その他網漁
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
打瀬網漁
北海道野付湾
帆を張り、網を曳く。手前の棒が網の目印
3枚の帆を張り風の力を利用してアマ藻場に棲むシマエビを掬うように網で捕るシマエビ漁。世界遺産に指定された知床の山並みを背に、初夏の野付湾では打瀬船による北海シマエビ漁が最盛期を迎えます。
オホーツク海に突き出た野付半島。その湾内には藻場が広がり、夏と秋には打瀬船による北海シマエビ漁が行われます。このシマエビ漁は和船に3枚の帆を張り、風の力を利用して網を曳く漁です。
「シマエビ漁に使われるのは和船と100馬力前後の船外機。網を曳く時は風を利用しますので、船外機は移動する時だけに使います」
そう話すのは尾岱沼でシマエビ漁を営む豊田幸夫さん。風がない日は漁にならないというシマエビ漁ですが、この自然の力を利用し、漁期を設けているからこそ現在でも漁が続いているといいます。
「湾内にいるシマエビはアマ藻場にいるので、船外機やディーゼルの動力を使うとエビの住処となっている藻場が傷ついてしまうんですよ。それにエビは警戒心が強いので、音がしない帆を使ってゆっくりと網を曳いた方が、入りもいいと思いますね。なんだかんだいって風任せの漁なんですよ」
風がない時は竿を底に突き立てて網を曳くことを繰り返し行いますが、この作業がいちばん体に堪えるようで「風任せ」という言葉には黒田さんのこれまでの経験が凝縮されています。
「1日の制限は80kgなんだけど、朝から昼までやって、70kgも取れればいい方。まあそれだけ根気のいる仕事だからね。船外機もおなじで漁をしている時には使わないんだけど、気温の低い時でも一発で始動できる、いざというときに備えての根気が必要なんだよ(笑)」
船外機に根気を求めるほど漁のパートナーとして信頼している黒田さん。夏でも気温が一桁という日も珍しくない野付湾ではヤマハ船外機への信頼も厚く、多くの船にヤマハ4ストローク船外機を見ることができました。
シマエビを育むアマ藻場。野付湾内はこのアマ藻場が広がる
帆の力は予想以上に強く、少しでも風が吹けばこのように和船の船底が見える状態になる
9cm以上のシマエビだけが水揚げされる
帆を張るシマエビ漁ではレイアウトがシンプルにできるマニュアルハンドル仕様が好まれる
幸晴丸の船主、豊田幸夫さん。「シマエビ漁は経験と勘、そして情報がすべて」という
北海シマエビ漁を支えるW-27。運搬能力と帆による網曳きを両立させるバランスが求められる