底曳き・桁曳き漁
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
赤貝・貝桁漁
宮城県石巻港
良質な赤貝を桁曳きで採る。作業はすべて後部デッキで行われていた
三陸の南端にあたる宮城県石巻は、沿岸では昆布や牡蛎の養殖が盛んに行われておりその知名度も全国区ですが、今回取材した「赤貝」も瀬戸内海産に負けるとも劣らない質の良さで知られています。 このあたりでは貝桁漁と呼ばれる赤貝の底曳き漁に同行しました。
第八栄福丸を新造された大澤さんは、赤貝の底曳き漁を主体とする船長になってから半年が経ちました。自ら新米船長といいますが、それだけに漁にかける意気込みも人一倍強く感じられます。
「出るかどうかは船団長の判断で決まるんですよ。操業中は基本的に港ごとの行動になりますので、休むときは一斉に休むようになります」
取材当日はうねりはないものの、風が強く吹き、底曳き漁には厳しい天候となりましたが、船団長の判断で、出漁することになりました。赤貝の漁場は金華山から福島の県境までと広範囲に及びますが、この日は風の影響が少ない石巻湾沖が選び出されたようです。
赤貝の底曳き漁では、多くの小型底曳き網船と同じような艤装が施され、両弦に一網づつ艫に二網が用意され、日の出とともに最初の網を降ろしていきます。
「一番難しいのは網を効率よく曳くことでしょうか。船が遅すぎてもダメだし、早すぎると網が飛んじゃうんですよ。だから潮の流れが速いときや風が強いときは"止まっているかな"と感じるぐらいがちょうどいいみたいです」
網を曳いているときの速度は2ノット前後。ほとんどが自動運転ですが、やはり最後は自分の勘という大澤さんは、風や潮の流れを見ながらリモコンで船足を微調整をしています。水深は15m前後。一回に曳く時間は約1時間が目安だそうで、この日も網入れから1時間後にすべての網を一斉に引き揚げました。
「底曳きはどの漁でも同じだと思いますが、網を揚げている時間で漁の腕前がわかります。いかに早く揚げて早く降ろすか。ウチは今年から始めたばかりですからまだまだですが、ベテランの方はやっぱり早いですよ」と話す大澤さんですが作業は手際よく行われ、すぐに網を降ろすと赤貝をサイズごとに選り分けていきます。
「小さな赤貝は水揚げせずに、組合が専有する漁場に放流するんですよ。それを海が荒れやすい、1、2月に獲って水揚げしているんです」
石巻近辺では各組合の専有の漁場が振り当てられ、サイズの小さな赤貝は水揚げ後その漁場に蒔かれます。それを厳冬期となる1・2月に組合員が協同で水揚げして、漁の安定化を図っています。
この日最後の網揚げが終わったのは午前10時半。港の仲間が次々と帰港するなかで、大澤さんは最後までねばり強く漁を続けていました。
網の間口は約一尋分あり、両弦の網はブリッジの横に付けられたローラーからアウトリガーを通じて曳かれる
この日は時化気味で普段よりも陸に近い湾内での作業となった
その良質な身が仙台湾産の赤貝の特徴
漁港での水揚げが午前11時から始まる。石巻で水揚げされる赤貝はキロあたり1500円前後とのこと
右から狩野忍さん、大澤さん、横内洋二さん。全員20代という浜一番の若手トリオ。活気だけはどの船にも負けない
<DX-73-0B>とMD1051KUHの組み合わせは浜で一番のスピードを誇る。「やっぱりヤマハはいい」と大澤さん