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日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

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小型漁船質問箱・その(3)

大漁ニュース 第77号掲載

●質問:33尺の漁船で刺し網漁を中心に漁をしています。最近では仲間たちの船が速くなっていますが、自分の今の船を大がかりな改造やエンジンの積み替えをすることなく、速くする方法はあるのでしょうか?


●答え:以前にもこの欄で、お話ししたことがありますが、漁船に求められる性能はスピードだけではありません。作業性、操船性、安全性などを十分に満たした上でスピードアップを図るようにしなければなりません。
 ご質問のように船体やエンジンを替えることなく船の速力を上げる、または落とさないようにするということはなかなか難しいことですが、まったく不可能なことではありません。以下に、作業性、安全性など他の性能を犠牲にすることなく、スピードアップにつながる見直し点をあげてこれらを考えてみましょう。

 まず、船が一定の速力で走っている時には次の式が成り立ちます。

V=THP×75÷T...................................(1)
THP=BHP×ηp×ηo........................(2)

T.........プロペラで発生するスラスト(kg)=船の抵抗
V.........船の速力(M/Sec)
THP....プロペラで発生している、スラスト馬力
BHP....エンジンで発生している馬力
ηp......プロペラの単独効率
ηo.......伝達効率


 (1)と(2)の式から船の速力(V)を大きなもの、つまり速いものにするためには、船の抵抗(T)を減らしたり、効率(ηp、ηo)をよくすれば良いということがおわかりいただけるでしょう。

●船の抵抗の改善について

1.重心が最適位置になっているか?
 船の抵抗は、その船の重心位置によって変化します。 ある速長比(速力/√水線長)における最も抵抗の少ない重心位置は決まっており、重心がこの最適重心位置より前になっても後ろになっても抵抗は増加します。一般的にはスピードが速くなるほど、最適重心位置は後ろに移ります。
 ヤマハでは長年の経験を生かし、漁労器機や漁具、漁獲物を搭載した場合を考慮して、最も良い重心位置が得られるように船を設計しています。故にこの重心位置が大きく変化するような漁労器機、漁具を搭載すればスピードが落ちます。搭載物が適当な位置、重量であるかを見直してみましょう。

2.摩擦抵抗が増加していないか?
 船が高速になってきた現在、船底の汚れが速力に大きな影響を与えています。特に20ノットを超えるような船では船底の汚れを軽く見てはいけません。
 あるFRP漁船の例で、船底が『ヌルッ』とする程度の汚れで、まったく汚れのない状態に比べるとエンジン回転数で20rpm、スピードでは0.9ノットの差が出ました。
 また、別の船内外機の場合では、1週間の間にエンジン回転数ががっくり落ちてしまうことがありました。この期間に船側の水面近くで海藻が数ミリの長さに成長しているだけでしたが、この船を上架し、船底をきれいに清掃しただけで200rpm、約5ノットの上昇がありました。
 このような汚れを防止するために、新しい自己研磨型の船底塗料を塗装すれば、ほとんどスピード低下せずに、長期間良い状態を保つことができます。

3.付加物抵抗などの減少は十分に図られていますか?
 イケススカッパ、シャフトブラケット、舵、スタンチューブなど、船底の突起物、付加物の形も抵抗に影響します。これらは、抵抗の少ない形になっているでしょうか?

4.排水量を大きくしすぎてはいませんか
 いま搭載されているものは、ほんとうに必要なものでしょうか? 軽いものにかえることはできませんか? 排水量が大きくなると抵抗も増加します。

●プロペラ効率について
 プロペラはエンジンとマッチングしていますか。また単独効率の良いものを使用していますか。プロペラは周囲の条件によって効率が左右されます。十分な水、整流された水がプロペラに流れ込んで、初めて効率の良い仕事をしてくれます。そのため、シャフトブラケットや引き揚げ管との距離やそれらの形状も大切になってきます。

●エンジンルームの換気について
 エンジン出力を十分に引き出すためには、エンジンルームの換気を良くして、エンジンルームの温度上昇をできるだけ低くすることが必要です。これは単に出力低下を防ぐだけでなく、電気関係の部品の寿命にも影響しますので大切な項目です。
 エンジンルームへの出入り口の開閉でエンジンの回転数が変化するようでしたら、換気装置の能力が不足していると言えますので、対策が必要でしょう。
 エンジンルームの換気に起動式のベンチレーターを使用する時は、排気側として働くようにした方が効率は良いようです。


※「設計室だより」は大漁ニュース掲載号の原稿を掲載している為、内容がお客様の船に合致しない場合がございます。漁船、エンジン、艤装品の詳細については必ず最寄りの販売店にてご確認をお願いします。

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