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船体や艤装

日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

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『FRPの特徴とそれを生かした漁和船設計』 --前編--

大漁ニュース 第20号掲載

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 FRPの特徴については、すでにその大部分はご理解されていることと思いますが、もう一度整理してみますと、

1)高い強度
木より安定しており、外板などに要求される曲げ強度は大きい。

2)小さい比重
水より重いが(1.4~1.55)木材の0.55~0.7に対し約3倍。しかしアルミの2.7、鉄の7.8と比較するとはるかに小さい。

3)衝撃に対して強い
金属類と比較すると、弾性率が低いわりには強度があり、衝撃力を広く分布させる傾向がある。

4)疲労に対する強度低下が遅い
ある部材に、繰り返し荷重をかけると、比較的低い荷重でも、亀裂や破損する場合があります。FRPの場合は10の7乗回の繰り返し荷重により静的強さの20~30%に低下するといわれています。また、構造物的に切欠き部分や水中浸漬による強度低下も考慮する必要があります。

5)すぐれた耐水性、耐候性
水中に長時間放置すると、FRPの強度は80~95%程度に低下しますが、通常両面ともゲルコートが塗布され、これが、保護の役目を果たしています。耐候性では、紫外線による劣化が表面より進行しますが、FRPはプラスティックの中では耐候性に優れた素材です。表面のゲルコート層は、じび紫外線による劣化も防ぐ役割をしており、ポリバケツやプラスティックホースのように破損することはありません。

6)優れた耐薬品性
食塩水、ガソリン、灯油などには十分耐え得ることはご承知の通りです。しかし、一般用の樹脂の場合、アルカリに強いとはいえませんので、コンクリートバラストを使用する場合には一般樹脂で成形し、最後に耐アルカリ樹脂を塗布する方法が適切です。

7) 耐摩耗性が弱点
FRPは金属や木材と比べて、耐摩耗性では劣ると考えてください。スレの起こる部分にはスレ材が必要となります。


設計上の留意点
 前述したようなFRPの特性を十分理解した上で設計を行っていますが、次に設計上における工夫や留意点というものを取り上げてみましょう。

1) たわみにくくする方法
例えば、FRPの外側と杉の外板を比較し、補強の間隔が同一だとすると、FRPの曲げ強度杉の4倍で、板厚1/2で良い計算になります。しかし、FRPのたわみやすさは板厚に対して木と同程度のため、FRP板が薄くなるとたわみやすくなります。和船が高速で走るとき、船底がポコポコ踊るのを経験されている人も多いと思います。この外板のたわみを止める方法としては、

A) 外板の板厚を増す
B) 補強の数を増やす
C) 外板を曲面にする


以上のような方法がありますが、Cの場合、力の方向に対して凸にしたり、凹にして段を付け、Bの効果を出すことも考えられます。


(つづく)


※「設計室だより」は大漁ニュース掲載号の原稿を掲載している為、内容がお客様の船に合致しない場合がございます。漁船、エンジン、艤装品の詳細については必ず最寄りの販売店にてご確認をお願いします。

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