいのですが、一つ一つ丁寧にチューニングしていく。そういった部分では、じつにヤマハらしい手法で開発を進めていきました。

その開発過程において何よりもこだわったのは軽さです。理想的なパワーとフィーリングを手に入れたとはいえ、排気量250ccのツインエンジンのパフォーマンスを最大限に引き出すには、車体は軽くなくてはなりません。開発スタッフは1グラム単位で軽量化を達成しました。それは跨がった瞬間に感じて頂けると思います。

またマスの集中化と乗り心地の良さを求めて、リアサスペンションはリンクを廃したモノクロスサスペンションとしました。リンクを無くしたことでリア周りの部品点数削減に貢献し、かつ従来リンクがあった場所にマフラーのチャンバー部をレイアウトすることで軽量化とマスの集中化を果たしました。長いリアアームやサスペンションレイアウトを最適化することでリアサスペンションのストローク全域で作動性が良く、優れた路面追従性と乗り心地を実現しています。コーナーリング時ではしっかりと踏ん張り、スポーツライディングも十分に楽しむことができるセッティングとしました。

デザイン

デザインコンセプトは“R-DNA”。ヤマハ・スポーツバイクの代名詞であるRシリーズのデザインを継承し、誰もがスーパースポーツモデルであると一目で分かるデザインを追求しました。したがって、これまでYZF-R1やYZF-R6が採用してきた二眼ヘッドライトやサイドカウルのレイヤー構造を踏襲しています。さらにはMotoGPマシン/YZR-M1が採用するセンターダクトも受け継ぎました。

そしてR25は、2014年11月初旬にイタリアで開催されたモーターサイクルショー/EICMA(ミラノショー)でヤマハが発表した「新型YZF-R1」を彷彿とさせるフロントマスクを採用しています。“ヒドゥン・アイ”と呼ばれる、ある角度から見ると二眼ヘッドライトが装着されていないような、ヘッドライト上部がオーバーハングした睨みの利いた表情は、レースに出場したときヘッドライトを取り外してもマシンイメージが変化しない、新型YZF-R1がサーキットに特化したコンセプトに変わったことを表現しています。

R25は、これまで培ってきたRシリーズの“R-DNA”と、新型YZF-R1に課した新しい“R-DNA”の両方を持ち合わせ、双方を橋渡しするモデルでもあるのです。だからこそ、佇む姿は紛れもなくRシリーズの血統を受け継ぐモデルと一目で分かり、なおかつモダンさを兼ね備えているのです。

さらに、「毎日乗れる」と「スーパーバイク」という相反コンセプトを両立させるために、各部にデザイン上の工夫を凝らしています。 タンク上面を可能な限り高くすることで、相対的にハンドル位置をより低くスポーティに見せることや、フロントカウル先端からスクリーン周りに掛けては 大きなハンドルの切れ角をかわすことで抑揚あるデザインとしています。

楽で使い勝手のよいポジションでありながら躍動感あるスタイリングを実現できたのは、フロントタイヤに荷重が掛かっているかのように見えるマスフォワードのサイドカウルのデザインと、切れ上がった軽快なテール周りと言った“Rシリーズ”特有のプロポーションを継承するなど、細部へのこだわりと工夫があるからなのです。

またR25はブルー、レッド、ブラックをラインナップしますが、この3つのカラーはグラフィックを含め世界共通です。これまで仕向地毎にカラーやグラフィックを誂えていましたが、世界共通のビジュアルとすることで、一貫したヤマハイメージを構築しようというのが目的です。各国の嗜好や文化の違いによりとても苦労しましたが、新型YZF-R1ともイメージを共有したことで、ヤマハの最高峰モデルを手にしている満足感を感じて頂けると思います。

エピローグ

R25に求めたのは高揚感です。R25に乗りアクセルを開けるたびに、コーナーをクリアするたびにワクワクして欲しい。それをビギナーでもベテランでも、新興国のライダーでも先進国のライダーでも、誰が乗っても感じて欲しいのです。そんな気持ちでR25を造りました。

カタログスペック的にライバルたちに勝っているだけでなく、それよりも乗り比べていただければ違いは明確です。R25が初めてのバイクという方は他に比べるモノがありませんが、きっと初めてとは思えないほど気持ち良く走れるはずです。また様々なバイクを経験してきたベテランライダーの方であれば、いままでの250ccバイクとの違いはもちろん、より排気量が大きなバイクと乗り比べても際立つ、R25のワクワクする乗り味を感じて頂けると思います。そのワクワク感は、ワインディングだけでなく、いつもの交差点を曲がっただけでも感じられるでしょう。

またヤマハのブランドスローガン「Revs your Heart/レヴズ ユア ハート」の“Rev”とはエンジン回転を上げることや、ワクワクさせること、気持ちが高ぶらせることを表現しています。R25は、エンジンが高回転まで回るフィーリングとそのときのビート感や排気音、車体の応答性などスポーツバイクとしての高いポテンシャルによって、ワクワクや気持ちの高ぶりを感じることができる、まさに「Revs your Heart」を地で行くモデルです。私たちが考える“REV/レヴ”を、R25で感じて頂きたいと思います。

宮部敏昌 Toshimasa Miyabe

入社後、アセアンモペットの車体設計プロジェクトチーフを担当したのち、XJ6やFZ8などスポーツモデルの開発をするなど、先進国と新興国の両市場の開発経験を持つ。YZF-R25はプロジェクトリーダーとして携わった最初のモデル。

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