採貝藻
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
シジミ漁
島根県宍道湖
宍道湖では和船W-25HDと船外機F40が多く使用されている
全国で採れるシジミの約4割を占める宍道湖では、朝早くから和船を用いたシジミ漁が行われ、その様子は宍道湖を彩る風景としてシジミ同様に多くの人々に知られています。
今回取材に伺った野津英二さんは鋤廉を手で曳く手掻きでシジミ漁を行っています。
「同じシジミですが手掻きと機械掻きでは1日で獲る量も違えば場所も違います。手掻きは湖の東側が漁場になるのに対して、機械掻きは水深のある湖の西側が主な漁場になりますし、時間も例えば手掻きが6時から9時半までとすると、機械掻きは6時から8時半という具合になります」
シジミを採る方法こそ異なりますが、良質なシジミを求めているのはどの漁師も同じこと。宍道湖では1日の水揚げ制限がその時々で決められているだけに、S~3Lまであるサイズの中でより大きいシジミを揃えようと、その日までの傾向や風の向きなどを計算しながら場所を決めるそうです。
「この漁は海底がどのようになっているのかを知らなければ、いいシジミを採ることができません。底が泥か砂かとか、かけ上がりになっている場所とか窪んでいる場所とか、そういった変化を頭に入れて場所を決めるのですが、それでうまくいくものではないんですよね(笑)」
そう話す野津さんは、今から5年ほど前に会社を辞めて漁師を継いだ脱サラ組。この宍道湖のシジミ漁は漁業権を世襲する漁家が多く、野津さんのように親の引退によって本格的に漁に取り組み始める人も少なくありません。野津さんは漁を引き継ぐと同時にコツコツとシジミの研究を始め、水産試験場などにも足を運びながら良質なシジミの生産に取り組んでいます。
「昔は1日の上限が150kgありましたが、今では70kgと半分に減っています。それでも1~2時間も掻いていれば、1日の上限になっていたので他に仕事を持ちながらやる人も多かったのですが、最近は制限時間一杯に掻いても、上限ぎりぎりという日が多く、量が減っていることを実感します。原因が定かではありませんが、稚貝の放流などの資源対策も行っていますので、私たちとしては良質なシジミを提供していくことが大切だと思います」
朝日を受けて鋤簾を掻く野津さんは「今以上の安心感と付加価値のある大和シジミを提供していきたい」という抱負を胸に、宍道湖の恵みであるシジミを丹念に水揚げしていました。
手掻きは船上から鋤簾を突きだして、体全体を使って海底の泥からシジミを掬う
鋤簾の入り口は60cm×35cmと決められている
鋤簾を引き揚げるとまず手前のカゴにシジミを入れ、その後大まかな選別を行う
漁を終えるとすぐさまその日に出荷するシジミの選別作業を行う
シジミ漁を行うときは一緒にいることが多いと笑う野津ご夫妻
「静かで燃費もいい」と野津さんも船外機F40の性能に太鼓判を押す