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船体や艤装

日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

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魚倉の「仕切り板」、あるのとないのではどう変わるのか

大漁ニュース 第29号掲載

 何人かの漁師さんからこんな話を聞きました。
「エンジンルームのすぐ前にイケスを設けると、エンジンの放熱で魚の鮮度が落ちるので、エンジンルームの前には燃料タンクを設けてその前にイケスを作るようにした方がいい」
 確かに魚の鮮度を大切にするいい方法です。しかし、こういった配置の場合には船の腰の強さに注意しなければなりません。イケスや燃料タンクの中の液体が横方向に自由に移動できる状態は、船の傾きに大きな影響を与えるからです。

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 図で考えてみましょう。仮にA図のようなイケスを想定します。(考えやすくするために四角な断面で見ましょう)
 今、体重60kgのひとが船の中心から1.5m動いて、船が1m幅につき10cmの割合で傾いたとします。
 そのとき、中央に仕切り板がある場合B図(1)と仕切り板のない場合B図(2)とでは、要求される復原力の大きさが異なります。(1) (2)ともグレー部分の水が、ブルーの部分へと移動したと考えてそれぞれの復原力を計算してみましょう。(イケスの水は比重1として計算しました)

□仕切り板のある場合(1)
a)移動した水の比重(イケスの片方だけで)=0.0125トン
b)傾斜による重心の移動距離=0.666m
c)水の移動によって生じる船を傾けようとする力=0.0125トン×0.666m×2=0.017トン×m
d)人の移動による船を傾ける力=0.06×1.5=0.9トン×m
e)船を傾ける力=0.017+0.09=0.107トン×m

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□仕切り板の無い場合(2)
a)移動した水の比重=0.05トン
b)傾斜による重心の移動距離=1.333m
c)水の移動によって生じる船を傾けようとする力=0.05トン×1.333m=0.067トン×m
d)人の移動による船を傾ける力=0.9トン×m(1)と同じ
e)船を傾ける力=0.067+0.09=0.157トン×m

 つまり人が船の中心から舷端へ動いたとき、中央に仕切り板のあるイケスの船では復原力が0.107トン×mでよいのに対して、板のない場合はおおよそ50%増の0.157トン×mの復原力が必要となるわけです。
 このようにイケスの中央仕切を差し板にしたり、船の幅方向に広い燃料タンクを計画する場合には、腰の強さに及ぼす影響について留意しなければなりません。


※「設計室だより」は大漁ニュース掲載号の原稿を掲載している為、内容がお客様の船に合致しない場合がございます。漁船、エンジン、艤装品の詳細については必ず最寄りの販売店にてご確認をお願いします。

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