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篭壺漁

日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

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タコ籠漁

岩手県久慈市

この日の漁は少ないが大きなマダコが揚がった。海の仕事はやめられない

美しいリアス式海岸が続く三陸海岸の北部に位置する久慈市。目の前には風光明媚な久慈湾が広がっています。この海で漁業を営む浅水満男さんは、今から10年前に久慈漁協の組合員となったばかりの“新米”の漁友さんです。

 午後遅くに、浅水さんを乗せた第三大漁丸(YD-30D-0A)が久慈の港に戻ってきました。舫いを取るやいなや「いまから海に出よう」と記者を誘い、舫を解くと再び船を沖に向け走らせます。この第三大漁丸は先の震災で流された漁船の代わりに、2013年に進水したドライブ船です。
 「このあたりの漁師はどちらかというと北海道(ヤマキ船舶加工)製の漁船を好むんだよ。俺の場合は漁業の規模も小さいし、釣りもしたいから、このドライブ船でよかった」
 夕陽に染まりつつある久慈の湾を周遊するクルージングを存分に楽しんだあと、浅水さんは再び母港の久慈港に針路をとりました。
 翌日は朝の7時30分に出港。浅水さんはこのドライブ船の他に和船を所有し、ウニやアワビの漁も行っています。この日はメインの籠漁。港を出てすぐの海域に浅水さんの籠が2基(1基に50籠)仕掛けてあります。
 漁場に到着すると早速操業を開始。次々と籠を上げていきます。
 「今日は取材だから籠を上げるけど、この時期は仕掛けた餌(鯖の頭)を虫がほとんど食っちゃうので、タコの漁がほとんど無いんだ」
 その言葉通り、籠にはぽつぽつと魚や蟹が入る程度でした。
 それでも籠を上げ、餌を付け替え再び籠を海に沈めていく作業を繰り返す浅水さん。その作業も終盤にさしかかったころ、ようやく大きなマダコの入った籠が揚がってきました。そのタコは素早くネットに入れて、イケスに移します。
 「今日はこれぐらいでいいだろう」
 漁のないこともあってこの日の仕事は早じまいです。
 港に一度戻ったあと、タコを港のイケスに移し替えた浅水さんは再び出港の準備にとりかかります。
 「俺はこれから遊びの時間。釣りに行くんだけどあんたも行くかい?」
 狙いはアブラコ(アイナメ)だそうです。
 「そんなに遅くならないうちに帰るけど。夕食の時間までに戻らないと女房に叱られるんだよ」
 そんな軽口を声にしながら、浅水さんは嬉しそうに再び海に出ていきました。これだけ海の好きな船主の手に渡ったYD-30D-0Aは、たいした幸せ者かもしれません。

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風光明媚な海の風景がますます居心地よくしてくれる

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浅水さんの籠漁。1基に50籠を仕掛けている

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浅水満男さん。経歴10年の“新米”漁師は、海と漁をこよなく愛していた

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久慈の新港。ここでも震災の被害があり多くの船が流出した

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浅水さんの第三大漁丸<YD-30D-0A>。二段ブリッジを採用した

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