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55mph - 北風に吹かれてナイトライド

冬の夜でなければ感じることのできない自由がある。ひとりの女性ライダーとXSR900によるフォトストーリー

冬の夜でなければ感じることのできない自由がある。ひとりの女性ライダーとXSR900によるフォトストーリー

モデル/朱香  写真/安井宏充

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今夜はこの冬一番の冷え込みだという。

その冷たく澄んだ空気が周囲すべてのものの実存感を高めていた。
フューエルタンクの鈍い光沢、オイルドレザーのライダース、ライトアップされたランドマーク、特別な装飾が施されたショーウインドウ……スロットルを開けるとそれらが心に沁みるようなリアリティで迫ってくる。

街はクリスマスの予感にやや浮き足立っている。
でも、いまのわたしにはロマンチックなストーリーの映画も、ワインも、ヒールの高い靴も関心の外だった。
今夜、XSR900のシートから見る風景にはそれ以上の魅力があったから。

目の前の信号が変わり、交差点を左折して賑やかな大通りへ。
キャンディーのような灯りが黒塗りのタクシーのボディをゆったりと滑っていくのをうっとりと眺めている。
わたしとXSR900はそのタクシーと共に高層ビルの谷間を流れる光の河の中にいる。
歩道には強い北風にさらされ、厚いコートに潜り込まんばかりに身をすくめて歩く人々。
次々と吐き出される白い息がここからでもはっきりと見て取れる。
わたしも寒い。きっとその中の誰よりも。
でも、悪い気分ではなかった。
アクティブな意志決定によってもたらされたわたしの寒さは、沿道の人々とは別の性質のもののように思えた。北風に凍えることと引き換えに満たされていく何かがあるのだ。
きっとその正体を知りたくて、わたしはあてどなくXSRを走らせている。

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賑やかなを市街を抜け、湾岸へ向かう。
埠頭から伸びる大きなループ橋を駆け上がると北風はいっそう強く吹いた。
顎をジャケットにうずめ、膝で強くタンクを挟み付けることで何とかスピードを保っている。

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美しい夜景を眼下に見下ろして走る冬のライダー。
それはオートバイに乗ることの自由が濃縮された美しい光景だった。
ようやく渋滞から解放された直列三気筒がささやく。

「あなたはどちらの世界へも自由に行くことができるのだ」と。

北風に吹かれてナイトライド。
今宵のわたしは、冷たく温かい、いつもより少しだけ自由なオートバイを走らせている。

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XSR900

水冷3気筒エンジンを搭載するスタンダードモデル、MT-09をベースに「ネオ・レトロ」をテーマにしたスタイルを採用。トラクション・コントロール・システムやアシスト&スリッパークラッチといった技術も新たに追加され、過去と未来が融合する新しい価値観をもった一台として人気を博している。
XSR900製品ページ

ライディングギア協力

株式会社ワイズギアnew window

YJ-17 ZENITH-P 23,760円(税込)
※価格は2016年12月現在。詳細はメーカーサイトを御確認下さい。

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K-0672 アンフィニッシュドジャケットII 98,000円(税別)、KL-2246 ストレッチフィットパンツ 17,000円(税別)、K-4530Z モカシンブーツ 42,000円(税別)
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