貝類
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
ホタテ地蒔き養殖
北海道尾岱沼
ケタの引き寄せ、ホタテを傷つけないように甲板に広げ、そして手早くケタを海に入れる一連の作業は緊張を強いられる
オホーツクの海に突き出る大きな鎌のような半島に抱え込まれた尾岱沼。その南端の付け根にある尾岱沼港を母港とする「あさひ丸」は、野付、別海、湾中、根室、歯舞に所属するホタテ漁船13隻の中の一隻です。
12月、朝5時30分、準備を終えた、あさひ丸のもやいが解かれました。向かう漁場は15ノット程度のスピードで約30分の沖合です。往復時間などには作業にあたる5人は、操舵室の後部にある部屋で暖をとりながら休みます。「八尺を上げるときもそんなに傾かないし、安心して作業ができる」と北島昭さん。東狐(とうこ)隆一船長は「この船は楽だ。速いし、たくさん積んでもしっかり走るしね」と舵を取りながら話してくれました。
ここのホタテ漁は完全な管理栽培型漁業。海面を畑に見立てて一辺が500mの正方形を16ほど組み合わせた水域で、野付け半島の曲線をなぞるようにして海の畑が並ぶさまが、GPSプロッターにびっしりと映し出されます。
ホタテ漁は12月1日から28日までで、年明け1月6日に初せりが行われ6月末まで続きます。漁場はヒトデが繁殖しないようにきれいに整備され、そしてまた稚貝が撒かれ、貝の成長を待ち、4年目からようやく収穫に入ります。
漁場の水深は18から20メートル。操舵室の水温計は5度を示しています。500×500メートルの区画を2区画続けて、つまり1,000mの距離を「八尺」を引き続けます。「八尺」は鉄製の巨大網と熊手を組み合わせたような漁具。約2.5メートルの幅に13本の爪があって、それで海底に撒かれたホタテ貝をお越し、鉄製巨大網に蓄えます。
船側で八尺が引き揚げられると、甲板はたちまちホタテ貝の山ができます。八尺のリフトから水揚げ、また八尺を海に戻す作業には体力はもちろん、リフトのタイミングや八尺の扱いの熟練が必要です。八尺を曳いている間は貝を選別し籠に入れるのですが、息の合った作業で次々と水揚げがされ、その山が小さくなることがありません。操舵室脇の舷側に敷かれたローラーを滑って約65kgの籠が船尾に積み上げられます。
操業を終えたのは10時過ぎ。港まで戻るまでには貝の選別も終了。そのひとつを開いて貝柱を頬張ると、自然の恵みが口いっぱいにひろがります。ホタテ貝でいっぱいになった約80籠はすぐに水揚げされ仲買人に引き取られていきました。
水揚げしたホタテの整理も終わった後の甲板。「幅広で前が沈まない、なかなかいい感じだよ」との評価
この地域ではケタは「八尺」と呼ばれている
船尾甲板から次々と水揚げされるホタテ貝
管理栽培型が進むこの地区では漁船の所有形態も共同化が促進され、「あさひ丸」は東狐隆一さん、北島昭さん、伊藤豊さん、松原誠さん、菅原誠さんの5名の共同所有