船体や艤装
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
船底形状の基本的な特徴の違い
大漁ニュース 第41号掲載
小型漁船の船底形状は(1)キール式(2)ブラケット式(3)引上式の3種類に分かれています。最近はキール式が増えている傾向にあるようですが、船の用途や漁場環境によってはブラケット式や引上式も効果的な働きをします。今回はこの船底形状について、それぞれの長所、短所をまとめてみました。
(1)キール式
≪長所≫
●軸系がシンプルな構成をしているので、引上式と比較して事故が少ない。
●プロペラシャフトの船外露出部分が短いため、異物による損傷や曲がりに対して安全度が高い。また浜座りをさせても軸系は安全。
●軸受けは二カ所以上あって、(中間軸を使う場合は中間軸にも軸受けを追加する)それらの軸受けが固定されているため、強度計算上も力の掛かり具合が明確である。
≪短所≫
●船の高速化に伴って、キール後端で水流の乱れる度合いが高くなり、プロペラの異常音やキャビテーション発生の原因となる。
●キール部分によって船体の動揺周期は長くなるが、反面で動揺減衰期が長くなり小揺れが続きやすい。(これを改善するにはビルジキールをつける)
(2)ブラケット式
≪長所≫
●キール式におけるキール後端の乱流が無く、船体の浸水面積を小さくすることが容易で、他の形式と比べ最もスピードを出しやすい。また引上式に比べると船底形状はシンプルであり引上管の抵抗もなく船体抵抗のみならず、装置抵抗の面でも有利である。
●強度計算の条件設定は、キール式と同様に明確である。
≪短所≫
●プロペラシャフトの船外露出部分が長いので、水中浮遊異物や海底の岩などに対して弱い。操船上、特に注意を要する。
(3)引上式
≪長所≫
●港の浅い地区や漁港設備の関係で毎日上架するような地区に好適。
●ロープや漁網がシャフトにからんでも比較的取り除きやすい。
●他のタイプより安価。(特に軸受けが単式の場合はさらに安価)
●ロープや網を設置した上を通過しなければいけない作業に向いている。
≪短所≫
●高速性能についてはブラケット式よりも劣る。
●プロペラシャフト径が大きくなると全体の重量が増加し、プロペラの上げ下げが重労働になる。
●軸系の中間にユニバーサルを使用するため、保守点検の期間を短くし故障を未然に防ぐように注意する。
※「設計室だより」は大漁ニュース掲載号の原稿を掲載している為、内容がお客様の船に合致しない場合がございます。漁船、エンジン、艤装品の詳細については必ず最寄りの販売店にてご確認をお願いします。