船体や艤装
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
不適当なトリムは「とも曳き」や「前突っ込み」に影響します。
大漁ニュース 第46号掲載
船のトリムとは、船首喫水と船尾喫水の差をいいます。
たとえば、図で船首喫水(df)が40センチ、船尾喫水が60センチであったとしますと、喫水差は20センチであり、「後ろトリム20センチ」と表現します。逆に船首吃水が船尾喫水より大きい場合を前トリムと言います。式で表すと、《T(トリム)=da-df》となりますが、Tが負になるときは「前トリム」、正の時を「後トリム」といいます。通常は後トリムの状態で使用されるケースが圧倒的に多くなります。
静止状態では、船は一定のトリムを保ちますが、これは図で示したように〈1〉浮力と重力が同じ値でバランスしていること、および〈2〉船の浮力と重心がつねに同一垂直線上に位置しようとすることによって説明できます。
従って船長が30尺程度の通常の小型船だと、船上を人が歩いて移動するだけでもトリムの変化が分かります。
適切なトリムはスピードによって少しずつ異なります。
これまでは静水中における船のトリムについて説明しましたが、走行時のトリム状態を示す「走行トリム」についてもお話しましょう。(場合によっては走行トリムを単に「トリム」と呼ぶ場合があります)
静止時のトリムが浮力と重力のバランスで決まるのに対して、走行トリムは「重心」と「浮力および船底に働く揚力の中心」のバランスによって定まります。スピードに応じて適切なトリムは少しずつ異なりますが、一般に高速型船型では重心位置が後方にいく傾向にあります。
さて「ともを曳いて走る」とか「前へ突っ込む」とかいう現象を走行トリムの状態で定義するなら「とも曳き」は後トリムが大きすぎる状態ですし、「前突っ込み」は前トリムが大きい状態を指します。もっともトリムは乾舷状態を目測して評価することが多いのですが、正しくは水面に対する船底の傾きを計測して判断するべきと言えます。
「とも曳き」「前突っ込み」の傾向と対策
とも曳きの原因
1)エンジン馬力が大きすぎる
2)重心位置が後方すぎる
3)船底の反り返りが大きい
といったケースが考えられます。とも曳きが起きると船尾から出る波が船首からくる波より大きくなり、舵効きが悪くなりスピードも低下します。
これらの対策としてはフラップをつける方法と重心位置の調節のふたつとなります。
前突っ込みの原因
とも曳きとちょうど逆の要因が働いています。従って対策としては
1)重心を後方に移動させる
2)船尾船底を反り上げる
3)船首をふくらませる
などが挙げられますが、船首をふくらませることは実際の解決策にはなりにくいと考えられます。前突っ込みの状態では、追い波により舵が効かない状態となりスピードを落とさなければ横向きになってしまう(ブローチングを引き起こす)こと。また水に浸かっている浸水表面積が過大となりスピードが伸びることはなく、船首における波かぶりも多くなることが挙げられます。
※「設計室だより」は大漁ニュース掲載号の原稿を掲載している為、内容がお客様の船に合致しない場合がございます。漁船、エンジン、艤装品の詳細については必ず最寄りの販売店にてご確認をお願いします。