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その他網漁

日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

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定置網漁

香川県小豆島

親子、阿吽の呼吸で作業が進む定置網漁。春から秋にかけては3箇所に2網づつ、合計6網が仕掛けられる

オリーブ畑の広がる瀬戸内海の小豆島。 多くの観光客が訪れる風光明媚なこの島の周囲は複雑に交差する内海特有の潮の流れによって豊かな漁場を形成しています。 この海で定置網漁を行っている丸川昇さん親子を訪ねました。

 小豆島の北、福田で今から20年前に定置網漁を始めた丸川昇さんは、家業である溶接業から一転、漁業の世界に入った経歴の持ち主で、現在は息子の慶延さんと共に漁を営んでいます。
 「最初は兄の手伝いで溶接業を手伝っていたんですが、そのうち家内の実家である漁師に目が向いてしまって、そのまま漁を継ぐことを決めたんです」
 安定した勤め人よりも、自分の力で夢を切り開くことに賭けた丸川さんは自ら漁師の道を決心して養子になり、義父の後継者となるべく、努力を積み重ねました。
 「養子だから義父に迷惑がかからないよう、必死に仕事を覚えてね。アナゴが網から逃げる夢を見て、夜中に飛び起きるなんて何回あったか(笑)。やっぱり家族を養うことは簡単じゃあないって実感しましたよ」
 努力の末、漁業で家族を養っていける自信がついたとき、ふと思えば一人息子の慶延さんが高校生になっていました。
 「漁を継いで欲しいとは考えていませんでした。若い頃は外に出ていろいろな体験をする良いチャンスですしね」
 慶延さんはその後コンピューター関連の専門学校に通いさまざまな仕事を検討しましたが、考えた末の結果は家業を継ぐことだったと言います。
 「誰にも相談しないで勝手に決めてしまったんですけど、不景気で良い職場もありませんでしたからね。どうせ同じ仕事なら、やりがいのある漁の方がいいかなと思ったんです」
 丸川さん曰く「この仕事は体で覚えるもの。口で説教していてもわかるようなものではありませんから」
 そんな親子での漁が始まって3年目。漁師として大きな節目となる新艇の購入を丸川さん親子は決意しました。
 「漁師は船を新しくすると仕事の励みになる」と昇さん。慶延さんは「今では魚が捕れなくなったら転職でもと考えていましたが、これからは責任を持って仕事をしなければいけませんね」と応えます。
 そんな慶延さんに「いい漁師の条件とはもしも魚が捕れなくなっても魚がいないなどと言わず、自分の力で捕るようにすること。いつも同じことを考えてはダメなんだ」と昇さんが檄を飛ばします。
 「3年やってみて、この仕事の大変さが分かりました。いま父に勝てるのは体力ぐらいで、網を作ることや漁の仕方なんかはとても太刀打ちできません。でもいずれは全部学び取って自分なりに工夫していきたいと思います」
 漁を継ぐとき、友人からは都会での仕事を勧められましたが、今では「自分の力が試せる漁師で羨ましいと」と家業を継ぐ決断が間違っていなかったことを確信している慶延さん。今では少しでも早く父の腕に追いつこうとする気持ちが定置網の作業に出ていました。

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定置網の獲物は、カワハギ、ハマチ、スズキに鯛などさまざま。年間を通じて漁に追われます

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真ダコを手に笑顔で答える昇さん

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「勝てるのは体力だけ」と父を尊敬する慶延さんと「新艇の建造資金は二人で半分づつ」と息子にハッパを掛ける昇さん

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市販品の網は使わずに自前の網で漁をこなす。網作りはやがて慶延さんに受け継がれる

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快調に走る丸川さん親子の新艇<DY43-0A>。一目惚れで購入を決意。スピードも以前の船の倍ということで、丸川さん親子からも大きな期待が寄せられていました

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