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その他網漁

日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

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イカ底建網漁

北海道沙留

仲間と仕事をこなすなかにも張り詰めた緊張感がある網揚げ作業

北海道はオホーツク海に面した沙留漁港。冬は流氷に閉ざされるこの海では、毎年12月末から3月上旬までは全く海に出ることができない厳しい環境です。そのような土地で6代にわたって漁を営んでいるのが、佐野さん親子です。今回は経験が物を言う、イカの底建網漁に同行しました。

 6代目となる佐野嘉昭さんは、高校卒業後、鹿部の漁業研修所で1年間の研修を受けた後、父、勇二さんの船に乗って漁に出るようになりました。佐野さん親子がメインとする漁はイカの底建網漁。箱状になった網を水深40mほどの海底に沈め、垣網と呼ばれる壁状の網にそって箱網の中にイカが入るのを待つ漁です。佐野さんは最大で4つの底建網を仕掛けています。それを毎朝4〜5人が1組となり、網に掛かったイカを揚げに行きます。
 「毎日網を見に行かなくてはいけないんだけど、時化が多いときは網を上げられないので、箱網についているファスナーを予め開けておいて、イカが逃げられるようにしておくんです。イカは2日以上網の中にいたら死んでしまいますから」(嘉昭さん)。
 この日は嘉昭さんと同級生の加賀飛臣さんと岩淵正照さんの2人と網揚げに向かいました。
 「4年ほど前からイカが増え始めて、いまも増え続けている感触だね。スルメイカが箱(約20kg)で70くらいはコンスタントに揚がります」(嘉昭さん)。
 スルメイカは群れで行動するので、その動きを予測し、さらには潮の向きと強さを読んで網の建て方を工夫するのが腕の見せどころです。
 「潮がなかったら(イカが網に)入らないし、潮が強すぎてもダメ。網の上につけたボンテン(浮力体)が沈むほど潮が強くなったら、仕事にならないからね」(勇二さん)。
 経験豊富な先輩でもある父親の勇二さんの背中を見ながら、嘉昭さんはその勘所を必死で盗んでいる様子でした。
 佐野さんの底建網漁をサポートするのは、昨年の10月11日に進水した宝翔丸(DX-79-OA)。
 「沙留あたりの船だと1.5mくらいのバルバスが一般的なんだけど、それより一回り大きくしました」と大きく突き出たバルバスバウを前に、ご満悦な様子の嘉昭さん。最新の艤装で固められたデッキ上は作業効率も上がり、それは最終的に乗員の安全性を高めることにもつながっているようです。
 10月も半ばを過ぎると北西の季節風が強くなり始め、海に出られない日が多くなります。海に出れば、仲間たちと飄々(ひょうひょう)と仕事をこなす嘉昭さんですが、その裏には常に張り詰めた緊張感をもって自然と向き合う姿勢がありました。

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父親の勇二さんは「出稼ぎしなければならなかった自分たちの頃に比べたら、いまは恵まれている」と語る

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佐野嘉昭さん。自分の工夫や努力が形となって返ってくるのがこの仕事の魅力。迷いは無かった

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網を起こして、魚を揚げる。量が多ければ表情もやわらぐ

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鮮度を保つため、船上での選別作業は迅速に行われる

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近年は漁獲にも恵まれ、この日は約1.5トンのスルメイカが水揚げされた

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バルバスバウが特徴的な宝翔丸(DX-79-OA)。工夫を凝らした最新の艤装は乗員の安全にも繋がる

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