採貝藻
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
アワビ・サザエ潜水漁
青森県深浦町
潜水漁は二人一組で行われる。エアはデッキに据えられたコンプレッサからホースを通じて送られる
深浦町の西方37km沖に位置する久六島。水深100m以上の海底が久六島周辺では20mまで上昇し、マグロやタラ、アワビ、サザエなどの一大漁場を形成しています。今回はこの久六島での潜水漁に同行しました。
「久六島は島というよりも瀬に近いような場所。この瀬は水深が20m前後で、瀬から一歩外に出ると100m以上の水深になっていますので、魚たちが集まりやすい環境になっている。私たちも潜りやマグロの延縄をする時は、この久六島が主な漁場になります」
そう話すのは第五十七幸栄丸(DX-73-0B)の船主、西崎昭一さん。マグロ延縄やタラ刺し網、そして潜水漁など一年を通じて久六島を漁場にしており、春から夏にかけてはアワビやサザエの潜水漁を行っています。
艫作港の朝は早く、午前5時前には多くの船が出港します。他船を圧倒するほどの存在感を見せる幸栄丸も、久六島を目指して出港します。潜水漁は4月10日から8月10日までと期間限定で、潜水士が4名、作業員が3名、それに舵を取る西崎さんと計8名が乗り込み、サザエやアワビ、荒布を採ります。
「潜水はひとり1回1時間で4回行いますので、4人合計で16時間。2人一組なのでだいたい8時間から9時間ぐらいの作業になります。今日みたいな凪の日なら安心してできるのですが、風が強かったり波が大きくなってきたりすると、潜り手と船の関係を適度に保つことが難しいので神経がすり減るんだよ」
幸栄丸の潜水漁はアンカーを落とさずに潜り手に合わせて船を移動させるもので、舵を握る西崎さん以下、船上での作業員には潜水が始まると休む暇はありません。海面に現れる潜り手がはき出す息の泡を見ながら、スラスターで船の位置を修正します。
「この船にスラスターをつけたおかげで、船の微調整が格段によくなりましたよ。昔は何度も舵を切って船の位置を決めたんだけどね。やっぱり道具の進化はすごいな」
漁場までのスピード、さまざまな漁に対応できる艤装性、乗組員の快適性を考えながら建造したという幸栄丸は、作業性ばかりでなく、大型のブリッジに船員用の室内が設けられており、液晶テレビで衛星放送が視聴できるほどの快適性を兼ね備えています。
西崎さんを始め乗組員が一様に安堵の表情を浮かべたのが水揚げの時。この日は450kgのサザエと30kgほどのアワビが水揚げされ一日の漁が終わりました。
居住空間を十分に確保した。操舵室には最新の設備がならび衛星放送の受信も可能
久六島周辺は湧昇流の影響でプランクトンが多く、サザエやアワビのサイズも通常の倍以上になる
幸栄丸の潜水漁を支える乗組員。背景の灯台が久六島
幸栄丸の船主、西崎昭一さん。「いい船でいい漁が出来ること」がなによりの喜びだという
フル艤装の第五十七幸栄丸。刺し網、延縄、棒受など季節に応じてさまざまな漁を行う