船体や艤装
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
ドライブ船のスピード性能における特徴とその上手な使い方について
大漁ニュース 第67号掲載
漁船漁業や各種養殖の作業・運搬船として、現在船外機船、スターンドライブ船、(船内外機船)、インボード船(船内機船)などが使用されています。
ここに挙げた分類は、船におけるエンジンの位置と推進装置の形式の違いによるものですが、今回はこれらの中からスターンドライブ船の特にそのスピード性能における特徴にスポットをあて、他の推進装置と比較しながらその上手な使い方についてお話ししましょう。
船が軽い状態でのスピードは、船外機>スターンドライブ>インボードの順となり最も速いのは船外機です。これは皆様の浜での経験からも納得いただけることでしょう。
なぜそのような順になるのか、その要因は次の通りです。
1)各推進システムの重量差。(船外機は最も軽い)
2)推進システムによる船型の違いによるもの。同一馬力であっても船外機やスターンドライブは比較的スピードの出やすい滑走型の船にセットされますが、インボードタイプは半滑走型の船にセットされることが多くなります。
3)インボード船の舵まわりの抵抗とドライブ船の(ドライブの)抵抗を比較した場合、抵抗が小さいドライブ船の方がスピードが出やすい。
この3点はあくまでも軽荷の場合ですが、船に荷物を積み込んだ重荷の場合はどうなるのでしょうか。
答えは軽荷と反対に、インボード>スターンドライブ>船外機となります。
ではなぜ、スターンドライブや船外機のスピード低下が大きくなるのか。
これは、プロペラのサイズと船型の二つに起因します。
まず船型についてですが、基本的に船外機やスターンドライブは軽い状態でよく走る船型に搭載されているため、重くなってしまうと抵抗の増え方が他の船型に比べ大きく、スピードも大幅にダウンしてしまいます。(図1参照)
<図1> 各船型と抵抗カーブ
では、もうひとつのプロペラのサイズを考えてみましょう。
インボードの場合、減速比は小さくても2.00以下ということはまずありませんが、スターンドライブでは、中間軸はエンジンと同一の回転数で回り、ドライブの中の傘歯車によって減速が行われ、減速比は1.2前後です。つまり、スターンドライブのプロペラはインボードタイプのそれより1.67倍あまりも高回転で回っています。これが比較的小さいプロペラをつけるドライブ船や船外機船の高速におけるスピード性能がよい秘密です。
ところが、エンジンの最大出力近辺の回転数では、プロペラ効率に差があまり見られませんが、途中の回転数で発生する推力には差があり、小径プロペラの方が不利になってしまいます。つまり積荷の増加により負荷が大きくなるとプロペラ径の小さいものほど、回転の落ちが推力の低下を招くことになり、ある点を境にインボードのものよりスピードが遅くなる現象が表れます。
<図2>
図2はインボード(船)とスターンドライブ(船)の排水量と速力の関係を示しています。
図のようにスターンドライブは左側の軽い排水量で使えば、有利な範囲をフルに利用できることになります。ドライブ船をより効率的に使われるためには、インボード船の場合以上に、艤装品や積み込み品の重量に留意してください。必要なもの以外は積まない。船をなるべく軽い状態にしておくことがスピードの面でも省エネの面でも必要であり、上手な使い方であるともいえます。
※「設計室だより」は大漁ニュース掲載号の原稿を掲載している為、内容がお客様の船に合致しない場合がございます。漁船、エンジン、艤装品の詳細については必ず最寄りの販売店にてご確認をお願いします。