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小型船舶1級取得体験レポート

モデルとして活躍する山下晃和氏の小型船舶1級取得レポート。

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ボート免許教室予約編

ボクは山が好きだ。それと同じくらい海に興味を持つようになったのは、今年の夏、東京から奄美大島へ旅をしにいく際に、フェリーで行ってからだ。

フェリーのデッキで海を眺めると、どこまでも青い海が見え、船が波を切り裂いて走っていく音だけが聞こえた。 遠くに、四国が見える。そんな景色に憧れた。それから、自ら船の免許を取ってクルージングしたいと思うようになった。

小型一級船舶という響きは、内容がとても難しく、手続きも面倒なイメージがあったが、それはすぐに勘違いだということに気づいた。
マリンセンターで直接予約する。資料請求をして郵送で予約する。このほかに、インターネットでの予約もあり、住民票や、自分の顔写真だけを用意すれば自宅から予約が出来るという簡単なやり方だ。今はこのインターネットでの予約が主流のようだ。

ボクは今回、マリンセンターで直接予約をしたが、分からないことも丁寧に教えてもらえるし、日程もあらかじめ決まった講習の日時があるので、あとは場所を選ぶだけで(場所も日程によって選ぶことができる。)、自動車の普通免許よりも簡単に手続きは出来る。土日の講習もあるので、平日は仕事で忙しいという人も安心だ。
用意するものといえば、住民票、写真(証明写真で可)、身体検査の結果(これは学科試験当日に受けられる)、委任状二枚。この程度のものなので、すぐに用意できるものである。

受けにくる人の年齢は様々だが、平均年齢は30歳くらいで、40歳くらいが一番多いらしい。もちろん、ボクのように20代の人も居るし、とにかく幅広い年齢層にも、海を楽しむことが出来るといえるだろう。 取得可能な年齢は、満18歳以上からなので、普通自動車の免許と同じ年齢で取ることが出来る。

マリンセンターの外には船もたくさん置いてあるので、思わずカッコイイなーと見入ってしまった。

マリンセンター横浜の徳増さん

二級学科講習編

授業は朝の9時から17時。1級を受ける人も、まずは2級の授業を受ける事になる。2級の科目は、一般科目といって、いわゆる常識的な問題が主体でそんなに難しくはない。1級を受けるときにも、2級の内容は出題されるので、1級、2級の人が同時に授業を受け、1級の人だけが、他の日にまた上級科目を受けるといった形になる。
期待と不安が入り混じり、初めは緊張したが、講師の坂本先生は、その雰囲気を察したのか、冗談を交えながらの説明で、思った以上にリラックスできた。
まずは、教材の説明、学科講習を受ける場所、実技講習を受ける場所、合格基準などを教えてもらい、その後テキストと問題集を使っての授業だった。
まずは、操縦者のルールだ。「船は、車と違って右側を通行するというルールがある。海難事故の際の救助の優先順位、海の上では漁労船もあるので、十分に注意すること。海の上ではゴミは捨てない。」といった基本的で、かつ常識的な問題なので非常に簡単だ。正直言うと、勉強しなくても分かる。

次に、交通の方法。車で言う交通ルール。夜間に航行するときに灯火といってライトをつけるのだが、右側が緑色のライトで、左側が赤色のライトと決まっている。海は、道路と違って走る道がないので、このように右と左とにライトをつけることによって、船がどちら向きに進んでいるかが分かるのだ。また、道路のように標識もある。種類も少なく、全てが絵の説明で分かるので、特別にややこしい標識はないのでこれもすぐに覚えられる。

三つ目は、運航である。運航は船体の名称、灯台の光の種類、海図の読み方、気象について、エンジンの名称など、少し専門的な内容になっていて、普段は全く使わないような言葉が出てくるので、最初は戸惑ったが、試験に出やすい場所をピックアップしてくれるので、そこを重点的に覚えれば大丈夫。理科の問題と思えばそんなに難しくないし、エンジンの構造などは、バイクに乗っているボクは問題が無いといった感じだ。車の免許のときも勉強するだろうから誰でも分かるはずだ。
ただ、運航については勉強しないと不合格になりそうなので、何度もテキストと問題集で繰り返し勉強したいところだ。
海の知識というのは、普段はあまり耳にしない言葉だが、その分覚えるのが楽しい。
「あー早く船長になりたい!そして、水平線を見ながらクルージングしたい!」と気持ちはすっかりキャプテンだ。

一級学科講習編

1級の授業も朝の9時から17時まで。2級の講習を受けた人や、今までに小型船舶の免許を持っていて、1級にステップアップしたい人が集まる。
1級の試験では、2級の内容である一般科目と、上級運航の内容の上級科目の得点が、合格点以上に達していれば受かる。配点合計が65パーセント以上で合格となっている。
つまり、半分よりちょっと上であれば100点満点ではなくても合格するので、不安は拭い去ってほしい。といっても、100点を取りたい気持ちはある。
この日もテキスト、資料などについて丁寧に説明してもらった。周りは実際に海に出た経験のある人も居るので、ついていけるか不安だった。

1級では、海図(海の地図)の作図が問題に組み込まれるので、少し難しいところもある。ただ、数学の速さ、距離、時間を求める問題に似ているので、中学校のときに数学の授業をサボっていなければ分かる問題。
ここでは、三角定規と円を書くコンパスを使う。
久々に握る文房具に懐かしささえ覚えた。
海図に示してある方位が分かるコンパスを利用して「船がどっちの方角を向いていて、どちらの方角に向かい、どのくらい運航し、どのくらいの時間で着くか。」や、「距離はどのくらいか。」や、「どのように潮流に流されるか。」などより実践的な、海図の見方を覚える。その際に三角定規で、角度の線を引いたり、例えば、「灯台から3海里の場所で・・・」と書いている場合に、灯台を中心にコンパスで円を書いて、その接点を求めたり、数学の図形の問題とリンクしているところがある。
授業では、講師の末次先生と二級のときの講師だった坂本先生と二人体制だったので、分からなくなってもすぐに教えてもらえるので、一対一で説明をしてもらえた。
午前中は、この海図についての内容で、あっという間に授業が終わった感じだ。

午後からは、2級のときに習ったものを掘り下げての勉強といった内容で、2級の講習をマジメに受けていれば、天気の読み方や、エンジンの名称やその働きについてなどで、ほとんど理解することが出来る。
この日は海図を見る事ができたので、灯台、島、海の方角などで、自分が実際に海に出たことが想像できて、不安もますます楽しみに変わったが、次は実技講習なので、実際に船を動かすことになる。
また、不安と期待でいっぱいになりそうだ。

実技講習編

待ちに待った実技講習。

とうとう船を動かす日がやってきた。
外はあいにくの雨。どうやら台風が近づいているらしい。川の向こうでは波も立っている。不安もいっそう大きくなったが、二級学科講習のときの講師であった坂本先生が担当ということもあって、少し解消された。

場所は、多摩川河川敷スタート。
船に乗る前に、机上講習から。実技試験の内容の説明と、ロープの結び方などを学ぶ。
ロープの結び方は全部で7種類を覚える事になる。

試験では、この7つのうちひとつをやることになるので、全てマスターしなければならない。
船の係留時には必ずやることなので、きちんと覚える必要がある。

次に、実際に船つき場まで行き、3種類の点検を行う。
まずは、船の前で出発前の船体の点検と、操縦席の点検をする。点検をするときには、大きな声で言わなくてはならない。
例えば、「船体外板の点検を行います。」「船体外板よし。」「船体外板の点検おわりました。」と元気よく言う。 声を出して点検をすることで、試験官がきちんと点検したかを見るらしいので、戸惑いなく堂々と。恥ずかしがっては船長になれない。

そして、エンジンの点検を行う。エンジンは学科講習でやった名称を思い出し、実際にバッテリーや、エンジンオイルなどを手で点検することにより、異常が無いかを調べる。 自動車やバイクを整備するときにもやるので、この辺はその点検と似ている。 最後に、法定備品の点検。

船には必ず積んでいなくてはならないものが8つあるが、その名称と置いてある場所を点検するのだ。
中でも、消火器はその船によって置いてある場所が違ったりするので、注意が必要らしい。(大体の場所は教えてもらう)

この辺は、家に帰ってもう一度テキストを確認した方が良いと思う。
そして、操縦席について、船を動かすことに。初めはやっぱり緊張して、見張り(周りを見ること)を怠ってしまった。ハンドルに集中してしまったからだろう。
基本操縦は、発進、増速、停船、後進、変針。つまり、スタート、スピードアップ、ストップ、バック、ターンのことだが、水の上ではハンドルから少し遅れて反応するため、早め早めの行動が基本となる。だからといって急にスピードアップしたり、ハンドルを切ったりすると、船体が揺れて危ないので、全てはシビアに、徐々にやることも忘れない。
応用操縦は、人命救助、着岸、離岸、避航操縦。訓練用ブイを使って人と想定し、微速で助ける、岸に着ける、岸から離れる、船が来たらそれを避ける、といった動作だ。 慣れが必要だとは思ったが、試験で合格できるように肝心なところを何度か教えてもらい自信がついてきた。台風が近づいてきたようで、波が高くて途中恐かったけど、コンディションがこれだけ悪かったら、本番は大丈夫と太鼓判を押してもらった。

学科試験編

学科試験というと、学生のとき以来の緊張感が漂ったが、問題集を二級、一級を通して勉強し、分からないところをテキストで復習といった風に仕上げたつもりだったので、あとは自分の実力を信じて、やるしかなかった。
試験に来ている人は多いと感じた。若い人も居るし、女性も居る、30歳代の男性が一番多いと感じた。試験の前にまず健康診断があり、視力、色覚、聴力、試験官に軽く質問される、ここで落ちてしまうと学科試験も受けられないらしいが、落ちる人は居なかったと思う。この診断も5分ほどで終わる。
一級小型船舶の試験時間は2時間20分。早く終わった人は試験開始後20分経つと退室が可能になる。試験の問題数が66問と多く感じるが、全て4択で、マークシート形式。勉強した人であれば、大体70分から90分くらいで解き終わることができると思う。
配布物は、一般科目(二級小型船舶の科目)の試験問題。上級科目(一級小型船舶の科目)の試験問題。そして、海図。机に出して良いものは、筆記用具、三角定規、コンパスのみ。ペンケースは出してはいけないのと、電卓付きの腕時計は禁止。計算問題もあるが、筆算で計算できる程度なので、計算機は使わずに解けるはず。海図は上級科目の一番目の問題ではあるが、最後に解くのが良い。というのも、海図は時間がかかるため、(書き込んで距離を測って、計算をするので)落ち着いて解いたほうが正解する率が上がるからだ。 実は、このやり方も学科講習で教えてもらっていたので、冷静に対処できた。
合否は次の日に発表なので、結果を待つあの緊張感が一日で終わるというのは受験者としては嬉しい限り。 合格が決まるといよいよ実技試験だ!

実技試験編

学科試験が終わった二日後に、ヤマハボートセンターに問い合わせると「おめでとうございます。合格です。」とすぐに結果が出た。
嬉しいなどと言っている暇もなく、次の実技試験が待つ。
実技試験では、講習で習った内容をもう一度実践するだけなので、簡単だ。
・・・というようにうまくはいかなかった。実技講習ではあれほどきちんとやったことが、やはり試験になると緊張もあって、思うように体が動いてくれない。

もちろん、実技試験の前には、テキストの読み返し(2級のテキストの後ろは実技試験の内容が詳しく載っている)、ロープの結び方のチェックは入念にやったつもりだ。特に、ロープの結び方は実技試験の数分前にも確認したはずだったのに。

場所は多摩川の千鳥運河。まずは、試験の内容と流れの説明。試験は3人で1グループとなる。試験時間は1グループでおよそ1時間。思ったよりも早く進んで、あっという間だった。

まずは、出航前の点検から。オイルフィルターが講習の時の船とは違う場所に付いていたので、少々戸惑ったくらいで、後は完璧だった。 その後、ボートを試験官に移動してもらい、多摩川の広いスペースまで。試験官も見張りをきちんとしていて、こまめに後ろの状況もチェックしているので、見習わなくてはならない。
試験の時は番号で呼ばれる。 「22番さん、それでは増速してください。」という指示に対して、「はい、増速します。前後左右よし。増速しました。」と声を出す。最後は、「増速終了。」だけでも良い。ただ、終わったことを示さないといつまでたっても次の内容に移さない試験官も居るらしいので、減点されないように気を付けたいところだ。

「うまくはいかなかった。」というのは、二つミスをしたことだ。一つ目は、人命救助で、人間と見立てるブイを取り逃してしまい、再救助という形で、二回目でようやく救助成功。1度のミスだけでは、大した減点にはならないらしいが、そこでかなり焦ってしまい、その後にも響いた。

二つ目は、係留(船を留めること)を失敗したことだ。ボートの前後2本の係留ロープを桟橋のビットに結ぶのに、間違えて船の幅より狭い位置にあるビットに舫ったので安定性を欠いてしまったことだ。致命的なミスを犯してしまったと思った。係留はもちろん船が動かなければいいのだが、きちんとした係留を覚えていないと実際に船に乗るときに困るので、ここは大きい減点だと思う。悔しい気持ちになった。しかし、講習の時よりもうまくいったと思ったのは、蛇行と離岸だった。指定されたブイの蛇行は練習通りにできたし、離岸もボートフックを使ってスムーズに出発ができた。 もし、不合格だったら・・・。いや、何回でも受けるつもりだが。

発表まで不安な日が続く。

いよいよ実技試験開始
試験艇の配乗の発表です。
桟橋に移動してロープワークを一人づつ
船体外部の点検
エンジンルームの点検
装備品の点検
操船試験へ出航です。

免許申請編

結果が出たのは、試験後から10日が経った午前中だった。ホームページでも合格を確認でき、ヤマハボート免許センターに電話で問い合わせても確認することができる。

結果は、「合格」。
合格という響きは最高に嬉しかった。およそ1ヶ月の小型船舶1級免許を取るための努力は実ったのだった。

だが、1ヶ月というと長丁場に思えるが、学科講習が2日間、実技講習が1日。計3日間で試験までの準備が整う。また、勉強といってもそれほど難易度の高い問題はなく、ヤマハの講習で講師が教えてくれるポイントを抑えることと専門用語に慣れ、問題集を一度ざっと解き終えれば十分に合格できるはずだ。忙しい人でも3日位集中すれば終わる程度。学科試験が1日。実技試験が1日。講習と試験の実質合計5日間で小型船舶1級が取れるのだ。
誰でも簡単に国家資格を手にする事ができる。 それで、海という新たな遊びのフィールドが広がるのだから、これは凄いことだ。
免許申請も、色々な手続きがあると思いきや、すべてヤマハボート免許センターが代行で申請手続きをやってもらえるので、免許が自宅まで送られてきて終了だ。自動車のように平日にわざわざ休みをとって遠いところへ申請しに行くといったことは一切ない。船の免許というと敷居の高いイメージだが、今回の工程で、一気に払拭された。

免許を見ると、ワクワク感が募る。 クルージング、フィッシング、ウエイクボード。友達同士や、家族みんなでワイワイとできる。新たな趣味を見つけたいと思っている方にも小型船舶免許をオススメしたい!

山下晃和(やました あきかず)

1980年生まれ。雑誌Tarzan、培倶人、Scooter fanモデルや、広告などのモデル業を中心に、文章を書いたり、舞台俳優で舞台に立ったりと多方面で活動中。05年夏に、バイクで奄美大島から東京までおよそ2000kmの舗装路とダート100kmの道のりを走り抜ける。今年は、9月に日本最大のアドベンチャーレースの伊豆アドベンチャーレースに参戦。12月には四国のラリーレースに参戦予定。

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