船体や艤装
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
どうすれば効率的な『曳き力』が得られるのか?
大漁ニュース 第22号掲載
底曳き漁では船が網を『曳く力』は、漁の善し悪しを左右する重要なポイントですが、FRP漁船の場合は、その船体の軽量さから『曳き力』が足りないと誤解される場合もあります。
問題をわかりやすくするために、自動車の場合と比較してみましょう。
自動車はエンジンで発生させた動力をタイヤに伝達して路面を走ります。クルマの『曳き力』は、タイヤと路面の摩擦の大小によって決まります。ですからエンジンの馬力と駆動方式が同じなら、車体重量の大きいクルマの方が『曳き力』が大きくなります。では、船の場合はどうなるのでしょうか?
エンジンで発生させた馬力をプロペラシャフトに伝達し、プロペラの回転力に置き換えて、水を掻いたプロペラの反作用で曳き波が生まれます。
船では「プロペラと水流との間の効率」で『曳き力』の大小が決まるので、車体重量が影響するクルマの場合とは条件が異なります。
これをまとめると次のような条件が主として船の『曳き力』を左右しています。
(1)エンジン馬力の大きさ
(2)エンジンで発生した馬力をプロペラまでに伝達する仕組みの効率性
(3)プロペラ自体の効率性
(4)プロペラへの水の流れ(スムーズになっているか)
(5)プロペラと船体との間隔(もしくは水面からプロペラ上端までの深さ)
上記の5項目の条件の中で、特に『曳き力』に関連する(3)以降について解説しましょう。
まず、(3)に挙げたプロペラ効率ですが、これには、船のスピード、プロペラ回転数、プロペラの直径とピッチの諸条件がからみあいます。一般論として<大直径のプロペラをゆっくりと回した方が単独効率は向上する>のですが、これも漁場までの走行スピードを重視するか、あるいは操業中の『曳き力』を優先させるかの違いによりプロペラの選び方が異なってきます。
(4)、(5)に挙げた条件はそれぞれ似ていて、プロペラが回転し船が前進しているときに、プロペラに最高の推力を発生させる環境を作り出すことです。
この対策には以下の点が重要なポイントになります。
▲プロペラは十分に水面下に沈んだ位置にあるか?
▲キール式では、キール後端の水がプロペラに達するまでにスムーズにながれこむような形状に作られているか?また、プロペラとキール後端の間隔は適当か
▲浜揚げ式では浜揚げ管とプロペラの間隔が適正であるか?
このようにエンジン馬力が十分に大きい場合には、推進力に関して艇体重量は問題になりません。むしろここで解説したように、皆様の作業に合わせた、エンジン、マリンギア、プロペラの設定が『曳き力』を高める近道となるわけです。
※「設計室だより」は大漁ニュース掲載号の原稿を掲載している為、内容がお客様の船に合致しない場合がございます。漁船、エンジン、艤装品の詳細については必ず最寄りの販売店にてご確認をお願いします。