その他網漁
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
定置網漁
青森県大畑町
定置網の網起こしでは、作業員には手際の良さ、船には安定性が求められる
下北半島の津軽海峡沿岸域に位置する大畑町の沖合いでは、西から対馬海流の分流である津軽暖流が東へと流れ込み、寒流である親潮と合流し、豊饒の海を形成しています。その漁場で定置網漁を営む佐藤敏美さんの網起こしに同乗してきました。
大畑の定置網は季節によって漁獲が異なります。10月から12月にかけては、秋鮭、スルメイカ、1月から4月にかけてはヤリイカで、この時期は最たる稼ぎ時。大型のヤリイカは値も良く、2ヶ月間で5000万円もの水揚げを得ることもあります。4月から5月にかけてはサクラマス、さらに6月はマグロやブリをはじめとする中・大型回遊魚、7月から9月にかけては休漁期間です。もちろん、その間は仕事が無くなるわけでなく、新たな網の設計から製造、陸にあげた網の手入れなどを行います。
「海が汚れていると漁獲量は減るのですが、不思議なことにヤリイカだけは逆で、汚れていると思うときほど、網によく入るんです。網を敷置する場所は漁家ごとにローテーションで変えていきます」(佐藤さん)
いってみれば水揚げは時の運。入るときも入らないときもあります。それでも佐藤さんは「入った時の水揚げは大きい。それがこの仕事の魅力ですね」と楽しげに語ります。
どちらかといえば「攻め」よりも「待ち」の漁といえる定置網漁ですが、一般的には乱獲に陥りにくく、環境に優しい漁と評価されています。
佐藤さんはこれまでの個人経営から会社組織として定置網漁を経営していくことを決意。株式会社金亀水産を立ち上げました。さらに2014年の4月には現在の「DX-120-0A」を建造、第六十八金亀丸を進水させました。
定置網の作業現場で、次々と網起こしにまわりながら、会社員となった多くの乗組員の先頭に立って指揮を執る佐藤さん。この日は、漁の谷間ということもあって、あいにく大漁ではありませんでしたが、そこには、大畑の漁業を盛り立てていく気概がみなぎっていました。
網起こしでも積極的に作業をリードする敏美さん
金亀水産では、大畑沖に小型定置を4基設置。次々に網を起こしていく
取材に伺った日は漁期と漁期の谷間のシーズンだったこともあり水揚げも少なかった
アンコウ、サバ、小型のブリやサクラマスがこの日の漁獲
金亀水産の取締役であり、金亀丸の親方、佐藤敏美さん。亡き父から引き継いだ定置網経営で次世代の漁業を担う
2014年4月に進水した第六十八金亀丸〈DX-120-0A〉。定置網漁船として抜群の作業性、安定性で金亀水産の経営を支える