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船体や艤装

日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

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船型の「排水量型」と「滑走型」はどう違うのか?

大漁ニュース 第31号掲載

 まず最初に船はどんな力によって水中に浮かぶのか考えてみましょう。

●船が静かに水に浮かんでいるとき
 船の重力は船を下から上へ押し上げようとする水の圧力(浮力)とちょうど釣り合いがとれています。A図で、この船の重力は喫水線より下の部分の船体の容積に水の比重(海水:1.025、淡水:1.000を掛け合わせた重量と等しいのです。なぜならいま、仮にA図の船を水中から空中へ引き揚げたと仮定すると、いままで船体に押し退けられていた水が、その空白部分を再び満たして全体の力が釣り合うことになるからです。
 水中に浮かぶ船体が排除した水の重さを、その船の排水量といいます。

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水の圧力は、水面下の船体各部の表面と直角の方向に働く。側面の水圧は前後左右の圧力となり、船底に加わる圧力が主に上方へ働いて浮力となる。尚、湾曲部分では、垂直分力と水平分力の二要素となって作用する

●船が航行しているとき
船が走り出すと、この重力と浮力の他に船底を流れる水流の圧力変化によって生じる力が船体に作用します。この力は、浮力と同方向や重力と同方向に働く場合があります。(船底に生じる水圧の変化については『設計室便り・その1』を参考にしてください)

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 揚力の船全体に対する現れ方は、船型と密接に関係しています。どんどんスピードを上げていくと最後には船の重量の大部分が、この揚力によって支えられるようになる船を『滑走型』といい、逆にいくらスピードを増しても十分な揚力を発生しない船型を『排水量型』といいます。
 揚力は運動によって生じる力ですから、静水時の浮力とは区別されます。従って『滑走型』あるいは『排水量型』と呼んでもその特性は走行スピードに応じて発揮されることに注意してください。

 木造和船は「排水量型船型」であり、FRP漁船は「滑走型船型」に入りますが、実際のところは「半滑走型」というのが適当です。「排水型」ではありませんが、「滑走型」と呼ぶほど揚力の割合が大きくないのです。
 FRP漁船が排水量型走行の状態から半滑走型走行に移行する境目は、船尾の水が切れ始めるかどうかという速度です。この速度は船の長さで変わりますが、一般漁船ではV/√L=2近辺の値になります。<ここでV(速度)はノット数、L(船長)はフィートで計算します。
 なお、半滑走型から滑走型に転ずる領域は、はっきりここだと言えるキメ手がありませんが、V/√L=4.5~5の時と考えてよいと思います。

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船の長さによって、半滑走型走行、あるいは滑走型走行のスピードが異なる。そして速長比(V/√L)が同一の条件下では同じような波の発生状況となる。


※「設計室だより」は大漁ニュース掲載号の原稿を掲載している為、内容がお客様の船に合致しない場合がございます。漁船、エンジン、艤装品の詳細については必ず最寄りの販売店にてご確認をお願いします。

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