採貝藻
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
シジミ漁
茨城県涸沼
涸沼川と涸沼で行われるシジミ漁。潮や風の流れを読んで鋤簾を掻く場所を変える
太平洋に面する茨城県沿岸の中央部に位置する涸沼は、那珂川の支流である涸沼川によって太平洋と結ばれ、海水と淡水が交わる汽水湖であり、関東におけるヤマトシジミの産地として古くから漁が行われてきました。
「このシジミ漁を行う場所は、大きく分けて涸沼と涸沼川に分けられますが、動力を使わずに潮と風の流れを利用して操業しますので、皆さん同じような場所で鋤簾を曳くことが多いですね。通常は1人での作業ですが、水揚げがぐっと減る1月から3月までの間は1人が操船して、もうひとりが掻く2人での操業が許可されています」
そう話すのはこのシジミ漁に携わる吉村進さんです。シジミ漁を管轄する大涸沼漁協では一日あたりの組合員の水揚げ総量を100kgと決めるなど資源管理を徹底して行い、漁場の保全に努めています。
「涸沼産のシジミは数が多くはないのですが、生育の早さ、出汁の濃さや栄養価の高さが他の場所で獲れるヤマトシジミと違うと言われています。効率だけでしたら機械曳きの方が、量も多く採れるのですが、シジミを育てる水や土への影響を考えるのであれば、今のような採り方がいいのだろうと思います」
このシジミ漁に使われている船は和船よりもさらに軽いサッパ船といわれるタイプです。これは潮や風の力を利用して手掻ぎをする、この地区ならではもので、搭載する船外機は8、9馬力といった小馬力から30、40馬力といった中型サイズまで、それぞれの漁の仕方に合わせて使われています。
「ヤマハの船外機はこのあたりでは一番の人気だと思うよ。使い勝手も良くて故障も少ない。サービスも早くて丁寧だから、みんなが選ぶのだろうね」
操業後、水揚げしたシジミを選別器に掛けた後は手作業でシジミをひとつひとつ選別していきます。「どんなに機械が進歩しても、中身がしっかりしているかどうかは、結局人間の耳と手で持った感触でしか分からないんだよね(笑)」
最盛期は初夏から夏にかけてという涸沼でのシジミ漁。サッパ船の艫に据えられたヤマハ船外機が毎日行われる漁を支えていました。
ほとんどのサッパ船にはヤマハの船外機が搭載されている
水揚げ後は浜の選別器で洗浄と選別を行い、この後さらに手作業で貝を選別する
シジミ漁に使われる鋤簾は網の目が12mm以上と決められているが、その他に制約はない
お話を伺った吉村進さん。獲れる時も獲れない時も地道に漁を続けていくことが大切だという
サッパ船に船外機の組合せが涸沼シジミ漁に使われる船の特徴