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55mph - 2015 EICMA ミラノショー ヤマハブースから想像した未来のYAMAHA

欧州最大のモーターサイクルショー「EICMAミラノショー」において、ヤマハは存在感を大きく強めている。プレスカンファレンスやブースから、未来の“YAMAHA像”をのぞき見する。

欧州最大のモーターサイクルショー/EICMAミラノショー。そこでのヤマハは、大げさではなく、主役的存在感を放ち続けている。近年はSNSやデジタルコンテンツを駆使したエッジの効いたプロモーションと魅力的なニューモデル攻勢によって、さらに存在感に拍車がかかった。そのプレスカンファレンスやブースの雰囲気から、未来の“YAMAHA”をのぞき見する。

文・写真/河野 正士

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 EICMAにおけるヤマハは、欧州ブランドのような地元感というか、いまやなくてはならない存在になっているというか……ちょっと他の日本メーカーとは違う雰囲気を醸し出しています。 EICMA(エイクマとかアイクマと呼ばれています)とは、毎年11月上旬に開催されるバイクの見本市。翌年のニューモデルが数多く発表されるモーターサイクルショー的存在であると同時に、いわゆるトレードショー/二輪周りの企業間取引の最前線でもあります。したがって世界各国からメディア関係者や取引業者、そして純粋なバイクファンが多数集まるのです。2015年の数字が出ていませんが、2014年を例に出すと28万平方メートルの会場に62万8000人が来場。東京ビッグサイトで開催された東京モーターショーが展示面積約8万平方メートルで9日間の来場者(EICMAは4日間)が約81万人だったことを考えると、その規模を想像して頂けるでしょう。

 通常プレスカンファレンスは、EICMAウィークの火曜日と水曜日のプレスデイにEICMA会場で開催されるのですが、ヤマハは毎年月曜日の夜に、EICMA会場と違うミラノ市内のイベント会場にて盛大なプレスカンファレンスを行います。発表するニューモデルの世界観を視覚的にもしっかりと表現しつつ、その登場を劇的に演出するには、30分単位で慌ただしくニューモデルをアンベールしていく一般的なプレスカンファレンスよりもこういった手法が効果的でしょう。もちろんコストは跳ね上がります。それを押してでも開催するからには、それ相応の価値があるとの判断が下っているのでしょう。ここ数年は、この盛大なプレスカンファレンスをインターネットでライブ配信し、世界中のヤマハファンと共有できることから、その価値が大きく高まったことは言うまでもありません。

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 というわけで、EICMAでのヤマハはいつも気合いが入っているのですが、今年はさらに気合いが入っていました。発表されたのはオフロードコンペティションモデル「WR450F」と、そのマシンをベースにしたラリーマシン「WR450F Rally」を発表。また日本では既に発表されている「MT-03」も欧州では初お披露目となりました。

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 そしてプレスカンファレンス終盤に登場したのが「MT-10」と「XSR900」でした。MT-10は2015年式YZF-R1のエンジンとフレームをベースにネイキッド化したマシン。“MT=マスター・オブ・トルク”であることから、YZF-R1が抱くクロスプレーン型クランクシャフトエンジンが生み出す“スイート”なトルク特性はマスター・オブ・トルクの頂点にあると考え「MT-10」が生まれたそうです。

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 また「XSR900」はMT‐09と同じクロスプレーン・コンセプトの3気筒エンジンを搭載するネオクラシックスタイルのネイキッドモデル。欧州では既に、クロスプレーン・コンセプトに基づいて開発された並列2気筒エンジンをMT07と共用するネオクラシックマシン/XSR700を発表していることから、「XSR900」の発表で“XSRシリーズ”の拡充が図られたわけです。

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 興味深いのは、オフロードコンペティションモデルを除く3台のニューモデルが“MTコンセプト”、またはそこから派生した“Faster Sons/ファスター・サンズ”というヤマハ・ヨーロッパが積極的にプロモーションを展開する、言ってみれば“ヤマハの未来像をイメージさせる製品やプロモーション”から生まれてきたことです。

日本にはその詳細が伝わってきていませんが、ヤマハ・ヨーロッパはこれまでに斬新なプロモーションを数多く展開してきました。SRやXJR1300、VMAXといったスポーツヘリテイジカデゴリーのマシンをベースにカスタムビルダーがカスタムバイクを製作する「YARD Build/ヤードビルド」は、いま欧州で人気のカスタムシーンに誰よりも早くアプローチしました。またMTシリーズのプロモーションとして現在も進行中の「The Dark Side of Japan/ザ・ダークサイド・オブ・ジャパン」は、“ダークサイド”というインパクトのある言葉を使いながら、今までとは違う解釈の新しいバイクシーンを造っていこうという試みであるし、「Faster Sons/ファスター・サンズ」はその試みをさらに発展させ、より具体的にヤマハの次期スタンダードモデルを追求していこうという試みであると解釈できます。MTシリーズの拡充および、XSRという新世代のコンポーネントを使ったネオクラシックモデル=ネオスタンダードモデルの登場により、いままでゲリラ的に展開されていたそれらのカッティングエッジなプロモーションが、すべて“次世代ヤマハモデルの追求と模索”であるということが、徐々に浮き彫りになってきたように感じます。

 欧州のメディア関係者からもこういったプロモーションや、ニューモデルに対する評価が高いのはもちろんヤマハは次に何をやって来るのかと、常にその一挙手一投足に注目が集まっています。レースシーンやスーパースポーツカデゴリーを中心としたハイテクノロジーの分野と、「YARD Build/ヤードビルド」や「Faster Sons/ファスター・サンズ」といったプロダクトに紐付いた“コト”における分野の両輪でバイクシーンを牽引しているのはヤマハだけかもしれません。バイクにおける“テクノロジー”と“コト”によって、ヤマハが今後、どんなバイクシーンを想像していくのか、その期待度をさらに高めた2015年のEICMAでした。

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 イタリアのバイク文化を育んでいるミラノの街中を散策してみました。そこには古くからこの街を形作ってきた街並みや道路、そして人々と生活を共にするバイクやスクーターの姿がありました。

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河野 正士 (こうの・ただし)

二輪専門誌の編集部員を経てフリーランスのライター&エディターに。現在は雑誌やWEBメディアで活動するほか、二輪および二輪関連メーカーのプロモーションサポートなども行っている。ロードレースからオフロード、ニューモデルからクラシック、カスタムバイクまで好きなモノが多すぎて的が絞れないのが悩みのタネ

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