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貝類

日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

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真珠養殖漁

三重県阿児町

真珠養殖の町として知られる阿児町。海面には数多くの真珠の生け簀を見ることができる

黒潮薫る太平洋に面した三重県のなかでも真珠の産地としてあまりにも有名な阿児町は、日本の真珠養殖の歴史では欠かすことのできない場所として知られています。 今回訪ねたのは、その真珠養殖に取り組んでいる山崎順さん。 真珠の核入れの自家処理システムを独自に開発し、明日の真珠養殖に向け努力を重ねています。

 阿児町で真珠養殖に取り組む山崎さんは、大学の水産学科に進学し、4年生の時に水産試験場で試験場であこや貝の稚貝の生産に着手。市販品として、これらが実用できるかどうか実験し、その研究をまとめて卒業論文にしました。
 「実をいえば、大学で学んだ知識はあまり役に立たないんですよ。でもその時に知り合えた教授や友人との交流が今でも役に立っています」
 大学時には研究を重ねる一方で暇さえあれば家に帰り真珠養殖を手伝っていたという山崎さん。子供の頃から変わらぬ環境に、真珠養殖がいかに大変かは身をもって体得したと言います。
 「真珠養殖は朝4時から夜8時まで働き通しのこともある重労働なんですよ。夜の9時頃まで夕食を待っていることも、子供の頃から当たり前に思っていました」
 家業を継いだ今でも学友との交流は絶えることがないと言う山崎さん。その情報交換から生まれたのが核入れの自家処理システムです。
 「真珠養殖で一番大変な作業が“核入れ”です。これはアコヤ貝に真珠の粒となる核を一つずつ植え付ける作業で、水温が適正になる4月から5月の間にしかできません。この時は手伝いの人も含め一家総出で朝から晩まで作業に没頭しなくてはなりません。それを何とか、いつでもできるようにしたいと思い核入れの自家処理システムを考えました」
 これはアコヤ貝を適正水温が保たれた水槽に一時移して核入れの作業が終わるまで保育するというもので、これにより春になるのを待たなくても、人出の都合を考えながら冬場から計画的に作業が行えるようになりました。
 「最初温度管理については熱帯魚で実験したんですが、電気代がかかって家のものに叱られて(笑)。でも問題の密殖については適正水温を保ったまま常に新しい水を配給する自家処理システムを開発して解決しました」
 研究に労を惜しまないその姿勢が、核入れの自家処理システムに繋がった山崎さん。これまで重労働に耐えてきたご両親にとってはきっと嬉しい贈り物になったことは間違いありません。
 景観美で知られる阿児町ですが、近年は赤潮の発生が増加し、その規模も年々増加しています。山崎さんも赤潮の影響がない半島の南側に避難用の漁場を確保し、赤潮が発生する夏場は高速漁船で大切な養殖貝を運び難を逃れています。この運搬船として導入されたのが<DY-50B>です。
 「最初はトラック輸送も考えましたが、手間とコストを考えれば船の方が圧倒的に楽ですよね。特にこの船は40ノットに達する早さを持っているから本当に楽です」
 品質が何よりも大切だという山崎さん。「できれば自分の子供たちにも後を継いでほしい」という想いを胸に、よりよい漁場の育成に全力をあげて取り組んでいました。

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とてもデリケートな作業を要する真珠養殖。真珠への愛着も人一倍強い

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春に行われる核入れ作業が一段落すると、次は養殖貝の洗浄作業に追われる

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核入れ作業の自家処理システムに使う水槽。このシステムは話題を呼び、先日もとあるテレビ局の取材を受けたという

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核入れ作業の自家処理システムで中心的な役割をはたす熱交換機

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養殖のノウハウを訪ねると、矢継ぎ早に化学の専門用語が飛びだし、熱のこもった説明をしてくれた山崎さん

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赤潮の発生に対して威力を発揮する養殖貝の運搬船<DY-50B>

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