船体や艤装
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
プロペラはどのようにして船を走らせるのか
大漁ニュース 第35号掲載
船が走るためには、水の抵抗に打ち勝って前進するだけの力が必要です。そこで、動力船では、▲ディーゼルエンジンや蒸気タービン、船外機などの原動機関を運転して動力を発生させ、▲次にこの動力を、適当な方法で推進器(プロペラ)に伝達し、▲推進器が水中で前進方向への推力(スラスト)を発生させて船を走らせています。
ですから、船が良い状態で航走するためには、※1 主機関、※2 動力の伝達機構(軸受、減速機、プロペラ軸など、)※3)推進器、の三つの機能が優れた性能を発揮し、さらにそれぞれの性能がうまくつり合うように組み合わせをしなければなりません。
さて、推進器(プロペラ)は、いったいどのような仕掛けで、推力を発生させるのでしょうか。(推進器には「スクリュー・プロペラ」の他に、昔は「外輪」があり、現在では「ジェット・ペラ」等がありますが、ここでは最もポピュラーな「スクリュー・プロペラ」だけを考えてみましょう。私たちは、これをたんに「プロペラ」と呼んでいます)
プロペラはネジの一種だと考えることができます。図1のようなプロペラを点線A-A'で切って眺めたものが図2です。プロペラの羽は軸に対して傾斜して取り付けられていますから、回転するに従って、ネジのネジ山と同じように進行方向に向かって、らせん状の運動を行います。図2はその様子を示しています。
なぜそうなるのか? まず羽根の先端のP点の運動を一枚の紙の上に描いてみましょう(図5)。P点が回転して、図では右方向へ移動すると、飛行機の翼と同じ原理で※1の方向に力が発生します。[この力は船を推進させる力 (※3 推力)とプロペラの回転を止めようとする力(※2 回転抗力)に分けることができます。]エンジンから伝達された力(トルク)によって。プロペラはこのような力を発揮し、羽根全体を水の中へ、ネジをねじ込むようにして進みます。
P点の移動するコースは、羽根の長さ(軸中心からの距離)と羽根の傾斜角度で決められていますから、プロペラが一回転する、一定の距離だけ進みます。この距離を『ピッチ』といいます。また、P点において必要とする回転力のことを「トルク」といいますが、この力の大きさはピッチやプロペラの直径によって変化します。
プロペラ全体としてのトルク(および推力)は、理論上は、ある部分について求めたトルク(および推力)をプロペラの羽根全面について計算して合計することになります。
プロペラの性能は、プロペラの直径、羽根のピッチ、羽根の形式(輪郭と断面)、枚数などが基本的な条件となります。
プロペラ設計では、船型、必要な速力、エンジン出力と回転数などの条件を与えられると、これらに適するようなプロペラの仕様を検討することになりますが、高速エンジンの場合と中・低速エンジンとではプロペラのデザインが大きく変わってきます。
※「設計室だより」は大漁ニュース掲載号の原稿を掲載している為、内容がお客様の船に合致しない場合がございます。漁船、エンジン、艤装品の詳細については必ず最寄りの販売店にてご確認をお願いします。