本文へ進みます

その他網漁

日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

MENU

シラス二艘曳き漁

静岡県磐田市

遠州灘で活躍するヤマハのシラス漁船「長久丸」

遠州灘、特に静岡県磐田市沖は全国的に知られたシラスの好漁場。天竜川をはじめ馬込川、太田川など幾つもの河川がこの漁場に栄養分豊富な水を注ぎ込んでいます。夏のある日、この遠州灘のシラス漁に同行しました。

 2013年、遠州灘ではシラス漁の不漁が続きました。地元の漁業関係者の話では「冷水塊が接岸したためではないか」とその原因について語っていました。
 シラス漁に従事する人々は、獲れなければ漁を休んで数日後に再び船を出して群れを探るのだそうです。取材時も福田(ふくで)のシラス漁はそんな日々が続いていました。
 「こんなに獲れない年も珍しいよ」苦笑しながら語るのは福田港の「長久丸」の親方、伊藤和友さん。長年にわたってシラス漁に携わってきたベテランで、いまはご子息の将希さん、峻英さんの2人の後継者とともに出漁しています。
 後継者の2人は焼津の水産高校を卒業後、父親のシラス漁船に乗り込み、修行を積んできました。 「最初に乗り始めたころは父親に怒らてばかりでした。仕事のときはこわい人。そして勘がいい。経験の差かなとは思う。僕たちはまだまだ」というのは手船の船頭を務める将希さん。「もちろん獲れた時は嬉しいけど、シラス以外の漁獲、たとえばタカアシガニ、サメ、マンボウなど珍しいものが網に入っていたりすることがあって、それも楽しいんだよね」とシラス漁の魅力について話してくれました。
 シラス漁は網船と手船の2隻を1ヶ統として漁を行います。通常の出港は午前4時。沖に出るとシラスの群れを探します。経験と勘、もちろん魚探を駆使しながらの作業。ここぞというポイントで網船から網を投入し、片側のロープを手船に預け、2隻で網を曳いていきます。魚群に合わせ、ロープの長さや錘を調整して網を曳くタナを調整しています。
 網を上げるのは約1時間後。手船からロープを網船に戻し、網船の後部デッキに設置されたローラーで網を巻き上げていきます。これを繰り返し行います。
 シラスは鮮度が命。そして、ズタズタになったようなシラスでは商品価値が下がってしまうため、小さいながらも形にこだわり、網を上げてからシラスを樽に移すまで、作業は慎重に行われます。
 遠州灘のシラス漁は3月21日から翌年1月14日までが漁期。夏はまでは不漁が続いていましたが、その後は回復傾向にあるというニュースが編集部にも届きました。遠州のシラスは全国の食卓で人気があることはもちろん、地域の重要な観光資源でもあります。シラスの復調は、地元の人々の生活にも活気を与えているに違いありません。

イメージ

網を入れていく。100〜200mの曳き綱、袖網は約100m、袋網は約50m×10m

イメージ

網船と手船の息のあった連携もシラス漁では重要。長久丸ではそれぞれ親子が船頭

イメージ

船尾からブリッジ横に移動させ袋編みを上げる。船首部のデッキで樽にシラスを移す

イメージ

網袋は左舷側から引き揚げられる。舷の高さも低く抑えられている

イメージ

長久丸の後継者、伊藤将希さん(右)、峻英さん

ページ
先頭へ