機械釣り
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
イカ釣り漁
北海道上磯町
函館の市場までは自分で運ぶという坂本さん。港に帰ってきても漁は終わらない
北海道の南、夜景の美しさで知られる函館。その隣町、上磯から見える函館港の風景も格別です。正面には函館山を望み、薄暗い海の上に数隻のイカ釣り漁船が漁り火を焚いているのが見えます。 この上磯の街に、ひとりの青年漁師を訪ねました。
午前4時の上磯漁港。周囲は闇に包まれたなか、坂本健さんの第三十三善光丸が1日の仕事を終え帰ってきました。船には獲れたてのマイカが満載です。艤装されたイカ釣り用の集魚灯を作業灯代わりにつけると、暗闇だった港にあかりが灯り、獲れたマイカをトラックに積み込みます。木箱に納められたマイカはそのまま函館の市場へ運ばれ、競りへとかけられていきました。
坂本さんの長い一日がようやく終わりを告げようとしていました。
イカ釣りの漁期は6月1日から12月末日まで。土曜の定休日以外は、ほぼ毎日、湾内でするときもあれば、片道6時間以上をかけ登別の方まで出漁することもしばしばだとか。イカの群を追う漁のため、群に合わせた漁ができなければ、漁獲はあがりません。それでも通常は夕方5時から朝5時頃を目安に漁をしている坂本さん。会社勤めの奥さまとは正反対のハードなお仕事でも、イキイキと取り組んでいけるのは「家族のためだし、漁がなによりも好きだから」といいます。
坂本さんはもともとカレイの刺し網など磯舟を使った漁をしていましたが、3年ほど前にイカ釣りに転向しました。
「隣の芝は青く見えるって言うか、イカ釣りの方がよく見えたんだ。ちょうど船を買い換えて、結婚のした年でもあったし、なにか新しいことをやりたかったんだ」
「イカ釣りはまだまだ新米漁師だから、そんなにいいことはないよ」と言います。
「長年やっている人にはどうしても勝てないよね。こっちは1年1年勉強だし」そう語る坂本さんですが今は焦ることなく経験を積むだけだと言います。
「自分の狙った場所で狙い通りにイカが釣ることができて大漁だったら、そりゃ眠気も吹っ飛ぶさ」とまるで今、大漁にでくわしたからのように元気に語ります。港でのインタビューを終えると家では奥さまの律子さんと長男の健太郎くんが待っていました。
「親父もそうだったけど、息子には好きな道を選べっていうよ」
健太郎くんを見つめるその眼差しは、海で働く厳しい漁師のものから、息子への愛情溢れる優しさに満ちていました。
この日は遠く太平洋を北上、登別沖で操業してきた
新鮮なマイカは水揚げ後、その日の競りに合わせて出荷する
イカの群を追う善光丸のコックピット。各種航海計器が所狭しと並んでいる
イカ釣りは機械釣りとも呼ばれるようにすべてが、自動化されている
坂本さんのご家族。「とても厳しかった」という父、眞太郎さん(左)も孫の健太郎くんには無条件に優しい。こうして家族が揃うのもイカ釣りの季節には希だという
善光丸<DX-51-0A>北海道のイカ釣りを始め、刺し網、延縄など汎用漁船として人気が高い