延縄
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
甘鯛延縄漁
福井県若狭湾
延縄で行われるぐじ漁は日の出前に縄を落として食いを待つ朝の漁だ
京料理の中でも高級食材として知られている若狭グジは、福井県若狭湾沿岸で水揚げされた300g以上の甘鯛のことで、延縄漁や刺し網漁などで水揚げされます。今回は福井県大飯町で、甘鯛漁を行う上左近さんに同行しました。
若狭の海を漁場とする上佐近久治さんは、甘鯛の若狭ブランドとして知られる「若狭ぐじ」を求め、兄が舵を取る「第十弘伸丸」と共に一年を通じて出漁しています。
「夏はこぎ刺し網で甘鯛を捕りますが、通常は延縄で、ホタルイカやエビを使って捕るのがこの漁の基本です。棚を維持して餌を流すよりも、底に餌付きの縄をはわせて捕るというほうがイメージが湧きやすいでしょう」
「若狭ぐじ」と呼ばれる甘鯛は一尾の重さが300g以上とされているため、同じ甘鯛でもブランドとして値のつく300g以上の魚体が生息する場所で縄を仕掛けますが、天候や潮の流れなどを考えて、1日に50kgの水揚げがあれば大漁だと久治さんは言います。
取材に伺った日の出漁は午前3時30分。大飯町の漁港からDY-45Gを走らせて1時間弱の場所に最初の縄を入れました。
「8号のナイロンロープに5尋ごとに針を付けています。一縄の長さはだいたい200mあって、日によってまちまちですが10~20縄を仕掛けます。市場に行くとよくわかりますが、朝の4時間で50尾を水揚げするひともいれば、一桁しか水揚げのない人もいます。その時々の巡り合わせが水揚げに大きく影響するのがこのぐじ漁の難しいところであり、面白いところでもあります」
原油高などで水揚げばかりでなく、漁に掛かる経費なども頭に入れながら操業するようになったという久治さんは、DY-45Gを選択した時にも、効率性の良さが理想と一致したといいます。
「ヤマハ船はもうかれこれ30年近いつきあいだけど、どの船も文句なく働く。今度の船も取り回しが良くて、使い勝手のいい船ですよ」
この日は市場の関係で早朝の漁のみでしたが、20尾ほどのぐじを水揚げして、まずまずだったという久治さんは、進水まもない久弘丸に確かな手応えを感じ取っているようでした。
延縄で捕れる甘鯛。半日で50尾ほどのグジが捕れれば上出来だという
水揚げを担当するのは久治さん。左舷に陣取ると巧みにローラーを回して、水揚げを行う
餌となるのはムギイカ。これを縄の鉤にチョン掛けして海に入れる
若狭で捕れた300g以上の甘鯛が「若狭ぐじ」として関西方面へ出荷される
かれこれ30年。ヤマハの船を乗り継いで来られた上佐近さんご一家。右端がお話を伺った久治さん
2007年6月に進水した久弘丸(DY-45G-0A)。乗り心地や作業性は秀逸と久治さんも太鼓判を押す